第4話 少年は会話を楽しむ-上-
今度はヒカリの方からヒロに対して質問してくる。
「ヒロの方こそ、どういう戦闘スタイルなの?」
先程ヒロがヒカリした質問をそっくり返して来た。だが、ヒカリがこの質問をしてきたのは、自分だけが聞かれるのは気に入らなかったり、パーティを組む上で聞いておかないといけないということもあるだろうが、恐らくは純粋に興味を持ち楽しんでいるのだろう。
(コイツさっきからずっと楽しそうに笑ってやがんな……)
そう。その証拠に、先程からヒカリ笑顔を絶やさずずっと楽しそうにしている。見た感じ無理に笑っている様には見えない。それが不思議でしょうがなかった。
(俺と話をして何がそんなに楽しいんだ………?)
今までヒロと楽しそうに話す人間なんていなかった。誰一人も……
(いや、二人ほどいたっけ……)
過去には確かにいた。
だが。
(所詮過去は過去だ。アイツらと会うことはもう二度とないだろうから、今はもう関係ない……)
「ちょっと無視しないでよ!?」
ヒロが物思いにふけっていると、ヒカリが少し不機嫌そうに問い掛けてくる。どうやら無視されたと感じたらしい。
「ん?あぁ、悪い悪い。ちょっと考え事してた」
「もう。ビックリするじゃない。いきなりだんまり決め込むから………って、何笑ってるの?」
「ん?」
ヒロはなんの事か分からず立ち止まり、そしてちょうどヒロを隣にあった建物(食事処夢見せ、と書かれた看板がかけてあった)の窓を見る。そこには確かに笑顔のヒロが映っていた。
ヒロは驚く。なぜ笑っているのか自分でも分からなかったからだ。
「……あぁ、そうか……」
だが、すぐに分かった。なぜ自分は笑顔だったのか。
なぜなら、それは、とてもシンプルな答えだったからだ。
「そうかって、何が?」
「いや、なんで俺は笑ってたか分かっただけだ。気にするな」
「えぇー、無理。ねぇ、なんでヒロは笑っていたの?」
「………ま、いっか」
そう問われヒロは目をそらすもののすぐに観念する。言わないとヒカリは納得しないだろうし、言って何か損をする訳でも無い。
ヒロは少し意識的に息を吐き笑顔の理由を告げる。
「純粋におかしかったんだろうな」
「何が?」
「何気ないことが。誰かと会話したり、ずっと笑顔だったお前が不機嫌そうな顔になったことが」
「……え、それだけ………?」
「あぁ」
紛れもない本心だった。
厳密にはヒロは笑顔だったのは新鮮に感じたのろう。今まで一人で過ごしてきたから。誰とも関わろうとしなかったから。
「ハハッ……アハハハハハー!」
ヒロが笑顔の理由を告げるとヒカリは堪えきれないと言わんばかりに笑いだした。
「……何か、変なことを言ったか?」
「いや、だって散々もったいぶった答えが当たり前すぎて、一周まわって変だよ」
「うるせぇ、それで言ったらクガヤマの方こそ変だよ。ずっと笑顔でさ」
「そりゃそうだよ。だって……」
ヒカリがヒロの瞳を覗き込みながら言う。
「ヒロと一緒にいると、とっても楽しいんだもん」
「………やっぱり、俺みたいな奴と話していて楽しく感じているお前の方が変だよ」
ヒロはヒカリの言葉に対してそう言うのが精一杯だった。言葉が見つからなかった。今までヒロのことを『楽しい奴』と言ってくれたのは、
(俺を親友と呼んでくれたアイツらだけだったな……)
ヒロは昔を懐かしむがすぐに首を横に振る。過去を思い出しても虚しくなるだけだ。
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