第38話 片鱗
ちょっと気になることがあり
そして僕はと言えば…………。
「作戦は悪くなかった。一番嫌な汚れ役を自分で行ったのも良かった————」
あれ? 褒められてる?
だがそれは前振りだった。武器は
暫くあれこれと話し込んでいると右側の通路に
「止まれっ」
そう師匠がそう制止の声を発すると同時に
多分
そして現れたのは————。
テレビ番組だったりネットだったらモザイクがかかっているであろう
師匠の事だから見せると言うことは何か意味があるのだろう。
吐き気を催すもののそれを堪えて集中して観察すると————。
「師匠…………まさか…………」
「そのまさかだ」
この遺体は僕らと同郷の者たちだ。もしかしたら…………。
「ここは奴隷の最終処理場でもあるからな。格安で
師匠の話は進む。
「年齢は17~18だろう。お前らの学校の生徒だとするなら、その年齢だと軍事教練で戦闘訓練を受けているはずだし、それなりに戦闘も出来る
そんな嫌味を言い始めた。続きがあり、
「先ほどの
段々イラつきが募ってきたのか最後は吐き捨てるよう言って締めくくった。
「みんな提案がある」
師匠の説明に黙り込む皆に対して僕はある提案を行った。
▲△▲△▲△▲△▲△▲
「まーしゃーないだろう。付き合ってやんよ」
「お金はまた稼げばいいしね」
「俺はお断りだ。俺の取り分は俺がどう使うか決める!」
僕の提案はこうだ。
今回の
ただこの提案にはいくつか問題を抱えている。
ひとつめは師匠が【
ふたつめは買い取った奴隷たちの【
みっつめは全員買い取るのは難しいので優先順位をどうするかである。
ひとつめはあっさり解決した。
「次の送還タイミングで一回にまとめてくれればタダでいいぞ」
師匠はそう言って請け負ってくれる事となった。何か裏があるのだろうか?
ふたつめに関しては師匠の話だと、一般的な、大半は借金で首が回らなかった奴などだが、
ただ世界を跨げない可能性もある。残酷だが誰か一人を
そうは言っても生贄に選ばれた人は堪ったもんじゃ無かろうとは思うが他に方法が思いつかない。
開放手続きをするにしても莫大な資産が飛ぶ。僕らの案は開放手続きに回す代金も
分かっているけど…………。
みっつめの問題は仕方なかろうと思う。金銭的に全員を救う事は出来ないわけで取捨選択は必要だろう。具体的には幼い子供から買い取る方向になる。最も同じ人間に優先順位をつけるのかと怒りそうな人はここにはいない。
一応方針は決まったので
原則左側通行と言うことで一旦奥へと向かい下水路を渡り元来た下水路を入り口に向かって歩いていく。
今回は
▲△▲△▲△▲△▲△▲
「よう。ご同輩」
下水路を出てやや広い通路に差し掛かったところで正面に立つ戦士風の
他にもいくつか
ここに来るまでの師匠の話の中に
まさか初日からそんな目に合うとはね…………。
残りをどう対処するかだ。
出来るなら人を殺すという行為にだけは手を染めたくない。
「何するの! 離して!」
どうするか決めかねていたらいつの間にか近づいてきた如何にも
いうんだよ」
そうリーダーらしいおっさん
彼らは武器を抜いていないがこちらの動きには注目している下手に動くことで刺激したくはない。そうこうしているうちに
暴れる
全身を舐め回すように眺め、
「…………ふむ。貧相な体つきだが美しい顔立ちだ。それに知性の宿った良い瞳だ。そこらの阿婆擦れ
おっさんがそう漏らした。
「お頭ー。せめて味見くらいしてからでも…………」
取り巻きの一人が下卑た笑みを浮かべるとそれに釣られたのか他の者も下卑た笑いを漏らす。
涙目で嫌がる
「こいつは大事な詫び賃代わりだ。溜まってるなら、分け前で
「まーそれでもいいか。いい声で鳴きそうだしな。ヒヒヒヒ」
その男は下卑た笑いを上げ僕らを舐め回すように眺める。
正直悪寒が走った。
限界だと思った。
ふと視線を動かすと
「なんか二人の世界ぃー? とか作っちゃってぇー自分たちの置かれている状態分かってんのかぁー? あぁん?」
取り巻きの若い男の一人が妙に凄んで近寄ってきて掴みかかろうと右腕を伸ばしてくる。
その右手首を左手で掴み斜め上方へと引きあげる。予期せぬ
くぐもった声をあげる若い男に対して素早く体勢を整え無防備に晒している喉元に強烈な
「な…………なんだ。今のは…………」
一瞬の出来事におっさん共は動揺が走る。
「
動揺した一瞬の隙をついて
さて、後は暴れるだけだ。
「うぉりゃぁぁぁぁぁっ」
雄たけびを上げて
最初の犠牲者は若い戦士風の男だった。
「
正面にいる
「おい、貴様ら!」
【
「なっ」
一瞬で僕が目の前に移動し突きが頬を掠めた事に焦ったようだ。
僕の行なった行為は別に魔術的な事でも超常現象でもない。
両手持ちにした
初撃は取り巻きを起こさせないためにワザと外したけど次からは本気モードだ!
