第44話 遭遇戦
ギルド近くの転移ポータル(名古屋駅)に到着した。
季節は冬。
雪が降ることも多くなった。
この時期には滅多に出会わないモンスターに遭遇することがある。
金属製のスライムみたいなものだ。
だが、特に経験値が多いなどのメリットはない。
★剣を装備したバーサーカー(スキー板を持ったスキー客)×6が現れた★
通常種のバーサーカー(旅行客)が繰り出す棍棒(キャリーバッグ)による攻撃も危険だが、希少種であるこいつらは、さらに危険度が増す。
なにせ、間合いの広い剣(スキー板)で攻撃してくるのだ。
やつらの視界に入らなくても、肩に担いだ武器で自らの背後に無差別攻撃することや、逆にこちらの背後に奇襲攻撃を加えてくることもある。
距離が離れていても、油断することができない、危険なモンスターだ。
さらに、理不尽さも増している。
向こうから攻撃してきたにも関わらず、自らの武器(スキー板)がこちらの身体に接触すると、激怒して襲い掛かってくることもある。
「・・・・・」
これから転移ポータル(新幹線)に乗り込み、狩場(スキー場)へ向かう途中なのだろう。
ふらふらと歩き回っている。
こいつらが希少種と言われているには訳がある。
通常種は事前に狩場に武器を運んで(宅配配送して)おいたり、独自の移動手段(自家用車や長距離バス)で狩場へ向かうのだ。
しかし、希少種は違う。
あえて人間の多いルートを武器(スキー板)を振り回しながら闊歩し、周囲に被害を与えながら狩場へ向かう。
なぜ、そんな行動をするのか。
研究によって、さまざまな理由が推測されているが、一番可能性が高いのが、単に知能が低いのではないかということだ。
いくら生態を研究しても、武器(スキー板)を振り回しながら、狩場に向かうメリットが発見できなかったらしい。
武器(スキー板)にこだわりがないなら、現地で調達するだろう。
武器(スキー板)にこだわりがあるなら、傷つける可能性を排除するため、運ぶ手段(宅配配送)や移動手段(自家用車や長距離バス)にもこだわるだろう。
普通の思考で推測しても、まったく理解ができない。
そして、意味もなく周囲に被害を与える。
まさに、バーサーカーだ。
「・・・・・」
こいつらの対処方法は判っている。
なるべく距離を保ちつつ、刺激を与えないように、大きく迂回して戦闘を避けるのだ。
だが、気を付けなければならないのは、他のモンスターや冒険者もいるということだ。
ぶおん・・・スタスタ・・・タンッ・・・スタスタ
攻撃を紙一重で避け、同時に周囲にぶつからないように、体術を駆使しながら進む。
普段より移動に時間がかかりイライラするが、ここで心を乱してはいけない。
なんとか冷静さを保ちつつ、歩を進める。
ふぅ・・・スタスタ
何とか危険地帯を抜けたようだ。
ここからは普段通りに移動できる。
☆★☆★☆★☆★☆★
今日は朝一でクエスト(お客様との定例会)だ。
現地で課長や後輩と合流予定だ。
ギルド(自社)へは寄らず、転移ポータル(名古屋駅)を経由して、直接ダンジョン(客先)へ向かう。
その途中で、またもやレアモンスターに遭遇した。
いや。
正確にはレアモンスター群だ。
百鬼夜行とも呼ばれる。
今日は運が悪い。
★バーサーカーの群れ(ツアー客の集団)が現れた★
こいつらは、たちが悪い。
通路を塞ぐように広がり、冒険者(サラリーマン)の行く手を遮っている。
群れのリーダー(添乗員)はいるようだが、その状況を良しとしているようだ。
こいつ(添乗員)は群れ(ツアー客たち)を満足させることしか考えていない。
周囲への被害など、知ったことかと言わんばかりの、傍若無人ぶりだ。
唯一の救いは、ゆっくりとではあるが移動し、時間が経てばいなくなることだ。
朝の時間帯で、時間的な余裕はないが、仕方がない。
他の冒険者(サラリーマン)たちと一緒に、災厄が去るのを、しばし待つ。
あ・・・
無理に通り抜けようとして、群れの1体とぶつかった冒険者(サラリーマン)が、交戦(言い争い)している。
数の暴力で理不尽な攻撃を受けているようだ。
だが、それによって通路に少し隙間ができた。
他の冒険者(サラリーマン)たちが、この隙にと移動を再開した。
自分もそれに続く。
こういうときは躊躇ってはいけない。
非情なようだが、これも弱肉協力の世界に生きる冒険者(サラリーマン)の日常だ。
☆★☆★☆★☆★☆★
予定より時間がかかってしまったが、なんとかダンジョン近くの転移ポータルに到着した。
自宅を早めに出たことも幸いし、クエスト(お客様との定例会)の開始時間まで余裕がある。
今日は朝から余計な体力を使ってしまった。
少し休んでからクエストに向かおう。
カラン
喫茶店に入ってモーニングでも頼むことにした。
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