第7話
外食を済まし、買い物をすることにした。
「こっちでもいいなぁ。でも…」
ピズはいま、魔導コンロを選んでいた。
魔導コンロとは、魔石を入れるだけで簡単に火を起こすことができる。魔法系のスキルで、火を起こせるならキャンプなどでもいいが、そんなスキル持っている人が限られているため、冒険では魔導コンロは必需品だ。
ベフェルンで買っても良かったが、どれも中古だったので、「これは新品がいい!」と言うことで貿易の盛んなこの街で買うことにした。
「こっちにする!」
選んだのは2式魔導コンロだ。2つ火を起こすところがあり、一度に2つの食べ物を作ることができる。
「あいよ、2式魔導コンロだな、100,000メルな」
「げっ!」
手持ちの半分持ってかれることになる。でも毎日外食をするとそれ以上かかるので、仕方ない。
「か、買います」
素直に100,000メルを渡し、【亜空間収納】に入れて、次の買い物に行った。
♢
「これと、これと、これと、これと、これで」
今度は食材を買いに来た。残り、2日分しか、【亜空間収納】に入っていないので、足すことにした。
「ほれ、20,000メルだ」
「はいこれでぴったり」
しっかり20,000メルを渡し、しっかり【亜空間収納】にしまった。
買った食材は25日分ぐらいだ。これでしばらくは持つ。それに一気買いしてもどうせ【亜空間収納】では時間経過がないので、大丈夫だ。
食器は、バイトしていた酒場から退職祝いだ。と鉄のよくある皿をもらったのでしばらくはそれを使うだろう。
♢
「ふぅ、お金なくなってきたな」
道の脇の段差に座りながら【亜空間収納】に入っているお金を見ていた。
「あと、135,050メルか、どうしよう」
元々少なかった手持ちの金額は、半分まで減ってしまった。孤児院の頃に必死に溜めたお金はなるべく無駄にしたくない。
「仕方ない。魔物を倒すか」
魔物。それはこの世界を恐怖に落とした元凶だ。スキルは魔物が出た時、同時にできたと昔からの言い伝えになっている。
孤児院の時は、院長が魔物狩りでお金を貯めるのを断固として禁止していた。
おそらく理由は、死を恐れていたからだろう。
だが、いま、院長はここにいない。誰も止めない。なら
「よし、やるか」
魔物狩りを始めることにした。
♢
「討伐制登録したいんですが」
「はい、スキルはなんですか」
「生産です」
「いえ、冗談はよしてくださいよ、それでスキルは」
「生産です」
「ですが…」
そんなやり取りをしていた。理由は【生産】だから。【生産】スキルだから、受け入れてくれないのだろう。誰しもスキルにあった職業を選ぶだろう。
こんなスキルだから、誰も引き取らない、雇わない。それは討伐ギルドも一緒。ここは魔物の死体を売ることができて、依頼達成によるお金も得ることができる。これらのお金は国から出る。そして物を売ったりする職業の人たちは毎月国にお金を払うことになっている。
そのお金を討伐ギルドで払う。国はそのような制度で金が回っている。
討伐ギルドに入っていないと、死体を受け取ってもらえない。
なので、入ろうとするが、【生産】なので入れない。
ほんっとうに最悪なスキルだな。
「わかった。いいよ、また来る」
「ですから職業にあった…」
その場から出た。
「くそ!!なんでこんなスキルなんだ!!」
ギルドを出るなり、叫んだ。その結果、周りから痛い視線をもらった。
それに気がつき、自分を責めた。
どうせ【生産】なんて何もできない。
いくらスキルを作れてもアビリティを得ても結局【生産】なんだから。
どんなに強くても【生産】なんだから。
ピズは街を出た。
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