第8話 自分との向き合い

もう何体殺したか、数えていない。

むしろ、殺すことに必死だった。なぜなら。


「ギギー!グググ!」


緑色な小太りなおっさんな顔の外繁殖型の魔物。そう、ゴブリンだ。

外繁殖型、とは、自分たちの種族で繁殖できないので、多外種族から、繁殖器官を借り、繁殖することである。その多外種族は人間も入っている。故に、襲われて、悲劇が生まれる元凶である。


「グキ、グキィィ……」


最後の1匹が息絶えた。その数約20強。ピズの体の傷は小さいのが数十あり、大きいのが2ある。既に瀕死である。


なぜ、こうなったか、それは、ギルドを出てからである。







「くそ!!!!!」


街を出るなり、小山の方へドスドスと歩いていた。


「やばい!逃げろ!死ぬぞ!!ギルドに行って応援を呼ぶぞ!!」


「ああ!わかったぜ!兄貴、俺たちゃにげるためにメスどもを連れたんだな」


「そうだ!少しだがいい時間稼ぎになるだろう!それよりもっと早く走れ!!」


「あいさ!!」


そんな会話をしながら全力で走っている、男2人がいました。

ピズは気になったことがあった。

男たちの会話で言っていた、「メスどもを連れてきた」と言っていたことに気になり、男たちが走ってきた方向に向かい、走っていた。




「あれ、なんでここにいるんだろう」


目の前には、鎧は凹み、足から血が出て、半分に折れた剣を持ち、小太りな緑のおっさんと対峙している姿が広がっていた。


「こ、こっちこないで!!」


叫びが聞こえてくる。既に立っている少女の後ろには、座り込んで、肩から血を流している人が見える。


「ど、どうしよう!?」


かっとなってここまできてしまった。自分は役立たずなゴミだと思いながら、死にたいと思いながらきてしまった。


「ここまで、か」


ピズは思った。どうせ死ぬなら、カッコつけて死にたい。と。


それから、【亜空間収納】を開き、戦闘系のスキル玉を取り出し、手で握りつぶした。

これで少しだが、幾分マシになるだろう。

【剣士】、【投擲】、【魔剣士】、【龍剣士】、【精霊術】。


その全てを潰し、粒子となって体に巻きついた。これで今だけは、これら全てのスキル持ちだ。時間は剣士から、30分、30分、15分、15分、15分だ。


「フゥゥゥ、うあああああああああああ!!!!!」


雄叫びを上げ、自分を奮い立たせ、全力で走っていった。


背中から、直剣を取り出し、【魔剣士】のスキルで、剣身に魔力を纏わせ、切れ味を強化、【龍剣士】でダメージアップ。底上げに過ぎない。


「ギュガァァァ!!」


「うっ!」


それから一体ずつ倒していった。









「おい、大丈夫か?」


息を整え、戦っていた、女戦士に声をかけた。


「はぁ、はい、大丈夫、です」


周りには、血の海が広がっている。ピズは死ぬつもりで戦った。死ぬ気でじゃない。死ぬつもりで戦ったのに生き残ってしまった。


「はぁ、まだ生きろってことか……それよりもっとこれ、飲め、治癒ポーションだ」


ピズは【亜空間収納】から、旅中で採取した素材から作った自家製治癒ポーションを渡した。


「あ、ありがとう」


治癒ポーションは2つしかない。なので女戦士達に1つ渡し、自分で1つ飲んだ。


女戦士達は、半分ずつ飲み、地面にへたり込んでいた。


治癒ポーションはすぐ回復するわけではない。ただ、少しずつ回復していく。魔法で言うとリジェネと言うらしい。


ギリギリな戦いだった。もう魔力は尽きてるだろう。それにここに精霊がいるのは意外だった。

それは戦い中に聞こえた声だった。


「手伝ってあげよっか、ウフフ」


そんな声が聞こえて、契約した。対価は、魔力と血だった。その精霊は上位精霊だった。


それがなかったらもう死んでいただろう。


精霊の対価は小精霊は会話などで済む。中精霊は少ないが何かしら対価を払う必要がある。

そして上位精霊は対価が一気に跳ね上がる。中には指1本などあるらしい。

今回は幸い、魔力と血だった。魔力ならあるし、血は傷から出てきている。

それらで対価を払った。


「ねぇ、なんで、助けたの」


戦い後の生きた心地に触れていると、ふと声をかけられた。


「え、な、なんとなく」


「そ、ありがと、フフ」


笑顔が素敵な子だと思う。

ピズはあまり女子と話すのが苦手だ。なぜなら、恐れている。笑われるのを、【生産】だからと言われるのが嫌だから。


「う、ううぅ」


一方で、先に倒れていた少女は、一向に起き上がらない。むしろ、苦しそうにしている。


「どうしたのミル!!起きて!!助けて!」


「これ、毒かな多分」


「早くしないと!!」


「そうだね早くしないと」


倒れた少女の腕と指がピクピクしているのできっと、神経毒などだろう。

知恵がある魔物か。厄介極まりない。

確か、毒に効く、ポーションが前に生産中に出てきた気がする。


そうしてピズは目を瞑り、生産を始めた。


約10秒、解毒となっていたボードに神経毒を思い浮かべて、その結果神経毒解毒ポーションになった。みんなは、【生産】はゴミとか言うがこれを知らないからだろう。ムカついてくる。でも今はそんな暇はないので、作ったポーションを彼女に渡し、飲ませていった。






「起きて!ミル!!」


「ん、はぁ、あ、あれ、ゴブリンは!!」


15分弱で倒れた少女は起き上がった。

それを見届けて、ゴブリンの死体処理を始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る