第2章 ルエルフ王国編
第10話 王国への旅 入国
~ルエルフ王国 国境検問所 事務室~
中立地帯を挟んで北側にあるルエルフ王国の国境検問所は、国境の門破壊により、職員達が大慌てで情報収集に勤しんでいる。
「所長、報告があります。先ほど、ヒーティルオン帝国国境の門が突然爆発し、門が崩壊したとの事です。なお、この爆発による中立地帯に居た王国民への人的損害はありません」
「成る程。あと、誰が国境の門の破壊などという大それたことをしたのか分かったか?」
「いえ、それはまだ調査中です」
「そうか。全く、何処の誰なんだそんな事した奴は。ヒーティルオンの戦闘狂どもがこれをネタにして攻めてきたらどうするんだ」
「それともうひとつ報告があります。先程、国境検問所入国ゲートにて、不審な3人組を発見したため、拘束致しました。その内の1人は、ギルドカードを所持しておりませんでしたが、魔力反応が非常に弱く、緊急を要していたため、国境の街レトラノア内の病院に運ばれました。』
「そうか。報告ご苦労だった。あ、それと、その3人の内の2人を呼んできてくれないか?」
「分かりました」
そう言って部下は、2人を呼びに行った。
(何故こうも面倒な事が立て続けに起こる……)
そんな事を思いつつ、2人を待つ。
~国境検問所 別室~
「良かったぁ~」
「ええ。本当に良かったです」
国境検問所に何とか到達した私達は、晴れてルエルフ王国に入国出来ることになった。
倒れたクアメルも病院に連れていってもらい、見てもらった所、極度の魔力消費による『魔力極労』によるものとの診断だ。
命に別状は無いようで、3日ほどで魔力が完全回復し、退院出来るらしい。
クアメルの入国についても、上司との相談の結果、1ヶ月以内ならば問題なし、その間にギルド協会に行って登録すれば、失効しない限り出入国自由とのことだ。
「クアメルが退院するまで1週間だから、お見舞いした後、その病院近辺で宿をとろう。観光はその後にしておこうな」
「そうですね」
そんな相談をしていると、検問所の職員が、部屋に入ってきた。
「ミラさん、リュエルさん。所長がお話を聞きたいと言っています。来ていただけますか?」
どうやら何かまだ聞きたいことがあるようだ。
退院まで1週間も時間があるので所長の所に行くことにした。
~国境検問所 所長室~
「来ていただけて感謝です。実は少し聞きたいことがありまして……」
「はい。私に答えられることなら何でも」
「あなた方が背負って連れてきてた白髪の女性、水の女神様ではありませんか?」
「!?!?」
いや、確かに破剣ルメネで斬られて大ダメージ受けてたから何らかの神様だとは思ってたけど、水の女神様とは。これが本当ならば、創造神の生み出した7つの属性を司る神の内の1人が、この世界に降臨し、なおかつ私達の近くに居るということになる。
「どうしてそう思ったのですか?」
「実は……」
所長の話によると、出身地である港町『ミストラーク』では水の女神への信仰が強く、漁に出る際に水難事故等が無いように、そして畑の野菜がちゃんと育つように毎日祈ってたりしたという。
そんなある日、週に2回の神殿でのお祈りをしていた際に、『新たな水の女神がこの世界に降臨した。この街に1年以内に訪れることとなるだろう』とのお告げを天使から頂き、その際に言っていた特徴のそっくりそのままで現れたからだそうだ。
「成る程。そういうことだったんですね」
「水の女神様と旅をされているなんて、私は正直あなた方が羨ましい」
「旅と言っても、帝国兵からの逃亡生活でしたけどね……」
「あ、すみません。長話して引き止めてしまいました。それでは、よい旅を」
こうして、国境検問所を出た私達はクアメルの入院先の病院に見舞いしに行った。
~ルエルフ王国 レトラノア魔導病院~
凄絶な国境門の戦闘後、破剣によるダメージで倒れてしまった。
気付いたときにはいつの間にか病院に居た。あの2人のお陰で無事なのは明白なので、次に会ったときにお礼を言わなければ。
その時、病室に看護士と医者が入ってきて、声をかけてきた。
「クアメルさん。気付きましたか」
「はい」
「調子はどうですか?」
「お陰様で大分調子は戻ってます」
「あ、それと、あなたの連れだというミラとリュエルって人が見舞いに来たと言っていますが、どうされますか?」
「通してください」
「分かりました」
そう言って部屋を出て少し経った後、2人が部屋に入ってきた。
「クアメル! 良かったぁ~」
「調子良さそうでよかったです」
「2人のお陰で助かったよ。ありがとう。そう言えば、ここはいったいどこなの」
「ルエルフ王国 国境の街 レトラノアの病院です」
ようやくルエルフ王国に入れたと聞き、これでしばらくゆっくり出来るなぁ~ と僕は思った。
「クアメル。退院したら、まずはギルド協会に行って冒険者登録しに行こう。登録さえすれば、ギルドカードが失効しなければ無期限でここに滞在出来る事になったし、それに、他の国に行くときも手続きもすんなり済むから」
「成る程。じゃあ次の目的はそれだね」
こうして、退院したらギルドに冒険者登録をしに行くことに決まった。
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