第26話 黒い森

 紅い悪魔(秋の花粉)の攻撃(花粉症)により、個人的に苦手な季節であるが、秋は観光によい季節だと思う。

 また、秋の風物詩も色々あるだろう。


 紅葉

 赤とんぼ

 木枯らし


 これらは昔ながらのものだ。

 目で楽しむもの。

 肌に感じるもの。

 いずれも季節を知らせてくれる。


 ここで、冒険者(サラリーマン)として、もう1つ風物詩を上げたいと思う。


 それは、何の予兆もなく、突然、現れる。

 前日までは、間違いなく何も無い。

 だが、当日になって、突然、現れる。


 観光に向いているこの季節に現れる。

 しかし、季節を感じることはない。

 ただ、鬱陶しい。


★黒い森(修学旅行の学生集団)が出現した★


「邪魔・・・」


☆★☆★☆★☆★☆★


 転移ポータル(名古屋駅)を出て、地下迷宮(名古屋地下街)に向かう通路。

 そこに黒い木々のごとく、黒服(学生服)の集団がいる。


 歩き回ってはいない。

 大地に根を張る木々のごとく、大人しく座っている。


 それはいいのだが、完全に通路の1つを塞いでいる。

 人間が一人だけ通れる幅を開けているだけでもよいのだが、それすらない。

 さらに、座っているのが災いして、ちょっと退いて通してもらうということもできない。


 早めに気づいた人間は、あらかじめ別のルートを選択するが、そうでない人間はかなりの回り道を強いられる。

 特に子供や老人が罠にかかって引き返しているのを多く見かける。

 通過を試みたら、隙間なく生える木々に遮られ、やむなく引き返してきたのだろう。

 心が痛む。


「もうちょっと、何とかならないかな?クラスで分かれるとか」


 管理者(学校の先生)もいるようなのだが、あまり知能が高くないらしい。


「まあ、そんなものかな」


 斧で伐採して、道を確保したい衝動に駆られるが、何とか堪えて回り道を進む。

 明日になれば、消えていることだろう。


 黒い森は、突然現れ、突然消える。

 この季節の風物詩だ。


☆★☆★☆★☆★☆★


 そういえば、自分が学生のときは、どこに修学旅行に行っただろうか。

 

 小学生:奈良、京都

 中学生:東京

 高校生:長崎


 だった気がする。


 中学生のときの修学旅行は、あまり思い出に残っていない。

 東京は大人になってからの方が行っているから、思い出が上書きされたようだ。


 高校生のときの修学旅行は、中華街に行ったことだけ、微かに覚えている。

 だが、大人になってから行った、横浜中華街の方が記憶に残っている。

 出張の帰りに寄ることが多いから、こちらも思い出が上書きされたようだ。


 小学生のときの修学旅行が、一番思い出に残っている気がする。


 奈良=鹿のふん

 京都=生八ツ橋


 で脳にインプットされている。

 片隅に大仏と金閣寺も。


☆★☆★☆★☆★☆★


「修学旅行って、どこに行った?」

「わたしは北海道でした~」


 これがジェネレーションギャップというやつか。

 自分の頃は、学生の分際で海を渡るなど、考えたこともなかったが。

 そういえば、親が修学旅行に行ったときは、八ツ橋が生ではなかったと聞いたことがある。

 それと似たようなものだろう。


「味噌ラーメンがおいしかったんですけど、現地の人はバター入れないんですよ~」


 いや。

 食べ物の思い出が最初に浮かんでくるところは一緒だ。


 『修学』と言いつつ、いつの時代も学生の興味は『花より団子』かな。


「あと、ジンギスカンもおいしかったです~」


 ・・・・・


 自分の周りに食いしん坊が多いだけか?

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