第3話 突然の訪問者

「お願いします! 助けて下さい! この子を治療してください!」


 そう言って僕に声を掛けてきたのは、瀕死のエルフと見られる女性を背負っていた人間の女性だった。


 2人から感じる魔力はかなり少ない。特にエルフの女性の方は、僕でも集中しなければ魔力を感じ取れないほど消耗していた。


「勿論です! とにかくこちらへ来て下さい!」


 明らかに治療しないと不味いエルフの女性を見てとっさに言ってしまったが、回復魔法は『生命の雫』のひとつしか会得していない。


 それに、この魔法で重症者を治療した経験なんて全く無い。精々軽い怪我をしていた動物に何回か使って治療しただけだ。


 だけど、このままだと危ないのは確かなので、どれだけ効果を発揮できるかは分からないが、とにかくやってみるしかない。


「森の精霊、水の精霊たちよ。かの者の傷を癒せ。生命の雫!」


 上空の魔方陣から精霊の力が込められた雫が垂れた瞬間、まばゆい水色の光がエルフの女性の全身を包み込む。


「………うぅ」


「リュエル!? 気付いたの!?」


「ミラ? 私、助かったの?」


「うん! 助かったんだよ!リュエル!」


 どうやら成功したようだ。効果が無かったり、大したことがなかったらどうしようと思っていたが、それは杞憂だったようだ。


「本当にありがとうございます! 感謝してもしきれません!』


「このご恩は一生忘れません!』


2人の目には涙が浮かんでいた。


「とりあえず、ここに居たら危ないので、山の頂上にある私の家まで行きましょう。」


《はい!!》


 支度をして、廃村を後にした。





~山登りの道中にて~


「そう言えば、自己紹介がまだだったな。私は魔法使いのミラで、21歳だ。よろしくな!」


「私は弓術使いのリュエルで、歳は19です。よろしくお願いします」


  成る程。エルフの女性の方はリュエル、人間の女性の方はミラと言うらしい。忘れないようにしっかり覚えておこう。


「あなたのお名前を教えて頂けますか?」


(あ、ヤバい。この世界での自分の名前全く考えてなかった。だけど転生前の名前のままってのも何かなぁ……)


 少し考えた後………


「私の名前は、クアメル。えっと、魔法使いで20歳です。お2人とも、よろしくお願いします。」


「よろしくな。クアメル!」


「よろしくお願いします。クアメルさん」


 その他にも色々な話をしながら盛り上がっていたら、いつの間にか家のある山の頂上に到着していた。


「山の頂上にこんな家があったなんて………」


「こりゃ凄いな」


  僕の家を見て2人は驚いていた。


 まあ、山の頂上にこんな立派な家があれば誰でも驚くもんか。僕でも最初この家が山の上にあったことに気づいた時は驚いたし。


「ひとまず中に入りましょう」


 そう声をかけて2人に家に上がって貰おうとしたその時、突然背後から怒鳴った男の声がした。


「はぁっ。はぁっ。やっと見つけたぞ。エルフの女! そしてそこの魔法使い!」


そこに現れたのは、100人近くの重装備したどこかの国の軍隊であろう集団だった。






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