第53話 再び迷宮へ
目が覚めると地面に寝かされていた。
上体を起こし周囲を見回すと
「気が付いたか」
目を覚ました僕に気が付いた師匠が近寄り手を差し出してきたので、礼と謝罪を述べその手を掴み起き上がり何があったのかを確認する。
「初搭乗の時によくあるケースなんだが、高揚感から自分の
ただ初回搭乗時であれだけ動かせたのは才能ある証左だなと褒められた事が素直にうれしかった。この師匠は命のやり取りに関わる技術に関してはダメ出しが多くてあんまり褒めないんだよね。
ただそのあと
さて僕が搭乗していた騎体はというと
けっこう大掛かりな修理を要するとの事だ。戦場であれば上官から
ただ壊したことについては初心者のうちはよくある事なので特に咎めるような事ではないとの事で気にしなくていいと言ってもらえた。
正直ホっとしてしまった。
他の面々は何をしているかというと
その後はトラブルもなく休憩しつつ交代で
帰り支度も終えていざ帰宅というときに師匠から一言あった。
「明日は
そう言うと、とっとと帰れと追い出された。
▲△▲△▲△▲△▲△▲
一夜明けて…………。
僕はと言えば半分寝ている状態で女性陣に連行されてどこかへ向かっている。10分くらい歩いただろうか。
もっともこの迷宮都市ザルツが、数千年前の古代魔法帝国の帝都としての機能を残しつつ現在は中原の大国ウィンダリア王国のある種の新技術の実験都市の側面があるからだそうだ。
「いつ見てもコンクリートジャングルすぎて違和感が拭えないなー」
「確かにちょっと異国感が薄いよねー」
僕の呟きに前で手を引いていた
「こんばんは。それともおはようございます。かな? みなさんはこれから
唐突に後ろから声を掛けられた。この鈴を鳴らしたような可憐な声音は…………。
「あっ、マリアちゃんだ」
背後からのその声にいち早く反応したのは
「うん。でもその前にお風呂にでも入ろうかなってね。
「私はお風呂に入った後で各神殿合同の炊き出しの手伝いです」
これはもしかして食費を削れるかも?
僕の考えを読んだかのような解答が返ってきた。
「何方でも歓迎ですけど、
マリアベルデさんはそう言って笑う。
「それは…………なかなか苦行ですね」
奉仕活動と説法のオマケとなると結構厳しいかな。
あ、そうだ。聞きたい事があったんだ。
「そうだ。先日の館で縛られていた女性ってどうなったんですか?」
「もちろん無事に親元に帰しましたよ」
「素性とか聞いても大丈夫ですか?」
依頼の守秘義務とかに抵触しないといいなとか思っていたら、
「ごめんなさい。一応守秘義務で喋れないの」
そう謝られてしまった。
なら別の疑問点を聴いてみよう。
「身体に証のある聖女ってなんですか?」
「…………宗教的な意味でなければ私にはちょっと判らないかなぁ」
沈黙の後に返ってきた答えがそれだった、少なくとも嘘を言っている感じはない。
「その聖女って館で縛られていた子の事なの?」
「女
「それでスカートが捲れていたのね…………」
それっきり考え込んでしまった。
「そんな話はもういいからお風呂はいろっ」
話に入れなかった
「樹くん。それじゃあ、また後でね」
取り残されてしまった…………。
▲△▲△▲△▲△▲△▲
どうせ
「お待たせぇ。待った?」
ぎりぎりになって
「待ってないよ」
ポーカーフェイスで返事をしたけど、マリアベルデさんには見破られたようでクスクスと笑われてしまった。
「ほら、もう時間ギリギリだからいくよ」
そういうと
「マリアちゃん。またねぇ」
杞憂だった。
「この世界じゃ細かく時間を気にする奴なんてまだ極々少数派だぞ。いいから、とにかく呼吸を落ち着けろ」
ダッシュで
せっかく異世界に拉致られたので自由に生きてみたいと思います。 辛味噌 @karamiso_yk
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