第49話 色欲

 12月25日。

 クリスマス(イブではない)。

 今年は日曜日だ。


 始発で帰ってきた後、昼ぐらいまで寝て、のっそり起きた。


 ぴんぽーん。


「・・・・・」


 居留守を使いたいところだが、宅配便の可能性もある。

 その場合、再配達してもらうのも手間だ。

 一人暮らしだと、仕事が忙しいときは、土日にしか受け取れない。

 そして、今日は日曜日だ。

 仕方がない。


 ガチャ。


「遊びにきたよ」


★プチデビル(女子高生)が襲撃してきた★


☆★☆★☆★☆★☆★


「なんだか、眠そうだね」


 こたつで、まったりしながら、日本茶をすする。


「今朝、帰ってきたから」

「おや?朝帰り?」


 ・・・・・


 また、勘違いされそうな気がする。


「会社の仲間と飲んできた」

「お姉さんたちと?」


 まあ、間違ってはいないが。


「それで?」

「それだけ」


 ・・・・・


 はぁ。


 溜息をつかれた。

 なんだか、呆れられている気がする。


 ずずっ。


 日本茶をすする。

 眠いとき、眠気を覚ますならコーヒーだが、まったりしたいなら日本茶だ。


「お兄ちゃんってさ?」

「うん?」

「もしかして、性欲ないの?」


 ぴゅ・・・ふきふき。


 漫画みたいに噴き出したりはしないが、ちょっと口から溢れた。


 えーっと。


 なんて答えればいいんだろう。


「クリスマスに女の人と一夜を共にして、何もないっていうのは、どうなの?」


 また、紛らわしい言い回しを。

 わざとだろうが。


「義務教育で、性教育くらい受けてきたんだよね?」

「・・・性教育は、子供の作り方は教えてくれても、恋の仕方は教えてくれないのだよ」

「名言っぽく言っているけど、格好良くは無いからね?」


 ・・・・・


 わかってるけど。


「そのうち、機会があれば」

「機会は作るものだけど・・・まあ、いいや」


 がさがさ。


 そういえば、荷物を持っているな。

 中身を取り出している。


「じゃーん♪」


 鶏もも肉の照り焼き。

 フライドポテト。

 野菜スティック。

 シャンパン(っぽいジュース)。

 イチゴケーキ(小型ホール)。


「おお!」


 昔ながらのクリスマスメニューだ。

 子供の頃は、親戚一同で集まって、こんな感じで騒いだものだ。

 懐かしい。


「しょうがないから、今年のクリスマスは、わたしが付き合ってあげる」


☆★☆★☆★☆★☆★


 料理を飲み食いし、レトロゲームで対戦して遊んだ。

 今日はなんだか昔に戻った気分だ。

 明日は平日なので、さすがに泊めるわけにはいかず、遅くならないうちに、プチデビル(女子高生)は家に帰した。


「早くクリスマスを一緒に過ごす恋人つくりなよ?」


 最後の一言がなければ、いいのだが。

 母親か、おまえは。

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