第135話 レジィの部隊
今回レジィの
オルグとは獣人よりもさらに獣に近い種族で、より原始的な生活をしている。
体力は獣人どころか獣並みで、知恵は獣などよりも余程回り――さらに厄介なのは、並みの人間以上に狡猾な変異体が時折現れるところだ。
レジィの
しかも、今回の群れのリーダーはオルグとしては天才的に知恵が回り、他の知能の高いオルグとの闘争に勝っても殺さずに、配下として使役しているのだ。
そのせいで、レジィたちが討伐に向かったときには、本来は百体を超えることなど滅多にないオルグの群れが、四百を軽く上回る大集団を形成しており、その五パーセントに当たる二十体近くが変異体という凶悪な集団と化していたのだ。
「……てまあ、大体こんなところが、俺が斥候して解った情報だぜ」
レジィは潜伏能力と魔力感知を駆使して、廃坑中を調べて回り、オルグの戦力を丸裸にしていた。
かつてのレジィであれば、ここまでする前に攻撃を始めているところだが――戦闘時は部隊から十メートル以上離れないというカルマとの約束もあって、まだ一切手を出していない。
「いやあ、さすがはレジィさんだね。そこまで調べる間に、オルグを戦闘距離まで近づけさせなかったんだろう?」
フェンがいつもの気楽な口調で言う。
「おい、フェン。てめえの感想を聞いてんじゃねえんだよ。どうやって、オルグを掃討するかって話だ」
「おうよ、勿論解ってるさ……そうだな。廃坑の中でのオルグの配置ってのは、どんな感じなんだい?」
「てめえ、ちったあ反省しろ……配置の話だけどよ、三分の二が廃坑の西部で普通に生活している。まあ、こっちは半分が非戦闘要員ってとこだが、その中にリーダーがいる。残りの三分の一は、東側で五つのグループに分かれて互いに争っている……これだけの数の群れとなれば、一枚岩じゃねえってとこだな」
「だったら……先に東側にいるグループを各個撃破して戦力を削るべきだな? できれば……退路を確保する意味で、廃坑の入り口近くまで誘い出した方が良いな」
レオンが真剣な顔で考えながら話をする。最近のレオンは自分で魔法を使うことよりも、部隊(チーム)としてどう動くかということに重点を置いていた。
「そうですね……レオンの作戦は悪くないと思いますよ。東側の個体は、常に戦闘をしている状況なら戦い慣れもしているでしょうから、慎重に掛かった方が良いですね」
ソフィアも堅苦しい口調は相変わらずだが、すっかり他のメンバーと打ち解けており、自分から積極的に意見を言っている。攻撃的な発想のレオンに対して、慎重派のソフィアがブレーキをかけている感じだ。
「まあ、そんなところだろうな……セナは何か意見があるか?」
「わ、わたしは……さ、作戦自体は問題ないと思うけど……オ、オルグも馬鹿じゃないなら……と、
セナは今でもおどおどしているが――自分の役割という者を理解した上で、言うべきことはしっかりと口にするようになった。その態度のせいで一見すると怯えているだけに見えるが、常に周囲の気配に神経を研ぎ澄ませており、何か起きればレジィと大差ないタイミングで反応している。
「そうだな、
「……う、うん……も、問題ない……」
「レジィさん自身の意見はどうなんだよ?」
フェンは解っていながら、一応訊いておくべきかという感じで口を挟む。フェンは単なるムードメーカーだと思っていたが……意外なほど周りを良く見ている。
「俺の意見か? これだけ話が決まったなら、別に言うことはねえな」
四人はそれぞれ冒険者として成長していたが――一番成長したのはレジィだろう。
以前のようになんでも自分で解決するのではなく、メンバーの長所を生かしながら、足りなり部分を自分がフォローするようになったのだ。メンバー一人一人のことも、良く把握していた。
「それじゃあ、作戦を開始しようぜ。てめえら……下手を打ったら、後で俺がオルグなんか可愛く思えるくらいの仕置きをしてやるからな」
メンバーの気を引き締めることも、レジィは忘れなかった。
※ ※ ※ ※
そんな感じで――レジィたちは実に上手く動いて、短期間で東側にいるオルグの掃討に成功した。
オルグのリーダーは途中で彼らの動きに気づいて、増援部隊を送ってきたが――そのくらいはレジィたちも当然予測しており、手薄になった西側を攻撃して、さらなる増援を送りづらい状況を創り出した。
「さてと……いよいよ本命だな。まだオルグは二百五十以上は残っちゃいるが、半分は非戦闘要員だ。まあ、非戦闘要員と言ったってほとんど獣だから、てめえらが油断したら殺されかねないけどな。まあ……さすがに、その心配はねえか?」
いったん廃坑の外に出て、五人は作戦会議をしていた。
焚火を囲みながら話をする状況は――かつてカルマに欠点を指摘されたときに良く似ている。
しかし、今の彼らは互いに膝を突き合わせて、どうやれば上手くやれるのか真剣に話し合っている。
個人個人で勝手に戦っていた過去の姿など最早なく――彼らは
「なるほどのう……レジィも少しは成長したようだな」
不意に響いた声に、五人は即座に動くが――咄嗟に武器を手にして陣形を取る四人に対して、レジィだけは違う反応をした。
「……アクシア姐さんじゃねえか!」
闇の中から現われたアクシアの姿に――レジィは驚き半分、喜び半分という感じで、思わず叫んだ。
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