第8話 自分との向き合い
もう何体殺したか、数えていない。
むしろ、殺すことに必死だった。なぜなら。
「ギギー!グググ!」
緑色な小太りなおっさんな顔の外繁殖型の魔物。そう、ゴブリンだ。
外繁殖型、とは、自分たちの種族で繁殖できないので、多外種族から、繁殖器官を借り、繁殖することである。その多外種族は人間も入っている。故に、襲われて、悲劇が生まれる元凶である。
「グキ、グキィィ……」
最後の1匹が息絶えた。その数約20強。ピズの体の傷は小さいのが数十あり、大きいのが2ある。既に瀕死である。
なぜ、こうなったか、それは、ギルドを出てからである。
♢
「くそ!!!!!」
街を出るなり、小山の方へドスドスと歩いていた。
「やばい!逃げろ!死ぬぞ!!ギルドに行って応援を呼ぶぞ!!」
「ああ!わかったぜ!兄貴、俺たちゃにげるためにメスどもを連れたんだな」
「そうだ!少しだがいい時間稼ぎになるだろう!それよりもっと早く走れ!!」
「あいさ!!」
そんな会話をしながら全力で走っている、男2人がいました。
ピズは気になったことがあった。
男たちの会話で言っていた、「メスどもを連れてきた」と言っていたことに気になり、男たちが走ってきた方向に向かい、走っていた。
「あれ、なんでここにいるんだろう」
目の前には、鎧は凹み、足から血が出て、半分に折れた剣を持ち、小太りな緑のおっさんと対峙している姿が広がっていた。
「こ、こっちこないで!!」
叫びが聞こえてくる。既に立っている少女の後ろには、座り込んで、肩から血を流している人が見える。
「ど、どうしよう!?」
かっとなってここまできてしまった。自分は役立たずなゴミだと思いながら、死にたいと思いながらきてしまった。
「ここまで、か」
ピズは思った。どうせ死ぬなら、カッコつけて死にたい。と。
それから、【亜空間収納】を開き、戦闘系のスキル玉を取り出し、手で握りつぶした。
これで少しだが、幾分マシになるだろう。
【剣士】、【投擲】、【魔剣士】、【龍剣士】、【精霊術】。
その全てを潰し、粒子となって体に巻きついた。これで今だけは、これら全てのスキル持ちだ。時間は剣士から、30分、30分、15分、15分、15分だ。
「フゥゥゥ、うあああああああああああ!!!!!」
雄叫びを上げ、自分を奮い立たせ、全力で走っていった。
背中から、直剣を取り出し、【魔剣士】のスキルで、剣身に魔力を纏わせ、切れ味を強化、【龍剣士】でダメージアップ。底上げに過ぎない。
「ギュガァァァ!!」
「うっ!」
それから一体ずつ倒していった。
♢
「おい、大丈夫か?」
息を整え、戦っていた、女戦士に声をかけた。
「はぁ、はい、大丈夫、です」
周りには、血の海が広がっている。ピズは死ぬつもりで戦った。死ぬ気でじゃない。死ぬつもりで戦ったのに生き残ってしまった。
「はぁ、まだ生きろってことか……それよりもっとこれ、飲め、治癒ポーションだ」
ピズは【亜空間収納】から、旅中で採取した素材から作った自家製治癒ポーションを渡した。
「あ、ありがとう」
治癒ポーションは2つしかない。なので女戦士達に1つ渡し、自分で1つ飲んだ。
女戦士達は、半分ずつ飲み、地面にへたり込んでいた。
治癒ポーションはすぐ回復するわけではない。ただ、少しずつ回復していく。魔法で言うとリジェネと言うらしい。
ギリギリな戦いだった。もう魔力は尽きてるだろう。それにここに精霊がいるのは意外だった。
それは戦い中に聞こえた声だった。
「手伝ってあげよっか、ウフフ」
そんな声が聞こえて、契約した。対価は、魔力と血だった。その精霊は上位精霊だった。
それがなかったらもう死んでいただろう。
精霊の対価は小精霊は会話などで済む。中精霊は少ないが何かしら対価を払う必要がある。
そして上位精霊は対価が一気に跳ね上がる。中には指1本などあるらしい。
今回は幸い、魔力と血だった。魔力ならあるし、血は傷から出てきている。
それらで対価を払った。
「ねぇ、なんで、助けたの」
戦い後の生きた心地に触れていると、ふと声をかけられた。
「え、な、なんとなく」
「そ、ありがと、フフ」
笑顔が素敵な子だと思う。
ピズはあまり女子と話すのが苦手だ。なぜなら、恐れている。笑われるのを、【生産】だからと言われるのが嫌だから。
「う、ううぅ」
一方で、先に倒れていた少女は、一向に起き上がらない。むしろ、苦しそうにしている。
「どうしたのミル!!起きて!!助けて!」
「これ、毒かな多分」
「早くしないと!!」
「そうだね早くしないと」
倒れた少女の腕と指がピクピクしているのできっと、神経毒などだろう。
知恵がある魔物か。厄介極まりない。
確か、毒に効く、ポーションが前に生産中に出てきた気がする。
そうしてピズは目を瞑り、生産を始めた。
約10秒、解毒となっていたボードに神経毒を思い浮かべて、その結果神経毒解毒ポーションになった。みんなは、【生産】はゴミとか言うがこれを知らないからだろう。ムカついてくる。でも今はそんな暇はないので、作ったポーションを彼女に渡し、飲ませていった。
「起きて!ミル!!」
「ん、はぁ、あ、あれ、ゴブリンは!!」
15分弱で倒れた少女は起き上がった。
それを見届けて、ゴブリンの死体処理を始めた。
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