2-2

「…俺はフェン。…よろしくね。」


ふわんと綻ばせた口元は、更に弧を描く。けれどそう一言告げた彼は突然、首を垂れて動かなくなった。


「もう〜!ちょっとフェーンー!

寝ないのお!」


今ので寝たの?!


フェン以外の4人の彼等とクレアは大して驚いた様子を見せない。もしかしなくても、「いつもの事」なのだろうか。

苦笑したレオから発せられた言葉はそれを十分に裏付けていた。


「申し訳ありません。

フェンはその、少々特殊でして。代わりに私が紹介致しましょう。」


レオは眉をハの字にし、顎に手を掛けて困ったように笑う。しかしそんな様でも、彼は十分絵になっていた。


「フェンディオ・リーベルタス・アルフレッド。

我々はフェン、と呼んでいます。

アルフレッド王家の第2王子で、彼はフェティート。

妖精とウォーロックの混血種です。」


「彼も希少種の内なんだけど、その中でも特異な体質でね。」


ロドフは憂いを帯びた表情でフェンを見る。


「彼の瞳の色を見ただろう?

金色、それは妖精にしか許されていない色なんだ。」


と言うことは。彼は限りなく妖精側に近いのだろう。でもそこに一体何の問題があるのだろうか?

訴えるような彼女の視線を受け止めて、ロドフはゆっくりと頷いた。


「妖精と僕達種族は一線引いた関係でね。

詳しくは君が回復してから追い追いになると思うけど…兎も角、彼があの調子なのは仕方がない事なんだよ。」


それに、とレオが続ける。


「ここ最近は特に酷いですね。

私達の方でも対策案を模索しているのですが、何分、今存在しているのかすら不明な妖精の事ですからね…。」


「…皆んなごめん。ありがとう。」


眠りこけてしまった筈のフェンが、再びマントから顔を出した。今にも瞼を閉じそうだが、それでも何度も瞬きする事で眠気に耐えている。


「……ほんとごめんね。」


喉から絞り出した微かな声と、途端にそれぞれ思案顔になった彼等。それだけでも十分、5人の絆を感じた。元々目が開かない時から気付いていたが、彼等の仲はとても良いと思う。あくまで5人引っ括めての話だが。


それをより強固にしているのは、フェンの存在なのかも知れない。彼には誰からも好かれる性が滲み出ていた。それに加えて思わず世話を焼きたくなるような、そんな温かい心が芽生えてくる。


彼女が感じた事は当たっていたらしく、クロードが彼に歩み寄った。


「…フェン。もういいだろう。

俺ならお前の状態を治す事ができる。」


「だめ。生命力を削る気でしょ。」


話の流れを汲むと、どうやらクロードが唯一の打開策を持っているらしい。けれどそれは、代償を支払う何か。構わず更に歩みを進めたクロードに対してレオは眉を潜めた。

それでもあからさまなリアクションが無いという事は、彼にしか出来ない「何か」を暗黙の了解としたのだろう。それほど切羽詰まった状況なのだろうか。


クロードはフェンの頭に右手をかざすと、両目を閉じた。





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