夜空に呑まれた一等星
菓詩 ゆきな
Epilogue
西暦3000年12月30日。
この頃には夜空に輝く星の殆どが天体ではなく光源であるということが世界の常識だった。
そうなったのは、ちょうど1年前のこの日に起きた世界規模の学会で超常現象が発端である。
未だにその場で起きたことに否定的な意見はあるがその場にいた者たちは真実だと言う。
―時は少し遡る。
西暦2999年、12月30日。
あと2日で西暦が3000年になり、新たな時代の幕開けを予感した日本や全世界が浮き足立っていた。
世間が騒いでる中、この日世界の著名な研究者たちが集まる学会でもある研究者によって騒然としていた。
彼は無名の研究者であり、最後の発表者だった。
学会に参加した研究者の殆どは、彼の話を聞かず居眠りをしていたが、突然今まで話していた内容が書いてある原稿を机に叩く。
その音に起きた研究者たちは彼の様子の変化に驚き、静まり返る。
そして、彼の口から告げられた事実に更に驚愕することになる。
―我々が見ていた星の殆どは、天体ではなく光源だ、と。
その言葉を聞いた天文学者を含め、その場にいる全員が嘲笑し、愚かだと彼を非難した。
だが、続く言葉に笑っていた彼らは耳を疑った。
―不思議な仮死体験をした者たちが居る。
彼らは死ぬ間際、己に迫る光があるのを確認した。
近づく事に大きくなり、まるで流れ星が自分に向かって衝突すると恐怖を感じた彼らは必死に逃げた。
しかし、瞬く間に追いつかれ衝突したが彼らが感じたのは痛みではなく不思議な感覚だった。
小さい頃の走馬灯のようなものだったという。幼い頃の夢を見ていたようだ。
自分が光に包まれている、そう感じた瞬間浮遊感を感じた彼らはふと視界を下に向けると地球から己が遠い場所へ離れていることに気づいた。
そして、恐れのあまりこう願ったそうだ。
「まだ生きていたい!夢を叶えていない!やるべき事がある!元の場所に返してくれ!」と。
すると、意識が落ちた彼らは目が覚めると病室のベッドに横たわっており彼らは奇跡の生還を果たした、という訳だ。
彼らはみな口々にこう言う。
あの流れ星はもしかしたら幼い頃の夢なのではないか、と。
夜空に浮かぶ星々の殆どはこの世界にいる大人たちが失った夢なのではないか、と。
さすがに私も耳を疑った。
しかし、ある子供が不思議なことを言う。
自分の中には星がいて、夜空に浮かぶ一等星が僕の星だ、と。
その子供は余命宣告を受け、死ぬのを待っていた。
とうとうその子が死ぬ時が来た。
すると、息絶えた瞬間。心臓のある場所から光が生まれ、小さな流れ星となって夜空に向かっていったらしい。
それを見ていたのは母親のみで誰もその言葉を信じなかった。
だが、私はあるひとつの仮説に行き着く。
それが先程言った、星は天体ではなく光であり、我々が幼い頃失った夢だということだ。
個人差はあるが、我々が大人になった時に心の星は1度空に帰り、死ぬ時に流れ星となって迎えに来る。
これが星々の真実だ、と。
しんと静まり返っていた学会だったが、彼が話終えると口々に出鱈目だ、有り得ないと信じる者は誰もいなかった。
彼はその様子に不快感を示していたが、やがて彼は最後に言い放った。
―1年後の今日。我々が見ている夜空の星々は一斉に超新星爆発を起こし星は消える。また、地球は爆発による影響を受け消える、と。
言い終えると彼は、体を発光させその場から消えた。
その場にいた人々は目の前の起きた事にみな驚き、一連の全ては超常現象という形で終わった。
しかし、その言葉に興味を持った天文学者たちは彼が残した原稿や研究所のデータを元に研究に取り掛かり、彼の言葉が本当だということを証明する。
結果を元に世界の存亡に関わると判断した学会は発表に踏み切った。
そうして、新たな予言として日本だけでなく世界をも巻き込んで人類滅亡説や火星移住計画など様々な混乱を起こすことになる。
西暦3000年1月1日。
日本にて鐘の音を迎えると共に新たな常識であり大予言が誕生した。
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