第8話 王国への旅 国境門戦闘(前編)

 雪崩れ込んできた兵士達は僕たちを見て、こう言った。


「ふむ。成る程。聞いていた3人組の特徴と同じだな…… よく聞け! 我らはヒーティルオン帝国軍である! 皇帝陛下の命により、貴様らを処刑しに来た!」


(もう嗅ぎ付けてきたか)


 門の破壊前に帝国軍に見つかった為、これからかなり面倒な事になるのは確実だ。


「ミラ、リュエル。逃げるぞ!!」


 そう言って僕は、2人を連れて宿の3階の窓から飛び降りて逃げた。


 奴らは私達と同じように窓から飛び降りることはなかったようで、すぐに追ってくることはなかった。

 

「危なかったですね。もう少し判断が遅れてたら大変なことになってました」


「クアメルのとっさの判断で私達助けられたな。本当に感謝しかない」


「2人とも! こうなったらこのまま強行突破で行くよ!」


  「「「了解!」」」


 こうなってしまった以上、仕方がないので民間人に被害が出ないように帝国兵を退けつつ、門を突破する強硬策を取ることにした。そして、何とか国境門へ架かる橋まで到達することが出来た。


「この橋を渡れば門に着くぞ! もうひと踏ん張りだ!」


「ええ。ここまで来てやられる訳にはいかないですから!」


 そうして橋を走って渡り始めて少したった後………

 


 ギュオォォォォーーーン!!



 聞くだけで威圧されそうな生物の声。


 その声の主を確かめるべく空を見ると、そこには20頭ものドラゴンが、僕たちの周りを旋回しながら飛んでいた。


 その上には、鎧を着て、大きな剣を持った人が乗っていた。


「あれは、帝国軍竜騎士飛行部隊……… まさかあいつらまで来ていたのか……」


「しかも20頭も来ています。これは猛烈に不利な状況ですね……」


  2人によると上に飛んでいるのは、竜騎士飛行部隊といって、ドラゴン界最強クラスの強さを誇るフレアドラゴンを手懐けて実用化した部隊らしい。


  (厄介すぎるだろ……)


 そう思ったその時、20頭ものドラゴンが一斉にこちらに向けて火焔弾を放ってきた。


  (不味い!!)


 咄嗟に『拡散水破弾』を詠唱無しで放った。


 放たれた大きな水の塊は、空中で細かく拡散し、20もの火の弾を殆ど打ち消した。打ち漏らした火の弾は、水の結界を展開して防御した。


「やっぱり凄いなクアメル。一気にドラゴンの火の弾を打ち消せるなんて只者じゃないな」


「2人は大丈夫だった?」


「私は平気だ」


「私は大丈夫です…… あっ! 後ろからかなり多くの兵士と魔法使いが来ます!」


 リュエルがそう言ったので、後ろを見てみると、確実に100人は居るであろう兵士達が、大挙してこちらに押し寄せてくるのが確認できた。


「ミラ、リュエル。私がドラゴン達の相手するから、兵士達の相手をお願い!」


「分かった。気を付けてな!」


「気を付けてください!」


 後ろから来る兵士の集団の相手は2人に任せ、僕は空中のドラゴンに集中することにした。


「さて、あの魔法で行きますか」


 山下りの際になんとなく開発した、 対空中用の魔法発動の準備に入る。


「邪なる龍を、その水と光の力にて貫け!! 『竜伐の光槍』!」


 展開した魔方陣から発射された、水と光の複合属性の槍は、ドラゴンの魔力を探知して、位置を修正しながら向かっていく。 高速で飛翔するそれは、ドラゴンの硬い鱗でも簡単に貫く。


 そして、1頭、また1頭と槍に貫かれたドラゴンが落ちて行く。


 最終的に、ほぼ9割の竜騎士部隊を撃破することに成功したが、槍のターゲットが被って1頭のドラゴンに何本も命中したりする事態が発生したり、槍同士が激突したりして、全部撃破することは出来なかった。


「ふう……」


 無理して火力を上げたせいで、消費魔力が増えてしまったが、想定したほどの疲れはなかった。


(そう言えば、2人はどうなったんだ?)


 振り返ってみると、かなり疲労してはいるものの、何とか撃破に成功したようだ。


「2人とも大丈夫だった?」


「ええ。ミラのお陰で」


「最大火炎系呪文で何とかなったけど、魔力消費が激し過ぎたから、歩くのがやっとだぜ………」

 

「私の方も撃破したから、取り敢えずひと安心かな?」


 そんな会話をしていた時、門の方から1人の剣士が歩いて来るのが見えた。

 

 

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