1-1
ダン!!!!
と言う希望は儚く散ったらしい。
音のした後方へ振り向くと、机を叩き、わなわなと肩を震わせた令嬢がこちらを睨みつけていた。
綺麗に巻かれたピンク色のツインテール。
ドール人形のように可愛らしい見た目で、瞳は薄いブルーだ。小顔なため、さらに強調されて大きく見えた。
しかしそのガラス玉のような綺麗な瞳が、今はひどく歪んでいる。
ぶつぶつと何かを呟きながら席を立ち、フィオナの方へ一歩踏み出す。ふらりふらりと身体を左右に揺らす様は恐怖心を煽った。
「フィオナ、下がって。」
ところが、フィオナの前に立ち塞がったフェンを見てハッとした表情を見せると、途端に踵を返した。そのまま足早に教室を去って行く。
「あらら〜僕らフィオナちゃんに構い過ぎたかな?」
『わかっていたのなら辞めてください…。』
「あはは、ごめんねえ。」
ロドフは大袈裟に肩を窄めつつも、全く反省の色が無い。ただでさえ注目されて恥ずかしいし、彼女への罪悪感に苛(さいな)まれて居るのに。
もしかすると彼女は、5人の内の誰かに想いを寄せているのだろうか。
そうだとしたら尚更申し訳ない。
『彼女を探して来ます。』
「え?!でもこれから授業だよ?」
ロイから服の裾を掴み引き留められるが、フィオナは首を横に振る。
『授業が始まるまで、まだ時間があります。
それまでに彼女と話して来ます。』
「話すって何を…。」
レオが最後まで発するのを待たずに教室を出た。後ろからまだ何か聞こえるが、次第に遠ざかって行く。
…追って来ていないみたいだ。
ホッと胸を撫で下ろすと、足を進めつつ例の令嬢が行きそうな場所を思い浮かべた。
『確かこの近くに中庭があったはず。』
だた中庭と言っても、数種類の棟につき1つずつ設置されている、数ある中の内の一つだ。しかもそれぞれで様式や、面積まで異なっている。
編入初日であるフィオナにとって、選択肢は限られていた。ここから最短で行ける中庭に居ると良いのだけれど。
「僕もこの近くの中庭に居ると思うな。」
『フェン様?!』
「様は辞めて欲しい。」
『えーと…じゃあフェン?』
「うん。」
満足気に微笑み、肩を並べて歩くフェン。
危うく自然な流れに呑まれそうになった。
『どうしてここに?!』
「え、だって僕、フィオナの護衛でしょ。
例の彼女、一緒に探すよ。」
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