第12話 ラノアシス大砂漠縦断(前編)

「もしかして、依頼主の方ですか?」


「はい。僕は、商人のルツェです。今回は護衛の依頼を受けて頂きありがとうございます」


「私はクアメルです。ミストラークまでですが、よろしくお願いします。こちらの2人は、ミラとリュエルと言って、一緒に旅をしてます」


「「「よろしくお願いします!」」」


軽く挨拶を済ませたあと、ミストラークまでどういうルートで行くか、地図を見ながら4人で相談した。


「うーん…… 地図を見る限り『ラノアシス大砂漠』を突っ切る方が早い気がするけど、やっぱり砂漠だからなぁ。食料と水の問題が……」


「僕的には出来れば早めにミストラークに着ければ嬉しいので、砂漠縦断ルートでお願いできればしたいですね。迂回ルートだと天候によっては最悪3週間かかることもあるので……あ、食料や水等はこちらで用意します」


「それなら私的には問題ないな。クアメルとリュエルはどう思う?」


「食料と水の問題が解決するならそれでいいと思う」


「私もそれでいいと思います」


「あ、ちなみに大砂漠縦断ルートだと何日くらいで目的地に着きますか?」


「えっと、ここから砂漠入り口の村『サラス』まで馬車で約半日、サラスからミストラークまで2つの途中の村での補給と宿泊込みで約5日ですね」


「6日近くかかるな…… まあ、迂回ルートだと最悪3週間かかるみたいだし、それよりはマシかな」


相談の結果、ラノアシス大砂漠縦断ルートに決定した。




~砂漠の入り口の町 サラス~


「結構人が多いですね」


「僕みたいにミストラークにいく商人が多いんですよ。あの町はルエルフ王国で一二を争う商業が盛んな町で、治安もかなり良いので」


成る程。稼げてなおかつ治安も良いなら、そこに商人達が集まるのも当然だ。何だか自分も楽しみになってきた。


そんな事を考えていると、ルツェが言った。


「今から砂漠縦断用巨大ラクダ車を借りてきます。食料と水、その他日用品の用意をお願いします」


「分かりました」


ルツェがラクダ車を借りに行っている間に、僕たちは砂漠縦断に必要な食料や水、日用品を揃えた。そして、1時間後に、砂漠縦断の長い旅に出発した。






~ラノアシス大砂漠 縦断2日目~


「凄い暑いです……」


「砂漠と聞いて暑いと想像はしてたけど、予想を越えてるな……」


これは強烈な暑さだ。直射日光を避けるためにラクダ車の荷台の中に入っていたが、まるでサウナの中に居るようだった。


ルツェに至ってはあまりの暑さにのびていた。


このまま荷台の中が猛烈な暑さだと食料がダメになるだけでなく、最悪熱中症で誰かが死んでしまう可能性がある。なので、暑さ対策に思い付きではあるが、魔法を唱えた。


『水の結界・対暑』


水の結界に使われている魔力を暑さ防御に回すことで、物理や魔法防御力は犠牲になるが、その分結界内部の気温を下げ、暑さを防ぐ。咄嗟の思い付きの魔法だった為、完全には暑さは防げなかったが、何とか耐えられるレベルまでには気温を下げることに成功した。


「クアメル。ありがとう。お陰で助かった」


「クアメルのお陰で旅も多少は快適になりましたね」


「凄いです! こんな魔法が使える人が居るパーティーに護衛してもらえるなんて僕はなんて幸運だったんだろう」


(うん。喜んで貰えたようで何よりだ)


そんな事を思いつつ、結界内から代わり映えのない砂漠の景色を見ていると、遠くから何かが集団でこちらに迫ってくるのが確認できた。


「あれは、まさか『オトラス盗賊団』!?」


「何ですか? そのオトラス盗賊団って?」


ルツェによると、この近辺でよく出没する砂漠縦断中のラクダ車を襲い、物資を略奪するという悪名高い集団らしい。


「任せてください!」


そう言って奴らを撃退しようと、結界の外に出ようとしたら……


「なあ。今回は私達に任せてもらえないか? いつもピンチの時に助けてもらってばかりだからさ。ヤバくなったら呼ぶから、頼む」


「分かった。でも、無理はしないでね」


「勿論だ!」


2人が凄いやる気でいるのを見たので、お願いすることにして、僕は結界の維持に専念することにした。




~ミラ達の視点~


「さて、どうしようか」


ざっと50位だろうか。中々多いが、やるしかない。


「リュエル! 行くよ!」


「分かりました!」


そして、魔法の射程距離まで敵が近づいて来た一瞬、後ろの敵に向かって、魔法を唱えた。


「雷よ! 我らに仇なす者に裁きを! その身を焦がせ『裁きの雷閃』!』


上空の魔方陣から放たれた一筋の雷は、敵集団のほぼ中心に命中、着弾地点からドーム状に雷が広がり、周りの敵も巻き込んでいる。


後ろの敵の6割は見事に撃破に成功した。


残った敵は、リュエルが『光貫の矢雨』という高速で飛翔して相手を貫く光の矢の雨で大半を撃破した。


戦意を失った敵側は、来た方向に逃げていった。


「ふぅ。暑さと魔力消費も相まってかなり疲れた……」


「私の弓術も役に立ってよかったです!」


こうして、私達は盗賊の撃破に成功した。




~クアメル達の視点~


「ものすごい戦闘でした。やはり、あなた方に護衛任務を受けてもらえたのは幸運としか思えないです!」


「ミラもリュエルも強いですからね」


そんな会話をしていると、2人が中に入ってきた。


「ご苦労様。2人とも凄いよ!」


「クアメル達の役に立ててよかった~」


「ありがとうございます。お役に立てたようで幸いです」


その戦闘が終わった2時間後、1つ目の補給地点である村に到着した。

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