序章-3 唐突に現れた者-

突然現れた者は、容姿だけで周囲を凌駕していた。大雑把な口調さえ除けば美しい造形の彫刻そのもの。若草色の綺麗な髪色が、彼の金色の瞳をより神秘的に魅せる。

そう、金色の瞳。


存在不明な種族が今、目の前で頭をガシガシ掻いている。


『あーもう、カッコ悪りい俺!』


『出だしは順調だったんだけどね!』


すると今度は赤の光を纏った少女が現れた。手乗りサイズの彼女は、彼の右肩にポスンと腰掛けてキャラキャラと笑う。半透明の羽が伴って小刻みに震えた。


『だから言ったでしょう?どうせ直ぐにボロが出ますよって!』


左肩には青の光を纏った少年が現れ、彼の左耳朶を掴み上げて揺さぶった。


『このあんぽんたん!』


『うっせえ!』


かなり微妙な空気が漂う。剣呑な雰囲気は何処へやら。正体不明の何かは、まさかの妖精だった。しかも存在を危ぶんでいた種族が一気に3人もこの場にいる。レオは唖然と開きそうになった口元を無理やり引き締めた。


『やーい、あんぽんたん!』


しかしこのタイミングで紫の光を纏った少女が若草色の頭から跳び出した。ケタケタと笑いながら周囲を飛び回る。また1人増えた…。今度こそ意思に抗えず口を開いてしまう。


聡明で荘厳な種族として一線を引かれていた妖精。古い歴史書には実際に崇める対象であったと記載され、現在もそれに習い宗教化した団体がある。浸透されたそのイメージは頑なで、レオだって妖精は神域に近い存在だと…憧れに似た感情も抱いていた。

……つい先程までは。


『あーもう、どっから湧いて出やがった!

毎回毎回、お前らは羽虫か!』


『えー、ひーどーいー…キャラキャラ』


『ケタケタ……主、顔真っ赤。』


『だから、その口調を、慎みなさいと!』


きっと今のやり取りは空耳だろう。そうであってくれ。

レオが今までと今、抱いていた感情は彼等も例外では無く、諦めに近い眼差しを金眼の彼女彼等に向けている。


クロードは金眼をジッと見つめてその瞳の色を再々確認し、ロドフは未だ意識が戻らないフェンに寄り添う事で現実逃避と決めている。

ロイはその場で胡座をかいて座り、クロードと妖精を交互に見つめていた。瞳が輝いているので面白がっているのだろう。


ああロイは特例だったか、とレオは嘆息した。

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