3-2

彼女の反応を見て気を良くした金眼の彼は、チラリと視線だけを向けた。クロード、レオ、ロドフ、ロイの順に回し見てニヤリと口端を吊り上げる。


…何をする気だ。


視線を向けられた4人は珍しく同じ事を考えて顔を引きつらせた。事の成り行きを見守るなんてとんでもない。

ぴたりと彼女に張り付いた彼こそ危険人物じゃないか?


けれど彼等の心配など気にも留めず、何故かさらに気を良くした金眼の彼は視線を彼女に戻した。そして彼女の唇に自分のそれを重ねる。


「ちょ…」


まさかの手段にロイが一歩前に出るが、青の小さな少年が立ち憚(はばか)った。


『しー!邪魔したらダメですよ、あれでも腕は確かなんですから。』


口元に人差し指を立てて注意する。


『キャラキャラ、腕だけはね、あれでも主だしね!』


…赤の少女はどこまでも楽観的だ。


対して金眼の彼のこめかみに薄っすらと青筋が立ったのだが、誰も気付いていないだろう。


『…大丈夫、主に任せておけばいいよ。ほら。』


紫の少女は4人の彼等を導くように視線を前に向けた。


「?!」


するとどうだろう。小さな3色の妖精から金眼の彼に視線を戻した4人は、また別の意味で驚いた。


クロードはやはり妖精族だなと舌を巻く。現存している種族ではあり得ない力を目の当たりにし、改めて自身よりも超越した存在だと認識させられた。


その力とは、超回復。


金眼の彼の背から半透明の両翼が突き出し、大怪我を負った彼女を包み込んでいた。翼は鳥類でも昆虫の類にも似ておらず、例えるなら大木の葉を模ったものとでも言おうか。

葉脈らしきものから放たれる光を受けて、彼女の傷がみるみる内に癒えていく。


…キスの意味は定かでは無いが、きっと傷を癒すために必要なものだろう。

と、ロドフは思い込む事に決めた。


『さてと、それでは次はそちらの彼の番ですね。』


暫く主人の様子を見守っていた小さな妖精達は浮いたままくるりと身体を反転させた。ふよふよと近付いた先はフェンだ。


「僕?」


フェンは気絶から意識を取り戻していた。それでもまだ立てない様で、その場で体操座りをしている。

妖精達を伺う瞳は戸惑いと若干の眠気が混じっていた。


『あらまあ。キャラキャラ、同じ匂いがするから気になっていたけど…

この子、金眼だわ。』


『ケタケタ…うん。予想外。』


『そうですね、今まで生きてこれたのが不思議なくらいです。』


妖精達は代わる代わるにフェンを覗き込み、揃って首を傾げた。




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