4-3

『はいはい、どいたどいたー。』


口元を緩めながら、彼女を取り巻くク5人の彼等を回し見た学園長。


『お前らが必要以上にフィオナを気に入っているのはわかった。』


堪え切れずに噴き出し、豪快に笑った後、意地の悪い笑みを浮かべる。


『ちょうどいい。

結界がある限り学園内は安全だが、万一に備える必要があるだろうからな…。』


既に彼の中で答えは出ているはずなのに、勿体付けたように彼等を観察する。

すると、途端にそれぞれが学園長を威嚇するような表情を作ったことから、またも笑いが込み上げてきたらしい。


『くっく…。よしお前ら、明日からフィオナの護衛になれ。』


予想外の発言にフェンから放たれる光の花が、より一層溢れたのは勿論の事、その他4人の目が輝いたのは見間違いでは無いだろう。


「ふふ、これで一々口実を作って君に会いに行く必要も無くなった訳だ。」


相変わらずフィオナの腰に手を回したままのロドフは、その手に力を込める。自然と抱き寄せられ密着する体制になりフィオナは慌てた。


『あ、あの…。』


「何?照れちゃってるの?

あーもう、本当に可愛い。」


「こら、ロドフ。言っているだろう、フィオナ様を困らせるなと。」


そう言いつつフィオナの右手を掴んだレオは、そのまま彼女の足下に跪いた。手の甲に口付け、恭しく頭を下げる。


「本日より貴方のナイトとして誠心誠意、務めさせていただきます。」


さらに視線だけを彼女に向けて、ふわりと微笑む。


「とても、光栄です。」


先行きの不安を考えると嬉しい反面、レオの綺麗な金髪から覗く悩殺スマイルは計り知れない。

熱の篭った綺麗なアイスブルーの瞳を直視出来ず、気押されたフィオナは一歩後退りした。


その拍子に体制を崩してしまった所を、今度は違う誰かに抱き止められる。


『すみませ…?!』


振り返ると居たのはクロードだった。先程までは目の前に居たはずだったのに、いつの間に。

一見するとポーカーフェイスだが、よくよく見ると眉間に皺が1本立っている。


その縦皺の数次第で彼の心情を推し計れそうだ、なんて失礼な事を考えていると更にもう1本、皺が追加された。


「おい。」


『な、なんでしょう?』


「魔力はあるのか?」


その言葉にピンと来たロイは、フィオナの側に駆け寄った。


「あ、そう言えば!

フィオナから全く魔力を感じないよねえ?」


『魔力?』


フィオナは、はてと首を傾げる。

記憶が無い以上、今までの自分がどうしていたのか、どんな力を持っていたのか判りようがない。


唯一自身が皆の言う“天族”だと裏付け出来るものは…。

首を回し、背中に感じる違和感に視線を向けた。




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