Episode_1

西暦3001年、7月7日、午後23時59分。

星野 鈴ほしの すず、18歳。地球にて。

???へ転送。消息を断つ。


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高校3年生になり部活を引退した鈴は、いまいち受験勉強に集中出来なかった。

高校2年生の頃から少しずつ勉強はしていたのだが、やはり部活を引退した事で上の空になりやすく授業も気づいたらぼうっとしてる事が多い。

このままでは志望する大学に程遠い事は自覚しているのだが、小学生の頃から全国を目指してやってきた陸上を辞めたので上の空になるのは仕方ないとも思っていた。

そんな鈴の様子を見かねた同じクラスの小学生の頃から親友である木村 奏きむら かなたと、同じく親友の橋本 渚はしもと なぎさが七夕の深夜の天体観測に誘った。

鈴は、2人に心配されている事を申し訳ないと思うと同時に感謝の気持ちを持って、喜んで承諾した。




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七夕当日、午後20時。

私たちは学校が終わった後、それぞれの自宅に帰り入浴を済ませ、夕食を取ってから秘密基地に再び集合した。

この秘密基地は小学1年生の頃、初めて私たちが出会った場所でもある。

私は渚、奏、別の子たちと共に隠れんぼをして遊んでいた。

その当時はまだ2人と話したことすらなく、名前も知らなかった。

どこか良い隠れ家が無いかと探していた時、ちょうど渚が隠れていた場所に私と奏が同時に入ってきて驚いて運命のような偶然に笑いあったのを覚えている。

結局、3人で話している内に隠れんぼは終わっており見つかってない事に気づかれないままその日は解散しそれぞれの帰路に着いた。

帰宅してからようやく思い出したくらいなので、次の日学校で会った時も話題は尽きなかった。

その日から私たちは同じ隠れ家を共有する親友となり、中学、高校も同じ所に進学する。

また、小学校を卒業するまで殆ど毎日隠れ家に通い、他愛のない話をするのか日課になっていた。

ある時奏から提案を受け、親の了承を得て初めて天体観測をする。

街の明かりが消え、満点の星空だけが広がっている光景は3人の心を魅了した。

その時に見た一等星はとても綺麗で夜の太陽のようで美しいと思ったのが1番心に残っている。

その時から3人の内の誰かが何か心が暗くなるような事があった時に集合して天体観測をする約束のような慣習ができた。



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持ち寄ったお菓子や飲料水をつまみにしながら、私達はいつもの様に他愛のない話をしていた。

学校では毎日昼食を共にしているが、深夜とうのもあっていつにもなく気分は上がっている。

そして、話はあの都市伝説のような新たな常識の話になる。

私たちがその学会での事を聞いたのは小学2年生の頃だった。

当時は衝撃を受けたが、同時に好奇心や探究心が生まれて私たちで解明しようと息巻いてたのも事実だ。

結局、小学3年生になる頃には技術や様々な仮説が飛び交い、新たな事実まで判明したことで常識となってしまったのである。

未知なる発見をただの小学3年生に出来るはずもなくいつしか話題にもならなくなった。




午後22時。

会話は少なくなり自然と静かになる。

満点の星空が広がる。時折流れ星が流れる。

流れ星を見ると、願い事ではなく誰かが死んだという認識になり不吉なイメージが世の中に蔓延していた。




午後23時50分。

左隣から安らかな寝息が聞こえてくる。

奏、私、渚の順で横になって見ていたので、聞こえてきたのは奏からだった。

いつもは早く22時30分くらいで寝始めるのに今日はよく起きていた方だと思う。

渚と2人で奏が眠ってしまったことに小さく笑いあっていたが、その5分後に渚も珍しく眠ってしまった。

最近の2人は、志望する大学進学を目標としており毎日勉強に励んでいるはずで本来はこの時間も家に籠って勉強をしていたいはずである。

それでも、2人は私の為に貴重な時間を使って天体観測に来てくれたのだから2人の優しさに改めて心から感謝していた。

授業中では常に戦っている睡魔がなかなかやってこないので、仕方なく星を眺めていると不意に輝く一等星を見つけた。

久しぶりに見た気がする。

あれ、最後に見たのっていつだっけ。

1番輝いてる一等星のはずなのに何で気が付かなかったんだろう。

そう思いながら、私はじっと一等星を見つめる。

通説通りなら、私がこの一等星見れるのは今年まで。

何だか少し寂しい。

もし見れなくなったら、心の一部が無くなってしまったかのような気持ちになるのだろうか。

見つめていると段々光が強くなっていくのを感じていた。

不思議に思っていると、一瞬。

星が瞬いたような気がした。

そして、その直後私は唐突に訪れた深い睡魔により意識を失った。

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