第37話 洗礼

 ちょっと気になることがあり冒険者エーベンターリア達が逃げてきた方へと歩きながら先ほどの戦闘…………区画主エリアボス戦のダメ出しを受ける。

 隼人はやとは動きは悪くなかったと褒められていた。

 健司けんじは風車じゃないんだから馬鹿の一つ覚えみたいにブンブン振り回すなと叱られていた。

 和花のどかは早めに投石紐スリング投擲スローイングに切り替えた判断力はいいが痛痒ダメージには程遠かった。怪物えものが巨大で動きが鈍いのであればスピアーなどの|長物を用意して後ろから突いていた方が良かったかもしれないので検討するようにと言われていた。

 そして僕はと言えば…………。


「作戦は悪くなかった。一番嫌な汚れ役を自分で行ったのも良かった————」

 あれ? 褒められてる?

 だがそれは前振りだった。武器は小剣ショートソードで十分だった事。すぐに武器から手を放して離れなかった事で結果としてという不名誉な状況に陥った事をこっぴどく叱られた。



 暫くあれこれと話し込んでいると右側の通路に大黒蟲ラージコックローチが数匹ほど何かに群がっている。


「止まれっ」


 そう師匠がそう制止の声を発すると同時に大黒蟲ラージコックローチが爆ぜた。


 多分魔術師メイジなら誰でも無詠唱で放てる初歩の初歩である【魔力撃ブラスター】だろう。


 そして現れたのは————。


 テレビ番組だったりネットだったらモザイクがかかっているであろう大黒蟲ラージコックローチに食い荒らされた死体であった。

 背負子ベト・ゼーノーを背負っていることから荷運び人ポーターとして雇われた者であろう。


 師匠の事だから見せると言うことは何か意味があるのだろう。

 吐き気を催すもののそれを堪えて集中して観察すると————。


「師匠…………まさか…………」

「そのまさかだ」

 この遺体は僕らと同郷の者たちだ。もしかしたら…………。

「ここは奴隷の最終処理場でもあるからな。格安で処分奴隷アービトリオ・スクラブを買って荷物持ちとしてこき使い自分たちがピンチになれば彼らを囮に逃げ出す。そんな事がそれなりにまかり通っている————」


 師匠の話は進む。


「年齢は17~18だろう。お前らの学校の生徒だとするなら、その年齢だと軍事教練で戦闘訓練を受けているはずだし、それなりに戦闘も出来る荷運び人ポーターがなんと金貨数枚で使い捨てにできる!」


 そんな嫌味を言い始めた。続きがあり、

「先ほどの冒険者エーベンターリアはそこそこ年配だった。僅か金貨数枚で自分たちの命が助かるのなら安いもんだろう」

 段々イラつきが募ってきたのか最後は吐き捨てるよう言って締めくくった。


「みんな提案がある」

 師匠の説明に黙り込む皆に対して僕はある提案を行った。



 ▲△▲△▲△▲△▲△▲



「まーしゃーないだろう。付き合ってやんよ」

「お金はまた稼げばいいしね」

 健司けんじ和花のどかには肯定してもらった。だが…………。


「俺はお断りだ。俺の取り分は俺がどう使うか決める!」

 隼人はやとは頑なに拒否を口にした。それを批判するつもりはない。


 僕の提案はこうだ。

 今回の区画主エリアボス討伐で得た万能素子結晶マナ・クリスタルが想像以上に高額で売れるらしいため、これでここの地区の奴隷スクラブを買い集めて師匠の【次元門ディメンジョン・ゲート】の魔術にて元の世界へと送り返そうという内容だ。

 ただこの提案にはいくつか問題を抱えている。


 ひとつめは師匠が【次元門ディメンジョン・ゲート】の魔術の費用をいくらで請け負ってくれるか?

 ふたつめは買い取った奴隷たちの【隷属刻印スレイブマーカー】をどうするか?

 みっつめは全員買い取るのは難しいので優先順位をどうするかである。


 ひとつめはあっさり解決した。

「次の送還タイミングで一回にまとめてくれればタダでいいぞ」

 師匠はそう言って請け負ってくれる事となった。何か裏があるのだろうか?


