第4話 謎の軍団撃退編

(一体何なんだコイツら……)


『やっと見つけたぞエルフの女! そして魔法使いの女!』と怒鳴っているので、この2人と何か関係があると言うのは明白だ。


 何かしら恨みがあるのか、それとも何か大変なことをやらかして2人を追いかけていたのか、その他の理由なのかは分からないが、とにかくこの状況を理解するため、コイツらと何があったのかを聞こうとして、2人の顔を見た時………


「貴様らぁ!!!」


「…………………」


 ミラの方は、奴らへの恐怖と言うよりは、怒りの感情が遥かに大きいようで、涙ぐみながら怒鳴っていた。


 リュエルの方は、顔が恐怖でひきつり、小刻みに全身を震わせ、目は涙で潤んでいた。


 この2人の姿を見て、罪を犯して逃げてきた訳ではないと判断した。


 とりあえずこの場所から奴らを追い出さないと危険だと判断した僕は、奴らから2メートル程の距離まで近づいて、にらみ合いを始めた。


「………………」

 

「………………」

 

「………………」


 一時の静寂の後………


「そこをどけ!! 我らは貴様の後ろに居る魔法使いの女と弓術使いのエルフの女を処刑して来いとの命令を皇帝陛下から直々に受けている!! その場に邪魔者が居ればそいつもろとも処刑して構わないとも命令されている

!!」


 先に口を開いたのは、おそらく奴らの隊長であろう、大きい刀を持っている大柄の男だった。


「お断りします!」


「何だと貴様! 偉大なる皇帝陛下の命令に逆らうのか!!」


「知りませんよ! そんなの!」


 初対面でいきなりゴツい武器もって処刑宣言してくる奴の言うことなんぞ信用出来るわけがない。


「どうせ私が大人しく退こうが、2人を殺した後に口封じに私も殺すつもりだったのでしょう?」


「………………」


 黙ったと言うことはつまり、最初からそういうつもりだったのだろう。


「仕方ない。ならば貴様らをまとめて処刑してくれるわ!!!」


 いきなり1対100の戦闘とかいくら自分自身が神になったとはいえ、少し不安だが、こうなっては仕方ない。


「ミラ! リュエル! 危ないから家に入ってて!」

 

「クアメル1人じゃこの人数どう考えても無理だ! ここは3人で協力してやらないとこっちが殺られるぞ!」


「いいから早く中に入ってて!」


「………分かった」


 何とか説得に成功した僕は、2人が家に入ったのを確認した後、家に神気で出来た光の結界を張った。


「1人でかかってくるとは、ずいぶん我らも舐められたものだな」


「お前達の相手など私1人で十分だ! さっさとかかってこい!」


「言われなくてもかかっていってやるわ!者共、我に続け!!」


「「おおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」

 

 こうしてこの世界での初めての大規模な戦闘が始まった。


「うぉっ。流石に数が多いな。ここはある程度一気に数を減らしておこう」


「水の精霊たちよ。彼らに心地よい安らかな眠りを。『水精の子守唄』!」


 大規模攻撃魔法でも良かったが、力加減を間違えて山ごと吹き飛ばすと後々面倒なので、水の精霊の美しい歌声を聞かせ、相手を瞬間的に眠らせるこの精霊術を選んだ。


 術の発動と同時に、全体の4割近くを眠らせて、敵の戦力を削ぐことに成功する。


「隊長! 奴の術により、4割近い兵士が一瞬で戦闘不能になりました!」


「何だと! 一気に4割もやられるとは………」


 一気に兵士をやられたためか、相手方は混乱しているようだった。


「よし。もう一度だ」


 再び、水精の子守唄の発動準備に入る。


「奴がまた詠唱し始めました!」


「くっ! 早く行け! 奴がまだあれを発動する前に集団で襲いかかれ!!」


 指示を受けた兵士たちは、素早い動きで僕の方へ襲いかかってきた。


「かかったな」


『破龍水弾』

 

 水精の子守唄をギリギリで解除し、向かってきた敵に無詠唱で破龍水弾を当てる作戦は、見事に成功した。


「「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」


 神気をまとった水の塊は、向かってきた兵士の集団に着弾し、大きな水柱を上げた。その水柱は、集団全体を巻き込んで、大半を戦闘不能にした。


「隊長! 兵士の9割が戦闘不能になりました! これ以上の戦闘続行は困難です!」


「たった2撃で………こんなバカなことが………」


「で、どうします? 全滅するまでやりますか?」


「………」


「全員撤退だ!」


 こうして、この世界での初の戦闘は、圧倒的な勝利で終えることが出来た。

 

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