第16話 ジェネラル

 モンスターの中には、進化する奴らがいる。


 ジャック・フロスト(雪の妖精)→ジェネラル・フロスト(冬将軍)

 マジストレイト・ナベ(鍋奉行)→ジェネラル・ナベ(鍋将軍)


 進化したモンスターは、ジェネラルと冠されることが多い。

 冬に進化することが多いようだ。


「そろそろ、涼しくなってきましたね~」


 ダンジョン(客先)からの帰り道に後輩が言う。


「鍋でも食いにいくか」


 課長が提案する。

 今日は魔法使い(プログラマー)達も呼んで鍋だ。


☆★☆★☆★☆★☆★


 参加するのは次のメンバーだ。


 課長(SE:男)

 自分(SE:男)

 後輩(SE:女)

 魔法使い(プログラマー:男)

 見習い魔法使い(プログラマー:男)

 見習い魔法使い(プログラマー:女)


「あ、僕が入れますよ」


 見習い魔法使い(男)が菜箸を手に発言する。

 一番若手なので気を使ったのだろう。

 今回の店は客が鍋に具材を入れるタイプだ。

 シイタケを持ち上げ鍋に近づける。


 がしっ


 その手首を横から掴む存在がいる。

 課長だ。


「いかんな、君。それは、いかんよ」

「ご、ごめんなさい。・・・なにがですか?」


 反射的に謝るが、何に対して注意されたのか、解らなかったのだろう。

 すぐに気づいて確認するところは正解だ。


「シイタケはまだ早い」

「で、でも、キノコ類は火が通るのが遅いし、ダシも出ると思って・・・」


 自分なりの意見を言うのも正解だ。

 だが、相手が悪い。


「間違いではないが、同じ理屈で先に入れるものがある」


 課長は菜箸を受け取り、つみれを鍋に入れる。

 さらに、海鮮類を投入する。


「まずは、肉類や海鮮類を先に入れる。シイタケはもう少し後だ」

「な、なるほど」


 つづいて、鶏肉を入れる。

 どうやら、課長は鍋奉行のようだ。

 次は牛肉のようだ。


 ぱしっ


 鍋に近づく菜箸を、割箸で受け止める存在がいる。

 後輩だ。


「だめですよ、課長~。それは、だめです~」

「むっ。何がかね」


 菜箸を誘導して、牛肉を戻す。


「つみれや鶏肉、海鮮類はいいでしょう~。でも牛肉はだめです~」

「なぜかね」

「硬くなります~」

「むぅ」


 後輩が菜箸を受け取る。

 課長は渋々、納得したようだ。

 どうやら、後輩は鍋将軍のようだ。

 会社の役職や年功序列など知るかとばかりに遠慮がない。


「にんじん~、とうふ~、しいたけ~」


 順に入れていく。


「そして、牛肉です~」


 牛肉を入れ、葉物野菜と続く。

 大皿には、まだ具材が残っているが、それは追加分なのだろう。

 ここまで入れたところで、煮込むようだ。


 ぐつぐつ


「そんなに味が違うもんかねぇ」


 ぎろり


「ひっ!」


 迂闊なことを呟いた魔法使い(男)が縮こまる。

 将軍と奉行の前で命知らずな。


「あ、生中、6つお願いします」


 見習い魔法使い(女)がマイペースに全員分の飲み物を注文している。


☆★☆★☆★☆★☆★


「さあ、どうぞ~」


 飲み物が届いた頃に、ちょうど鍋が煮えたようだ。

 確かに、うまかった。


 そういえば、見習い魔法使い(女)は鍋について特に発言はしなかったので、後でこっそり聞いてみた。


「わたし、まち娘ですから」

「・・・・・?」


 自宅に帰ってから、調べたみた。

 なるほど。

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