ステロイドの副作用による、食欲等の変化について

 ステロイドは、本当に色々な副作用を伴う薬だ。

 シリアスなものでは、骨粗鬆症、糖尿病、白内障などだが、今回はキッツの身にに顕著に表れた、食に関する副作用を記録する。

 膠原病・皮膚筋炎の治療には、ステロイド投薬が必須である。投与量の目安として、体重1㎏あたり1㎎とあるらしい。キッツの場合、50㎎投与から始まり、数週間ごとに2.5㎎減薬していくというのを続けている。

 この減薬の過程で、食欲や食の好みなどにかなりの変化があった。

 副作用の現れ方には個人差があるため、このケースが万人に当てはまることはない。あくまで一個人の一例として、書いていく。キッツ個人としては、とても興味深い副作用であった。


<体重の変動>

 入院前の健康時の体重:53㎏

 入院直後・治療開始前の体重:47kg 

 →病状の急激な進行により食欲が全くなくなり、1週間で5㎏減った

 投薬開始後約8週目の体重:50㎏

 投薬開始後約23週目~現在の体重:53㎏


*体重の増加により、血糖値などへ影響があるため、太らないようにと忠告を複数の医師より何度も受けた。

*ステロイドの副作用には食欲増加というのがあり、また同じく副作用で太りやすい体質になる。


<食欲の変動>

 投薬開始直後から、食欲が異常に増えた。

 とにかく四六時中、物を食べたくてしょうがない。大げさでなく、キッツは毎晩ひたすら食べ物の夢を見た。夕飯を食べているところから、翌日の朝食に何を食べるか考えている。寝床に入り横たわっても、朝食に何をどう用意し食べるかをひたすら考えているため、それが夢にでる。不眠症という副作用とも相互作用し、おなかが空いて夜中に目が覚めることもしょっちゅうだった。

 血糖値が上昇していたこともあり、食欲に比例して食べ続けるわけにもいかない。ちなみに血糖値は、200 mg/dLを超えることもあった。これもステロイドの副作用の一つである。そんなわけで、闘病生活イコール己の食欲との闘い、というのが大きな割合を占めていた。

 投薬開始後、13週目の時、あまりの食欲に、この際どれくらい食べられるものか試してみようと、パン食べ放題のお店に行ってみた。この日だけは無礼講と決め、満足いくまで食べようと、踊りださんばかりの勢いだった。

 普通盛りのパスタにプラスして、パンの食べ放題のセットを選ぶ。

 結果、パンを15個食べた。

 ひとつのパンの大きさは、市販のロールパンを一回り小さくしたくらいのものだった。

 パスタ一皿+パン15個。

 これだけ食べて、やっと満足したかな、という気分だった。

 しかし気持ちとは裏腹に、体の方がついていかず、翌日体調を崩し寝込んだ。


 最近不思議なことに、あれだけあった食欲がなくなってきた。

 投薬開始から7カ月以上経った現在のことである。ステロイドの投薬量は12.5㎎。もう食べ物の夢もみないし、何なら一食抜いても平気だ(健康のため、一日3食食べるが)。

 今後もこの食欲は減り続けるのか、観察していく。


<食の好みの変化>

 キッツは元々肉が苦手だった。

 ステーキ、焼き肉、しゃぶしゃぶ…。肉料理はとにかく食べられない。スーパーの鮮肉コーナーにも近寄れない。ベジタリアンというポリシーを持っている訳ではないのだが、幼少期のアトピー治療の一環で肉食を禁じられたあたりから、肉を食べることが気持ち悪く、同時に罪悪感を伴うようになってしまった。そのあたりの是非は置いといて、豚汁に入っている豚コマさえも食べられなかったキッツが、ステロイドにより肉大好き人間になったのだ。

 病院のベッドで、ひたすらステーキの画像を検索して見つめていたキッツ。

 自分が食べられない代わりに、親姉妹に肉を送り付けたキッツ。(ギフトだよ)

 退院後、人生で初めてかつ丼を食べ、世の中にはこんなにも美味しいものがあったのかと嬉し涙を流したキッツ。

 食べ物の選択として、肉が食べられると食べられる料理が一気に倍増する。

 そのことに、いまさらながら気付いた。

 人生40年目にしての僥倖だった。


 ステロイドの副作用は、投薬量が減るにつれ、減っていくものである。

 そのためか、キッツの肉ブームは終焉を迎えた。

 投薬量17.5㎎あたりから肉を欲しなくなり、10mgの現在では、むしろ肉はまた食べたくないモードに突入している。


<食のブーム>

肉 → 生クリーム → あんこ → カスタードクリーム


食欲旺盛の中、その中でもこれが食べたい!というものに変化があった。

投薬開始から約7カ月で上記のように変化しているのだが、肉ブームが一番長かった。そして今は食欲自体が減退しているので、これが食べたい!という欲求事態も減っている。



 寝ても覚めても食べ物のことだけを考えている自分は、頭がおかしいのではないかと本気で自分自身を疑ったこともあった。入院時のある日のこと。前日の夕飯後から一晩中、食べ出のある食パンとスクランブルエッグの組み合わせを願っていた。サンドイッチにすると、ボリュームが出てかつ美味しかったのだ。しかし運ばれてきた朝食は、ぱさぱさの白米と、三角の白いはんぺん。お飾り程度にはんぺんにのっかっていたチーズは、はんぺんを乗せていた皿の蓋の裏にこびりついて乾燥し、食べられなかった。

 ふりかけもない。味噌汁もない。素のはんぺんをおかずに食べろと出された白い飯。

 動かない体と、止まることのない食欲。

 期待を大きく裏切る病院の味気ない糖尿病食。

 箸をつけることもなく、はんぺんの前で1時間泣いた。

 とめどなく流れ出る鼻水をかみ、自分の現状を憐れみ、白米のおかずに味なしはんぺんを出す病院のセンスを恨み、ひたすら泣いた。

 闘病には色々な側面があるが、この食に関する一連の出来事は、確実に大きな比重を占める。だが、明けない夜はない。食欲は減退する時が来るのだ。この面については、キッツも普通の人間に再度仲間入りである。



2021/2/3 追記

ステロイドの副作用について、投薬開始から約2年後の状況をアップデートしました。記事はこちらから!


ステロイドの副作用・経過報告 ~投薬開始から約2年経って

https://kakuyomu.jp/my/works/1177354054889727776/episodes/16816410413874901626



2019/8/2 追記

食べ物関連で、病院食(糖尿食)について新しい話を書きました。

詳細はこちら!


私的 ベスト・ワースト病院食

https://kakuyomu.jp/works/1177354054889727776/episodes/1177354054890617028

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