第98話 錬金術

 以前試したのは、ソレが世に出始めた頃だった。

 だが、そのときは比べる価値を感じなかった。

 明らかに本物と違うことが分かったからだ。


 それ以来だろうか。

 ほんの気まぐれだった。

 たまたま、目に入った売り文句に興味を惹かれ、数十年ぶりに試す気になった。


 ごきゅごきゅ。


 ドライなノドごし。

 キレ味、爽快。


「おぉ!」


 酔いという要素を除けば、限りなく本物に近い。

 いや、知らない状態で飲めば、気づかないのではないだろうか。

 見事だった。

 本物以外の材料を使い、本物と同じものを作る。

 もはやこれは錬金術と言ってもいいのではないだろうか。


「最近のノンアルコールビールは出来がいいな」


 アサ○ ドライゼロを飲んでみた。


☆★☆★☆★☆★☆★


 ひさしぶりに飲んだノンアルコールビールの味に感動した。

 なので、周囲の人間にアンケートを取ってみることにした。

 だが、単純に好き嫌いを聞くのでは面白くない。

 なので、どれが好みなのかを聞いてみることにした。


 ○サヒ スーパードライ・・・ビール

 クリア ア○ヒ・・・新ジャンル

 アサ○ ドライゼロ・・・ビールテイスト清涼飲料


 選ぶのは、この中からだ。

 別に他の製品やビールメーカーでもいいのだが、単純に自分の好みの中から絞った。

 まずは課長に聞いてみた。


「クリア ア○ヒだな」

「その心は?」

「毎晩、晩酌をするとなると、やはり値段がな」

「課長、給料いっぱい貰ってるんじゃないですか?」

「・・・小遣いは娘の方が上だ」

「そうですか」


 子供を持つ親は大変だ。

 次は後輩に聞いてみた。


「アサ○ ドライゼロですかね~」

「その心は?」

「食べる方が好きなので~。アルコールを飲み過ぎると味が分からなくなるじゃないですか~」

「聞いておいてなんだけど、それはもうジュースでよくないかな」

「おつまみは、やはり駄菓子ですね。いか天とか、よっちゃ○イカとか~」

「・・・いいかも」


 浪漫がある。

 できれば子供のときに、その組み合わせを試したかった。

 さて、ちょっと遠出して魔法使い(プログラマー)たちにも聞いてみよう。

 最初は魔法使い(プログラマー:男性)だ。


「○サヒ スーパードライかな」

「その心は?」

「発泡酒や第三のビールは、なにか負けた気がする」

「ビールは値段が高いですけど?」

「こだわりがあるから、多少高くてもビールにしてる」

「ちなみに、クリア ア○ヒは第三のビールとは言わないそうですよ」

「え?そうなのか?」


 あまり詳しくなさそうだけど、どこにこだわっているのだろう。

 人と話すときのプライドかな。

 最近は味も多様化していて、ビールの代替としてではなく、好んで発泡酒や第三のビールを飲む人もいるくらいなのだが。

 見習い魔法使い(プログラマー:男性)はどうだろう。


「こだわりはないですね。でも、付き合ってる彼女と飲みにいくときは、カクテルの方が多いかも」

「それは、ごちそうさま」

「いやあの、そんなつもりじゃ・・・」


 最後は見習い魔法使い(プログラマー:女性)だ。


「マイブームは日本酒です」

「そう言えば、正月の初売りで会ったときに聞いたような」

「ノンアルコールビールを焼酎で割ってみるのはどうでしょう?」

「いや、意味が分からないんだけど」

「もちろん、割るのは45度の麦焼酎です」

「麦繋がりで?」

「ビールっぽくなると思うんです」

「なるかどうか以前に、ノンアルコールの意味が無くなってるんだけど」

「新しいカクテルになりませんかね?」

「それを頼む人は、普通にビールを飲めばいいんじゃないかな」


 とりあえず、こんな結果だった。

 やはり、好みは人それぞれだ。

 性格が出ているようで興味深い。


☆★☆★☆★☆★☆★


 ちなみに、調べてみたら、ノンアルコールビールを焼酎で割る飲み物は、既に居酒屋のメニューになっているらしい。

 しかも、なかなか美味しいらしい。

 世界は広い。

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