7月20日-4-
「とりあえず、僕は一人で見て廻るので、誰かと一緒に居たいなら他をあたってくれますか?」
「なんか、そうゆう言われ方すると振られた気分になるんだけど・・・」
若干どくれているように感じた。
「いや、そうゆうつもりじゃ無いけど、浅か・・・悠里さんには悪いけど、僕には彼女がいるし・・・」
「それ!余計に振られた気分になるんだけど?」
あっ、確かに・・・
別に好きとか言われてもないし、なんか勝手に暴走しちゃってるな僕。
悠里は不満げに唇を尖らしている。
「いや、そ、そうだね!なんか、勘違いしてたかも。ご、ごめん!」
そう告げると悠里は、ずいっと僕の顔の前まで来て言った。
「勘違いじゃなかったら?」
近い近い近い近い・・・
こいつ自分が美人って分かってるからこうゆう事を平気でやってのけるんだ。
ドキドキするけど・・こんな得たいの知れないビッチとこれ以上関わるのは危険だ。
「い、いや、冗談止めて下さいよぉ~それじゃ僕はこれで?失礼しまぁす」
頭をボリボリと掻く仕草と、ヘコヘコと平謝りで下手に出てしまった。
どうもこうゆう時の状況に耐性が無いから、どう接するのが無難なのか分からない。
「ふむ。まぁいいか~じゃあね!正護君!」
あっけらかんと悠里は言った。
こいつ人を弄ぶ策士だろ。
小さく手を振りながら悠里は歩いて行った。
訳が分からなかったがとりあえず、この場を離れるのは早くした方が良い。
今はまだ明るいけどじきに暗くなるだろうから、その前に拠点というか寝床なんかを確保しておいた方がいい。
この島の設備はぼちぼち整っているとか主催者側の奴は言っていた。
つまり普通に住宅なんかもあったりするのかもしれない。
振り返り監禁されていた建物を見ると、丸い円形状のドームのような場所に、僕達は集められていたみたいだ。
この建物はまだ建設されてそんなに経っていないんじゃないかな?
真新しい感じがする。
見る人がみたら築何年とか分かるのかも知れない。
残念ながら僕にそんな匠の目利きは備わっていない。
まだ建物内に残っている人もいるな。
何人かで組んでいる者もいる。
そうゆう人達は一人じゃ心細いんだろうな。
全員が全員そうじゃないだろうけど迂闊に集団の中に入るのも良いとは思えない。
集団の中に一人でも危険分子がいたらとか、子供を連れた集団なら足を引っ張りかねないとか不謹慎ながら考えてしまう。
実際近くにいる集団に、小さい子が3人と大人が2人の5人の集団が見えた。
食糧やら寝床やらも考えてやらねばならないとか考えるだけでゾッとする。
僕は足早に建物から離れた。
周り一面ヒマワリが咲いているのを見て思い出した。
僕の彼女もヒマワリが大好きだったなぁとか。
しんみりしててもしょうがないが、早いとこここから脱出する手段を考えなくてはならない。
歩いていると民家がいくつもある事に驚いた。
普通の家だ。ごく一般的な・・・
違和感的なものがあるとするならば、民家の一軒一軒が新築であることだ。
この島で暮らす為・・・暮らさせる為だけに建てられた民家。
主催者側にどれほどの財力があるのか想像に難しい。
監禁されていた者が恐る恐る入って行くのが見える。
早い者勝ち・・・でも無いかな。
見渡すだけでも結構な数の民家があるし、こんな島の住宅街?だと何かと危険な気もする。
かといってあまりにかけ離れた場所に鎮座してある民家も、周囲の現状を窺えないので不安にもなってくるしなぁ。
そうこう考えながら歩いている内にやっぱりなと思った事がある。
住宅街の周りのあちらこちらに、こうやって歩いていて街灯なんかにも監視カメラが設置されているのが分かった。
かなりの数である。
堂々と設置されているがこれを壊すとどうなるんだろうか?
誰かぶっ壊してくんないかなぁ。
そんな事を考えながら歩いていると周辺に民家が三軒ほどしかない場所にやって来た。
周りが森って事もあってここは静かだし、僕は住宅街なんかよりはこういった場所の方が好きなので、この中の一軒を拠点にしようと思う。
どれも似たり寄ったりな家な訳で、その中の一軒の玄関先まで来た。
玄関にも当然のように監視カメラがある。
これも見られているのだろうか?
アホ面下げてピースしてやろうかと思ったが、そんな事で爆破されたらたまったもんじゃないしな。
「お、お邪魔しま~す」
なんとなく人の気配が無い事は分かっていたけど、とりあえず挨拶はしてドアを開けた。
ドアに鍵が掛かっていないのも主催者側の意図的なものだろう。
玄関先で靴を脱ぎ廊下を、ゆっくりと歩いて行く。
不法侵入している気分に陥ってくる。
内心心臓がバクバクしている。
今誰かが、「わっ」とか言って脅かして来たら、ぷぎゃ~とか言って驚く自信があるね。
つーかやっぱり家の中にまで監視カメラがあるんだね。
まぁ監視カメラの死角を突いたら見られなくてすむけど、そもそも215人の人間を一人一人監視なんて不可能ではないのか?
どんだけ大人数で監視してんだって話しになると思う。
リビングらしきところにも監視カメラはあった。
ソファーもある。
無意識に僕は腰掛けた。疲れていたからなぁ。
ずっと立ちっぱなしだったし、なんだかんだ無事な事にホッとしていた。
辺りを見渡すとテーブルの上に食糧があるのが分かった。
乾パンやら缶詰め、ご丁寧に缶切りも置いてある。
用意周到と言うよりもうただただ怖くなった。
主催者側の底の知れない感じが本当にこの島から出られないんじゃないかと思わせた。
非常食に手を付けず僕はそのままソファーで眠った。
気が緩んだのもあるけどソファーの心地よさに負けただけだ。
まだまだ調べないと行けないけど、今はとりあえずニート特有の明日から頑張るの精神になったのだ。
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