7月22日-4-

意味深に言う芹香に、僕は言葉が出てこなかった。


二人は僕に用があるのか?


悠里はここに来た事を偶然と言っていたが、芹香の反応は良く分からない。

結論付けるのも尚早だが、やはり不自然な気がする。

単純に芹香が僕をからかっているだけなら理解出来るが、そうとも限らない。


疑心暗鬼に陥りそうだ。


「おやすみなさい」


考えが纏まらない内に芹香は呟いた。


どこまでもマイペースな奴だ。


慎重に行動すべきだろうから、僕はそれに便乗した。


「あ、あぁ・・・おやすみ」


芹香は、すたすたと悠里のいる隣の寝室へ戻っていった。


何の意図があってここに来たんだ?

眠いからとあいつは言っていたのに。


本当に良くわからん奴だ。


あいつらの事を考えていると、深いため息が出てくる。

深呼吸するように、数度、大きく息を吐いた。


ソファーで、ごろごろと態勢を何度か変えながら無為な時間を過ごす。


拉致られる前とさほど変わらないな・・・


仕事が休みの日は、あまり外を出歩かないようにしていた。

外に出れば、人と関わる可能性も出てくるし、何より面倒だ。

引きこもりでは無いにしても、引きこもり予備軍ではあるだろう。


夏海も仕事があるから、休みが被った時は一緒に過ごしているが、基本的にはぼっちな生活を過ごしている。


こうゆう事を考え出すと気持ちが沈んでくる。


虚しく、もやもやとした気分が煩わしい。


ソファーに寝ころんだ状態で、家の中を見渡すと、最低限度の家具だけがあり、殺風景な部屋に落ち込んでしまう。


せめて、テレビ位は置いといて欲しい。


暇を潰す手段も無い。

娯楽要素に欠けた島では、住人の不満も溜まるだろう。

それでも、慣れてくれば、そういった事も考えなくなるのかな?


慣れたくはないなぁ・・・


暇だ。ただただ暇だ・・・


動画が観たい。ゲームがしたい。夏海に逢いたい。


欲求が抑えきれないが、どうしようもない。


昔観たテレビの番組で、どこかの国では朝から夕方まで、生活の為に食糧を確保したりした後は、日がな一日中、夕焼けの景色を見て過ごす種族がいた事を思い出した。


それに近い感覚だ。

まぁ、食糧やらは支給されてるから、必要最低限度の生活は出来るみたいだが、やはり娯楽施設も無いし不満も溜まってくる。


早くここから逃げ出したい。


かと言って、黒田みたいな奴とは組んだりするのは嫌だ。


手首にある腕輪・・・


この腕輪に爆弾なんて付けれるのか?

強く引っ張ったり、何か衝撃を与えたら誤作動で爆発したら怖いなぁ。



外す事は無理そうだ。


ただ、外す方法もゼロでは無い。


狂気の沙汰だが、手首ごと切り落とせば外す事は出来る。


包丁なんかじゃ絶対に無理だけど、鉈みたいな物で思いっきり、振り落とせば行けると思う。

そんな事を考え、自分で身震いしてしまう。


実行に移す気はさらさら起きない。


そもそも、両腕に付いている時点で、両腕とも切り落とさなくてはいけないし、都合良く鉈がある訳もない。


首輪にしなかった理由は、そういう事なのかも知れない。


首輪に爆弾が埋め込まれていた場合、警戒網に引っかかる事をしでかし、爆弾を作動されてしまえば、文字通りの死である。


あえて手首に付けた理由も、どちらにしようと絶望である事に変わりないからでは無いだろうか。

考えた所で、主催者側の真意は不明だから無意味ではある。


何より、この島で大勢の人達と暮らすだけと言うのも引っ掛かる。


破綻した計画のように見えて、ヘリで支給品を送ってくる辺り、緻密に練られているようにも感じる。


この2、3日で解った事を整理してみて、主催者側は金持ちという事は分かる。


主催者側の目的は不明。

この島で未来永劫暮らすと言ってるが、それはあまりに不可解だ。

主催者側は、恐らく団体だ。

集団で、こんな犯罪をやっている。


これも恐らくだけど、無名島にいる全ての人員の名前も知られている。


拉致された人達の中に主催者側ないし、黒幕がいるのかも知れない。


住人は無差別に選んだと言っていた。


顔見知りがいない。言ってしまえば、誰もが赤の他人。


男女比率は半々か?

その付近だと思う。それも初日に全員が集まっていたドームの中での感想だ。


年齢層もバラバラだ。

自称ではあるが、警察官や教師も拉致されている。

住人の全員の両腕にはリングが付いている。爆弾が埋め込まれているらしい。


監視カメラが、島内に膨大な数が設置されている。

むき出しで堂々と設置されまくっている監視カメラだが、思ったより死角もある。


こんな所かな。

結局、あまり良くは解らない現状だ。


ふと思ったんだが、悠里や芹香はどんな仕事をしているのだろうか。

そもそも、あいつら二人の年齢すら分からん訳だけど、女性の年齢を聞くの失礼とか意味の分からん事を言われたらイラッときそうだ。

悠里辺りが言いそうだ。


外見だけじゃ年は分かりにくい。


落ち着いた雰囲気な芹香だけど、童顔からか悠里より下にも見える。


悠里は悠里で、馬鹿丸出しの発言したり、突発的な行動や仕草も窺えるから、もしかしたら芹香より年下かもしれない。


うん。まぁ、どうでもいいかな。

あいつらの仕事やら年齢なんて気にした所でしょうがない。

あいつらが起きたら、どうにかして関わりを断たないとな。


その算段は見つからないが、ソファーで横になっているとウトウトとしてくる。


眠気は醒めていたのに、やる事が無さすぎてぼーっとしてきた。



結局、僕はそのままソファーで寝こけてしまった。


あいつら二人を追い出す算段もろくに浮かばず眠りについた。








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