第11話 餌付け
塩味のお粥を食べたあと、口移しで、あげた。
その時に、片方は起きた。
「…助けて、お母さん…」
「ごめんね、遅くなって」
起きるなり、泣き出してしまった。まだ一桁代の女の子だ。親がいなくて恋しいのだろう。
起きた子は髪の毛は白く肩したまで伸びて、肌も白く、可愛い子だ。
「…お母さん…」
「もう、いないんだ。ごめね。助けられない」
この子は、さらに、優しげな瞳から、雫を雨滝のように流し始めた。
「じゅっとさがしてよぉ!ひっ、じゅっとさぁ!!!!!」
無理もない。俺も、捨てられた時は悲しかった。もういないんだ。って思うと、泣きそうになった。自分はゴミなんだ。と。
でもね。その分頑張ろうとも思った。
捨てた子が、実はとってもすごい子だって言われるために今も頑張っている。
だから。
「助けられない。でも、これから、頑張ろうよ、どこかにいるママに見てもらおうよ、成長した姿、思い。だから生きよう、頑張ろう?」
「…でもママ…いない…」
「頑張ろうよ、一緒に」
「…ママ…見てくれるかな…」
「うん!きっと見てくれるよ!」
「…そっか…そうだよね!見てくれるよね!」
濡れた瞳はまた、色を取り戻した。体の痣はまだ少しあるが、そのうち治る。
お母さん。元気してるかな。
ぎゅー、
誰かとは言わない。お腹が鳴った。
「もっと、食べよっか」
「あ、ありがと、お、お、お兄ちゃん!」
天使か、と思うほど可愛い笑顔。そしてやる気に満ちた表情。そして一歩を踏み出したのだ
♢
「もう、いらない?」
「うん、お腹いっぱいになった、お兄ちゃんありがと!」
体が小さいのに、2杯も食べた。それほどお腹が空いていたのだろう。
「あのこ、おきないね、お兄ちゃん」
「そうだね、でももうすぐ起きると思うよ」
「そうなの?……ほんとだ!!おきた!!」
ゆっくりと起き上がり、周りを見て、目があった。
「…こ…こっち…いや……」
「だいじょーぶだよ!あのおにーちゃんやさしいよ!」
ピズが、話かけるより、同い年ぐらいの子が話した方が、説得力があると思う。
この子は、獣人の子だ。さっき、髪の毛を拭いている時に、犬のような耳があった。
明るめな茶色い髪の毛で瞳は怯えている。
「…こわい……きたない……やだ……です…」
「もう大丈夫。ゴブリンたちもう倒しといたからもういないよ」
「そう…なんです…」
「そうだよ、怖かったね、もう大丈夫だよ」
ぎゅー、
みんな生きてる。誰とは言わない。お腹が鳴った。
「ご飯食べよっか」
「……はいです!」
やっぱり女の子は笑顔が1番だ。笑っていればそれでいい。どんな子でも、どんな事があっても。
ピズは【亜空間収納】からお粥を取り出した。【亜空間収納】はいい。時間が止まるから、ご飯をいくら作っても冷めない、腐らない。
お粥をお椀に盛って、獣人の子にあげた。
「食べていいです、か?」
「もちろんたくさん食べて元気出そうね」
何日放置されたのか、何日オモチャにされたのか。わからないが、2人ともやせ細っているし、2人とも互いに面識がなさそうな感じだ。
沢山食べ元気出して欲しい。
♢
「服ないです、か」
「あっ、ごめん、忘れてた、今やるから、ちょっと待って」
「あたし、まってるー!」
服をまだ、着せていなかった。天気のいい日に川の側の平原に裸の2人。これはいろいろやばい。なぜ、今まで気がつかなかったのだろう。
急いで、2人を包んでいた洗った布を取りに行き一度【亜空間収納】に入れた。そして上下1着作り、片方はそれを着せて、もう片方は、自分の予備を着せた。
「ありがとうです!」
「あったかーい!」
「ごめんね、気がつかなくて、さて、街に行こうか」
「はいです!」
「いこー!」
賑やかだなと思う。街に行ったらどうしようか。一緒に旅をするにしてもお金がかかる。
そんなお金まだ持っていない。それに今は稼ぎがない。
「あとででいいか」
そんな独り言は風に乗ってどこかへ消えた。
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