第43話 帰還
朝の食事は朴葉味噌だった。
肉や魚は入っておらず、キノコやネギを温めた朴葉味噌に絡めながら食べるタイプだ。
野菜から染み出た旨味が、食欲をかきたてる。
たらふく食べた翌朝でも、ご飯が進む一品だ。
「朝ご飯もおいしいですね~」
「わたしは、ちょっと二日酔い・・・」
この宿は当たりだった。
ただ豪勢ではなく、日本人の心を満足させる料理をふるまってくれた。
「いい宿に連れてきてもらったよ。ありがとう」
感謝の言葉を伝える。
「どういたしまして~」
「どういたしまして」
2泊3日なら、この後で観光に行くのもいいのだが、今回は1泊2日だ。
宿の近くをぶらつく程度にして帰還する。
「それじゃあ、ここで失礼します~」
「また、明日からよろしくお願いします」
転移ポータル(名古屋駅)で別れて、自宅に帰ってきた。
☆★☆★☆★☆★☆★
プルルルル・・・
「もしもし」
「あ、わたし」
★プチデビル(女子高生)が電波を飛ばしてきた★
「どうした?」
「今日、ひま?」
「ああ」
「あれ?今日はピコピコやってないの?」
今日は少し前に帰ってきたばかりで、趣味のレトロゲームはしていない。
「ちょうど帰ってきたところだから」
「どこか行ってたの?」
「温泉」
「一人で?」
なんと答えたものか。
言い方によっては、思春期の好奇心を刺激しそうな気がする。
「会社の仲間と」
「お姉さんたちと?」
なぜ判る。
まあ、やましいことがある訳ではないが。
「そうだけど」
「それで、どうだった?」
「癒された。やっぱ、温泉はいいな」
「ほかには?」
ほかと言われても、たいして観光はしていないしな。
そうだ。
これを言っておかないと。
「すまん、お土産はない。近場だったから買わなかった」
「それはいいんだけど・・・こう・・・ラブコメ的な展開とかは?」
ああ。
そっちか。
やはり、思春期の好奇心を刺激してしまったようだ。
「あるわけないだろ。現実はマンガやドラマじゃないんだから」
「えぇー・・・一緒にお泊りまでして?」
好奇心を満たせなくて悪いが、色っぽいネタはない。
代わりに旅行中にあったできごとを話してやる。
あの宿は機会があったら、おすすめだ。
すると、
「女の人に恥をかかせちゃダメじゃない」
なぜか、呆れたように怒られた。
気づかないうちに、なにか失礼なことでも、してしまっていただろうか。
「なにが?」
「それ絶対、誘ってるじゃない。大人の男として、手を出さないのは、失礼だよ」
どっちが失礼だ。
そんなことをしたら、ギルド(職場)で気まずくなるだろうが。
「だいたい、お土産の選択もダメダメだよ」
「お土産?」
初日に選んだアレのことだろうか。
「女の人が恋愛関係の色を選んでいるのに、男の方が友人関係の色を選ぶって、どういうこと」
「どういうことと言われても・・・」
そんな深い意味はないのだが。
「いい大人なんだから・・・」
30分ほど説教された。
なぜだ。
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