第22話 戦闘終了
「確かあの丘の上だったはず!」
ピズは、グラキエースを駆使してから全力でシャイとメイのところに戻るために走っていた。
「シャイ!メイ!」
丘を登り終えるちょっと前にシャイとメイの姿が見えた。そして、それを襲おうとした凍ったオーク2体。
「おにいちゃんーー!!!!!」「かえってきたです!!!」
2人とも涙が出ている。それほどの恐怖を植え付けたのだろう。
「大丈夫だった?このオークどうしたの!?どうして、ロープで拘束されてるの!?村長達はどこにいる!?」
ピズはわからないことを聞いていく。そして聞きながら、ロープを剣で切って、解いた。
「みんな、おとりにしてにげた」「そんちょーがロープだしてしばったです」
「なんだと!それで村長は!?」
「あっち」「むこうです」
ピズに抱きつきながら、2人は指をさした。その方向を見ると村長と先頭の男たちが地面に座り込んでいる。囮にしたのになぜ逃げないのだろう。
ピズは気になったので2人と手を繋ぎ、村長達がいるところに行った。
「おい!村長!これはどういうことだ!!」
ピズは大きな声で、怒りを乗せ怒鳴った。シャイとメイは一瞬だけ、ピクッと体を震わせていた。
「助けてくれー!」
村長が叫んだら、周りを囲んでいた村人達は、左右に退いた。最初に目に入ったのは、村長の腕だ。右腕が丸ごと無くなって、必死に止血している。そしてその横には、腕を咥えたまま死んでいる狼がいた。
ピズは近寄り、村長を見下ろした。
「そ、でさ、なんで囮なんてしたのかな?」
「だって!そうした方が…助かる……人が増えるから…」
最初は強気だったのだが、だんだん弱くなって行った。
ピズはそのまま強気でいく。
「こんな歳も行かない子にオークの囮だって?ふざけんな!お前ら男だろ!?玉ついてそんな弱っちいのか!?ああ!?お前らはゴブリンと同類だよ!!ゴミクズが!!」
「ひ、ひぃぃぃっ!」
周りにいた男達も怯えてしまっている。効果は抜群なようだ。
「わ、わわ、わかったから!だから謝る!この通りだ!だから腕を治してくれ!!」
まだ腕を治すことを願ってきた。そもそも、直す方法なんて知らないよ。
「そうよ!そ、村長が囮って提案したんだわ!!」「そうだったよ!村長が言いだしてたわ!」
そんなことを女子勢が言い出した。その言葉によってまた怒りが登ってきた。
「黙れ!!なんで提案した時点で止めたりしなかったんだ?なぁ?結局はお前らも囮に賛成してたんじゃないか?ああ?結局はお前ら全員悪いんだよ!ゴミ女ども!!」
「ご、ごめんなさい!!囮にしてごめんなさい!!!」
女勢が、みんな怯えて、そのせいで子供達も泣き始めてしまった。大人に泣かれるのはいいが、子供まで泣かすのはやりすぎたのかもしれない。
が、怯えて謝るのはいいが、相手が違うだろうに。
「誰に言ってんの?俺か?違うだろう?ちゃんと謝れ」
そんなことを言ったらシャイとメイの周りには、沢山の人達が集まった。それぞれ、謝っていて、神さまを拝んでいるようにも見える。
しばらくすると、周りから離れて、今度は村長を整列し、みんな座りだした。
「シャイ、メイ、みんな許すか?あんな奴らでも必死に生きてるんだとさ」
「んー、ゆるす、でも、いやなことはもうぜったいにしないこと!」
「ゆるしたくないけど、はんせいしたらゆるすです!」
その言葉に、みんな目を丸くした。よかったなシャイとメイが優しくて。許さないって言ってたら、みんな奴隷落ちしてもらってたと思う。
「2人が許したから、俺はもう交渉しない。だが、まだシャイとメイに付きまとうのだったら容赦しないからな?わかったか?」
「「「「「わかりました!」」」」」
みんな揃った返事を聞き、そこを後にした。
村長の腕はもう治らないだろうな。
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