第49話 ようこそいらっしゃい
「やめてください!」
僕らの平安を破ったのは
「なんだよ。第3
少女を取り囲む冒険者の数は4人で年齢は僕らよりちょっと上だろうか?装備は結構くたびれているところを見ると優秀とは思えないな。あまり強そうな気もしないし助けておくかな。
「お、その
「名前は————」
そういって少女の首から下げている
「セシリアか————」
「い、いやっ!」
反射的なのか
「なんだよ。つれないなー」
「俺たちは親切で声をかけてやってるんだぜ」
「そうそう」
「人の親切にそういう態度はよくないんじゃね~の?」
ギャハハハと4人が馬鹿笑いをする。
「す、すみません」
セシリアは今にも泣き出してしまいそうだった。恐怖に身を縮こまらせ、華奢な肩が震えている。
「悪いと思ってるならさ~俺ら————」
「セシリア。待たせてごめんね」
「もう。遅いよぉ」
「ごめん。ごめん」
そういって
「あ? なんだお前ぇ」
邪魔されたのが気に入らないのか苛立たしそうに眉を顰め、
「彼女とここで待ち合わせをしていたんですけど、何か失礼なことでも?」
「親切にも新人に――――」
「い、いや…………なんでもねよ」
「おら、帰るぞ」
仲間と逃げるように去っていった。
「あれ? 僕の出番は?」
ここは格好良く登場するところじゃ…………。
▲△▲△▲△▲△▲△▲
「改めてお礼を言わせてください。本当にありがとうございました」
そう言ってセシリアが深く頭を下げる。
「気にしないで。最近あの手の輩が多くて困るのよねぇ」
いま僕らは
食事をしながらセシリアの話を聞くと、この
ついさっき
女性冒険者は数が少ないし、更に
恩を売る訳ではないが、ここは
食事が終わり一息ついた所で切り出すことにした。
「もし良かったらだけど、僕らと
僕と
「僕らも含めて4人…………5人なんだけど、そろそろ師匠から独立したいんだよね。いま募集しているんだ。どうかな?」
セシリアさんは僕と
「お邪魔ではなければ宜しくお願いします」
そう言ってセシリアさんはペコリと頭を下げた。
「こちらこそ宜しくね」
一息ついたところでセシリアさんがこんな爆弾を放り投げた。
「そういえばおふたりは恋人同士なのですか?」
セシリアさんの爆弾発言に思わず
「「ち、違うから!」」
ハモってしまった…………。
そうだよと答えたいが、恋人の定義とは何かと問われると今の僕らは友達以上恋人未満? いや、互いの思いは知っているのだ。これは恋人でも良いのではないのだろうか?
なんか微妙な空気が漂っているので話題を変えなければ!
「話は変わるけど、セシリアさんは奇跡はどの程度まで使えます?」
セシリアさんは長くボリュームのある金髪をかきあげると、その特徴的な耳が目に映る。
「つい
そう答えたあと僕の視線に気が付いたのか耳を隠し、こちらを窺うようにこう言った。
「やっぱり半端モノの
「あ、ごめん。そうじゃないんだ。その…………なんていうか…………初めて見たものでつい…………」
「そういえばおふたりは西方の
うんうんとひとり頷いている。
「気分悪く悪くさせちゃったらゴメンね。私たちもちょっと常識とかに疎くて…………」
「話を戻すけど、奇跡以外は何が出来るんです?」
「教会の孤児院では
完全な後衛型になるのか…………。そうなると
あれこれと思案していたところを
「また話を聞いてない。
「ホントにごめん。
そうやらそれぞれの呼び方で話をしていたらしい。敬称を付けるのはやめようねって事だそうだ。あとはセシリアさん…………セシリアは孤児院時代はセシリーと呼ばれていたのでそう呼んで欲しいとの事だった。
その後の話で分かったのは、孤児院を逃げるように出る際に僅かな資金しか持ってこなかった事で装備はおろか今夜の宿すら決まっていない事だった。
「なら、うちにおいでよ。都合のいい事にベッドが一つ空いてるし」
「え!?」
いや、こんなエロい身体した美少女を馬小屋に泊らせるとか危険極まりないとはいえ、一応僕も男なんですが…………。
「いいんですか? なんだか申し訳ないです」
そうセシリーに頭を下げられてしまってはもうダメとも言えない。セシリーも孤児院で同年代の異性と同じ部屋で寝起きを共にしているので僕が居ても抵抗は感じないらしい。それって異性として見られていないってことですよね? 話の方は完全に
その後も
その後師匠宅へ
「ここが
そう感想を漏らすセシリーに「どうよ」と言わんばかりのドヤ顔の
でもこれ賃貸だからね。
「セシリーは、そこの二段ベッドの下を使って。んで悪いけど
部屋に到着して一息ついたところで
「うん」
そう短く返事をして
「寝具は後で洗濯に出すから、今日は申し訳ないけどこのまま寝ちゃって。あ、【
「
「これが【
セシリーがいたく感動していた。
「ところで、僕もここで寝るんだけど問題ないの?」
話で聞いてはいたけど念のためにセシリーに聞いてしまった。
「孤児院では性別や種族は関係なく雑魚寝でしたから特に気にしてはいないですね」
何でもない事の様にそう言った。
倫理観の違いだろうか? やっぱ異性として見られていないのだろう。だが見られたとしても困るか。そういう事にしておこう。
そんな事を思っていると
「なになに。
ニヤニヤしながらそんな事を耳元で囁いた。吐息がくすぐったい。
「!?」
反論しようと口を開きかけた時には踵を返していて、
「私も寝るねー。おやすみー」
さっさと梯子を上って上のベッドに上がっていってしまった。
「お二人は本当に仲がいいのですね」
クスクスと笑うセシリーも「おやすみなさい」と横になってしまった。
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