第1章-1予想外の編入生-

想定外だ。

女子生徒達は、皆一同に表情を暗くした。


「本日からこのSクラスに編入となった、フィオナ・リーベルタス・アルフレッド嬢だ。」


『よろしくお願いいたします。』


前触れも無く唐突に現れた彼女。だが別に、ここまではどうでも良い。

フードを深く被っているため詳しくは知れないが、佇まいからするに恐らく容姿端麗なのだろう。だがこれも、どうでもいい。

このSクラスには一国の王子王女もいるのだ。余程ずば抜けた外見ではない限り、気に留める必要は無い。


問題はこれだ。

女子生徒達は改めて今現在に直面し、剣呑な眼差しを前方に向けた。


「ふわぁ…おはよ、フィオナ。

今日は僕が護衛でしょ、だから早起き頑張った。」


どうしてフェン様が朝からご出席なさっているの?!普段はこの教室で見掛けることすら珍しいのに。丸くなって寝ているどころか、しっかり自身の足で立って喋っている。


「えーちょっと!僕も早起きしたんだけど!

僕の方が1番に起きたに決まっているから、ねぇフィオナ撫でて。ねぇ〜。」


ロイ様も、ここまで1人の女性に執着している姿は初めて見る。いつもの笑顔が信じられない程の満面の笑み。彼女の隣で頬杖を付き、目を輝かせている。


「編入早々は大変でしょ?僕が隣で教えてあげようか。

ああもちろん、どこで躓いているのか直ぐに把握したいから、膝の上に乗って欲しいな。」


ロドフ様はいつも通りだと思ったけれど、どことなく熱が篭っているように感じる。彼女へ向ける瞳がいつも以上に、艶っぽい。


「はぁ、全くロドフ。ほら、フィオナ様が困っているだろう?その調子なんとかならないのか。」


そう言いつつもちゃっかり彼女の頭の上に手を置き、ぽんぽんと優しく撫でているレオ様。…その場所変わって欲しい…じゃなくて!

普段、悩殺スマイルで女性陣をあしらうレオ様からすると、信じ難い光景だ。


「その手を離せ。」


目にも止まらぬ速さでレオ様の手を払ったのは…クロード様?!周囲に全く興味無しで有名な、あのクロード様まで動かすとは…羨ましい。


…嫉妬と羨望が入り混じった視線をひしひしと感じる…。


フィオナは背後から突き刺さる視線を受けて縮こまっていた。悪目立ちを避ける為に一般クラスでは無く、Sクラスに編入したはず。

しかし、5人の彼等はフィオナの予想を上回る人気振りだった。


初めて彼等に出会った当初は、確かに見惚れてしまう格好良さだったけれど…。こんな事になるのだったら、一般クラスに編入すれば良かった…。彼等に悟られないように僅かに眉を下げる。


せめてもの救いは、フェン様の妹という設定にしてもらえた事。この設定のおかげで、ある程度は5人彼等が私に興味を示す理由を解ってくれるだろうし、今すぐに嫌がらせを受ける事も無さそうだ。

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