第7話 少年は少女と共に仕事をする
ヒロの発言にヒカリは驚いたかのような表情を浮かべる。当然と言えばそうなのだがヒロがそんなことを言うとは思っていなかったのだろう。
だがヒロはヒカリの反応を無視して質問を投げかける。
「お前、アイツらを分断すること出来るか?可能なら五体ずつに」
「う、うん。その程度なら余裕だけど……」
それに問い対してヒカリは戸惑いつつも正直に答える。
ヒロはヒカリのは返事を聞くとすぐに次の質問をする。
「ならば良し。じゃあ五体のブラックベアを足止めすることは出来るか?別に倒せと言っているわけでは無いんだ。ただ足止め出来ればいい。出来るか?」
質問しといてなんだがヒロは流石に無理だと思っていた。ヒカリは自身の
「う、うん。五体程度でいいなら出来るよ。というか多分倒せるけど」
「……マジでか?」
戸惑いながらもそう言い切ったヒカリの発言にヒロは驚きを隠せなかった。
(五体程度って、流石にいくらなんでも……それに、倒せるって……)
そう思いヒカリの顔を見て、そして考えを改める。
いきなりの展開で頭が追いついていないのだろう。その表情には戸惑いが見え隠れしていた。だがその顔には一切の過信、偽りはなかった。
恐らくヒカリの言っていることはただの事実なのだろう。少なくともヒカリ自身にとっては。
(疑う必要は無さそうだな……)
そう判断したヒロは作戦(作戦と呼べるような立派なものではないが)を説明する。
「よし。ならヒカリは
「分かった……けど、ヒロはどうするの?」
ヒカリの純粋な疑問に思わずヒロは苦笑いをこぼす。
(話の流れからして分からないはずもないだろうに)
ヒロは苦笑いのまま真っ直ぐにヒカリの目を見ながら質問に答える。
「お前に全て任せて逃げる」
「まさかの最低発言ッ!?」
ヒカリは物陰に隠れていることも忘れ、それなりに大きな声で思わずツッコミを入れる。
ヒロはその反応がおかしかったのか笑いながら訂正を入れる。
「ハハッ、冗談だよ。いい反応ありがとう。だけど今は隠れている最中だから静かにな」
「あ、ごめん。……て、なんで私が!ヒロが冗談言うのがいけないじゃん!」
「確かに」
「で、結局ヒロはどうするの?」
ヒカリの二度目の質問にヒロは今度こそ冗談抜きに、正直に答える。
「お前に任せっきり……ってわけにはいかないからな、俺はもう半分の奴らを片付けるよ」
「ッ!?」
ヒカリは思わず息を呑む。
聞く前から何となくわかっていただろうがすぐに考えるのをやめたのだろう。それは流石にない、と。
ヒカリはありえないとでも言いたげな表情で問い掛ける。
「……本気で言ってるの?」
「あぁ、本気だとも」
ヒカリの質問に対してヒロは即答で答え、ヒカリを安心させるためにただの事実を言う。
「心配するな。こちとら今まで一人で冒険者稼業をしてきたんだぞ。この程度危険、今まで何度もあった。そして今まで勝って、生き残ってきた。だから、今回も大丈夫だ」
「……」
ヒカリは何も言えず固まってしまう。
その言葉には不思議な重みがあった。ただ一生かかっても追いつけないような才能や誰にも負けない程の実力を持っているだけの人間には宿らせることの出来ない、命懸けで戦いそして生き残ってきた者にしか言葉に宿らせることの出来ないような、とてつもない重みが。
ヒカリは体の硬直が解けると呆れたとでも言いたげに言う。
「……分かった。けど、死なないでよ」
「それはこっちのセリフだ……さーて、」
ヒロは物陰から標的を見つめながら言う。
「
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