十歳

そうするうちに10歳の誕生日が来た。


幼い私は誕生日だからと

少しばかり自分に都合の良い

空想をしながら山を探索していた。


いつもより登山道からかなり離れて

戻れるのか心配になり出した頃に

きれいな小川を見つけた。


なんだか空気まで澄んでいるようで

不思議にやり遂げたような心地がした。


その小川に出た場所が後からわかるように

周りの木にたくさんの目印をつけてまわって

まずは上流に向かうことにした。


川沿いを歩き続け土手の上に登って

迂回もしながら登り続けると

大きな滝にたどり着いた。


この滝には見覚えがあった。

山頂にある神社の裏の滝だ。


滝の上に神社があることを知っているせいか

神聖な場所に立ち入った気がして

自然と背筋が伸びた。


それでなくても1年で最も寒い時期なので

滝壺のそばにいるだけで

空気が突き刺すようだ。


ぐるりと反時計回りに歩きながら

滝のふもとに向かう。


初めて来たのに何となく

確信を持って歩いていた。

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