第2話 おおやの前で正座する。

 おれは憂鬱だ。生きるの辛くなる。とおおやに言った。おおやは笑って、今年は今回もいれて、まだ17回目じゃないか。去年は100回を超えていたぞと言って。ちょっと真顔になった。おれは思った。回数の問題じゃない。今が問題なんだと。しかし、それはおおやには言わなかった。

 おおやは愛用の縁の欠けた茶碗から欠けた部分を確認してから、そっと茶を啜った。

 「それでそどうしたんだ。17回目の首は、何をやらかした」おおやは茶碗を縁のすり切れた畳の上においておれの方を見ずに聞いた。おれは、いつも通りおおやの方を向いて正座をして首をうなだれて、この話がうまくできるかなと思った。

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