第3話 少年は少女に問う

 ◇◇◇


 宿を出発し街の大通りを歩いている最中。


「はぁー………」


 先日のことを思い出しヒロの口から思わずため息がこぼれる。それも特大のため息が。


「ちょっと。これから冒険に行こうとしている時にため息をこぼさないでよー。テンション下がっちゃうじゃん」


 ヒカリが心底呆れた、と言った顔で言って来る。

 だが、ヒロはやられっぱなしでは気が済まないタチでついつい言い返す。


「うるせぇ誰のせいでため息ついていると思ってんだよ。ため息でお前のテンション下げられるならもっとため息ついてやる」

「そしたら私は昨日と同じ様に大きな声妄想を口に出すけど、それでいいの?」

「スイマセン。これからは気をつけるからそれだけはマジやめて!?ってか昨日あんな目にあったんだから懲りろよ!?」


 そう、あの後は更に大変だったのだ。


 あの後、ヒロとヒカリは衛兵の人に注意され、周り人達から(主にヒロに対して)も『そういうことは絶対するなよ』と釘を刺されるは、挙句の果てにはヒカリが勝手に仕事を取ってくるはでヒロのライフは残りゼロまで追い込まれたのだった。


(……まぁ、考えても仕方ない、か……)


 終わったことは気にしても仕方ない。ひとまずはそう思考を切り替える。それよりも今は聞かなければならない事がある。


「そう言えばクガヤマって戦闘スタイルってどんなんなんだ?」


 このことはパーティとしてやっていくために聞いておかないといけない。


「私?私は接近戦でも遠距離も出来る、所謂オールラウンダーって奴かな」


 それはヒカリも理解しているのだろう。特に嫌そうな反応もせず答えてくれた。


「意外だな……」

「そう?」

「だってお前かなり軽装というか、細剣しか装備してないじゃねーか。近接しそうには見えない」


 ヒロはヒカリの装備を見ながらそう言った。


 ヒカリは白のシャツとスカートという昨日とほぼ同じ服装で一切の防具を装備しておらず、唯一装備しているのは申し訳程度の細剣という、なんというか接近戦するには危険だとヒロは思っていた。


 ヒカリはそれに苦笑いしながら答える。


「私の場合は生まれながらに所有していた異能力が汎用性が高く、尚且つ強力過ぎてね。半端な装備は逆に邪魔なんだよ」

「……へぇ、それは羨ましいことで」


 なんというか嫌な気分になった。凡人のヒロにとって才能のある人間の『才能あり過ぎて困るわー』的な悩みは嫌味にしか感じない。


 ヒカリもヒロが不機嫌になったのをなんとなく感じ取ったのだろう。すぐに訂正を入れる。


「事実を言っただけで別に自慢したわけじゃないから拗ねないでよ。というか、ヒロも大して変わらないじゃん。そんなんで大丈夫?」

「……確かに、それもそうだな」


 ヒロは自分の格好を見て納得した。確かに黒のシャツとズボンの上に灰色の革コート着ているだけの奴に言われたって説得力はないだろう。ヒロもヒカリの装備とは大差ないのだから。

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