慌てて腰の
抜こうと思った瞬間抑え込まれた事で焦ったのか思いっきり後方に飛び退いた。だが結果的にこの行為が命を救った。
左腕を戻す反動を利用した僕の右の横薙ぎが避けられただけでなく、眠り始めていた取り巻きの一人に
しかも転がったタイミングで間合いが外れ起き上がるタイミングに合わせて抜剣してしまったのである。
運が悪い。
「坊主。いい腕だな。うちで働かないか?」
しかも勧誘ときたもんだ。
「断る!」
今の問いは時間稼ぎだったのだろう。返答した瞬間に斬りかかってきた。
その上段から斬り落としを身体を横に捌いて躱しつつお返しとばかりに右片手袈裟斬りを見舞うも素早く体勢と立て直して鍔元で受けられてしまった。そのまま鍔迫り合いへと持ち込もうと思うものの押し込んでもビクともしない。膂力で完全に負けているようだ。
位置を入れ替えつつ鍔迫り合いを続けるものの事態が好転しないので仕切りなおすことにした。
師匠直伝の足払いをいれると意表を突いたのか慌てて後ろに飛び退って距離を開ける。
「若いのに随分と足癖の悪い坊主だ」
「
「えっ。なんで?」
不意をうった筈の男は自身がどうしてそうなったか理解できず間抜けな声を上げ倒れた。
よくわからないが今の僕には取り巻きの位置関係や動きが見ていなくても手に取るようにわかる。先ほどの一撃も狙ったというより勝手に突っ込んできたと表現した方がしっくりくる。まるで数秒先が分かるかのようだ。
一人では埒が明かないと3人まとめて斬りかかってきた。
同時攻撃と言えばすごい事だが、実際には挙動がバラバラで連帯も取れていない。突き攻撃をしてきた取り巻きの左腕の
流石に骨が折れることはなかったようだが、武器を落とし手首を押さえてもがいているところを前蹴りで蹴倒しオマケとばかりに
あとは…………。
ひとり寝た振りをして隙を伺っている男がいる。
不思議なことに、いま僕は自分自身を俯瞰したような状態で周囲全体を認識できている。
そしてもう一つ…………。
「参ったね。ガキ三人に四
お、降参してくれる?
だがその期待は裏切られた。
「こりゃーホンキ出すしかねーなっ!」
そう叫んだと思ったら目の前で
このおっさんも【疾脚】使うのか!
「ちっ。【残身】まで使えるのかよ。その若さですげーな」
【残身】は
攻撃が命中する刹那を見切り
「なら、これならどうだ!」
だがここで致命的なミスを犯してしまった。
その隙を逃すほどこの
慌てて予備の
「
「大丈夫!」
後ろにいる
奥の手を使う前に腰の
その
刺さった場所は分からないが大人しくなったのでヨシとしよう。
「なかなかの曲芸を見せてもらった。では俺もひとつ面白い芸を披露してやるとしよう」
そう
「行くぞ。死ぬなよ」
態々そう警告した後に横薙ぎに振り切った。
その
正体はすぐにわかった
避けるか受けるか相殺するかだ。
射程は使い手に依存だが躱せば
ここは自分を信じて相殺するしかない!
何故なら時間的な余裕がなかったからだ。
僅かに遅れたが収束させた
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