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その正体は両翼。


姿形は鳥類のそれを連想させるが、異なるのは色だ。

透き通るような白。さらにふわふわと発光しており、見る角度によって光り方も異なっている。


さらに翼だけで無く、彼女の肌も透き通る様な色白だ。髪色は白に近い金色。

そして金からエメラルドにグラデーションが掛かった瞳。


その神秘的な容姿に、5人の彼等はフィオナに出会った当初から惹かれていた。

けれどどう言う訳か、彼女から「生」を感じない。

確かに彼女は目の前に居るのに、本当に実在しているのかわからない、そんな錯覚に陥る。


「なるほど、魔力が無いから、か。」


レオは目を見開き頷いた。


どんな生き物にも血が通っているのと同様に、この世の生き物には全て魔力が宿っている。


その魔力が、彼女から全く感じないのだ。


「魔力が無いとダメなの?」


不安そうなフェンにロドフは肩を竦めて見せた。


「そうだねぇ。特に学園ではさ、魔力量、学力、技量によってクラス分けされているじゃない?」


「ああ、だから魔力が無いお前は、最下位クラス確定となる。」


クロードの眉間は皺くちゃになっていた。


『そうか、お前らは最高位クラスだったな。』


一段落したと思った問題がその場凌ぎだった事がわかり、学園長は小さく舌打ちする。


『という事は、だ。

最高位クラスのお前らが、最下位クラスの特定の誰かを構うのはかえって危険か?』


今の状況下で彼女が悪目立ちする事は避けたい。かと言って、護衛を付けないのも危険だ。


『本来、天族にも魔力がある筈なんだがな…。』


それも、この世の種族で最も多い魔力量を誇る竜族を、遥かに凌ぐ程だ。


『もしかすると、呪の類が影響しているかも知れねぇな。』


その予想が正しければ尚更危険だ。

まるで血流を止められているようなもの。下手に魔力回復措置を行わない方が良い。


…やっかいな呪いを掛けられたな。


学園長はそっと彼女を盗み見る。

外傷こそは回復出来たものの、内傷はどうにか取り繕っただけ。恐らく数ヶ月は歩く度に痛みを伴うだろう。


『だったら、魔力があるふりをするのはどうかしら?』


頭を捻る学園長に提案をしたのは、意外にも小さな妖精達だった。

赤の少女が得意気に胸を張る。


『ふり、ですか?』


『僕達が貴方に力をお貸ししますよ。』


青の少年は戸惑うフィオナの右肩に腰掛けると、こちらを向いてニコリと微笑んだ。


『天族は太陽に近い存在です。

そんな貴方にお力添え出来るなんて、僕達にとって最高の誉(ほまれ)なんですよ。』


紫の少女もケタケタと笑いながら、フィオナの髪の中へ潜り込む。


『今は魔力が無くてもわかるよ。

うーん、君の側は心地良い。』


珍しい。契約では無く、自ら力を貸すとは。


文献では妖精族が他種族へ力を貸す際には、仮でも契約を結ぶ必要があった。対価もそれ相応だったと聞く。

その必要が無いほど彼女、所謂天族には何かがあるのだろう。


小さな妖精達の会話を聞きながらクロードは胸中で模索した。

彼女が魔力を使用出来なくても実は他の策があったのだが、その必要は無さそうだ。




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