 ふたつめに関しては師匠の話だと、一般的な、大半は借金で首が回らなかった奴などだが、労働奴隷ラボロー・スクラブは主人に直接または間接的に危害を加えないのであればそれなりに自由に動けるらしい。また世界を跨ぐことで呪いの効果が無効化する可能性もあるとの事だ。

 ただ世界を跨げない可能性もある。残酷だが誰か一人を実験生贄に使うしかあるまいとの事だ。それもある意味では仕方ない。元の世界に帰れることは最後まで伏せておくしかないだろう。

 そうは言っても生贄に選ばれた人は堪ったもんじゃ無かろうとは思うが他に方法が思いつかない。

 開放手続きをするにしても莫大な資産が飛ぶ。僕らの案は開放手続きに回す代金も奴隷スクラブとなってしまった同胞を集めるための資金にするためだ。


 分かっているけど…………。


 みっつめの問題は仕方なかろうと思う。金銭的に全員を救う事は出来ないわけで取捨選択は必要だろう。具体的には幼い子供から買い取る方向になる。最も同じ人間に優先順位をつけるのかと怒りそうな人はここにはいない。


 一応方針は決まったので万能素子結晶マナ・クリスタルを売却し明日にでも買取を始めるかーって事になり帰路につくことになった。


 原則左側通行と言うことで一旦奥へと向かい下水路を渡り元来た下水路を入り口に向かって歩いていく。

 今回は地図係マッパーを用意しなかったが、それほど奥まで進んでないし問題ないだろう。



 ▲△▲△▲△▲△▲△▲



「よう。ご同輩」

 下水路を出てやや広い通路に差し掛かったところで正面に立つ戦士風の冒険者エーベンターリアに声をかけられた。よく見れば先ほどの一党パーティの一員だ。

 他にもいくつか一党パーティがいるがまるで僕らを取り囲むようにジリジリと動いているのが分かる。


 ここに来るまでの師匠の話の中に連鎖暴走トレインを押し付けたり、押し付けた挙句に討伐してしまった場合は横取りしたと難癖付けて襲ってくる冒険者エーベンターリアがいるとは聞いていた。


 まさか初日からそんな目に合うとはね…………。


 瑞穂みずほは師匠が責任をもって守ってくれるだろう。

 残りをどう対処するかだ。


 出来るなら人を殺すという行為にだけは手を染めたくない。


「何するの! 離して!」

 どうするか決めかねていたらいつの間にか近づいてきた如何にも手練師トレーナーっぽいおっさんが和花のどかを羽交い絞めにしていた。


「何をするんだ!」

思わずそう叫んで片手半剣バスタードソードの柄に手がかかる。


「なー。坊主たち。人様の獲物を横取りするとか冒険者エーベンターリア規約ルールを理解していないようだから、これから俺ら先輩たちが教育してやろうっていうんだよ」

 そう言ったのはまとめ役リーダーらしいおっさん戦士ウォーリアが下卑た笑いを浮かべる。それに釣られてなのか取り巻き達も同じような下卑た笑みを浮かべる。

 手練師トレーナー風の男が抑え込んだ和花のどかを引きずって主犯格リーダーの元へと移動するのを今は黙ってみている。

 彼らは武器を抜いていないがこちらの動きには注目している下手に動くことで刺激したくはない。そうこうしているうちに和花のどか主犯格リーダーの手に渡る。

 和花のどかの両手首を片手で掴んだ主犯格リーダーが引寄せようとするが必死に抵抗する。しかし非力な和花のどかが振りほどけるわけもなく抵抗は空しく思われた。

 暴れる和花のどかの顎に手をかけ覗き込む主犯格リーダーのおっさんを睨む。

 全身を舐め回すように眺め、

「…………ふむ。貧相な体つきだが美しい顔立ちだ。それに知性の宿った良い瞳だ。そこらの阿婆擦れ冒険者エーベンターリアにはないな。これはお貴族さまに高く売れる」

 おっさんがそう漏らした。


「お頭ー。せめて味見くらいしてからでも…………」

 取り巻きの一人が下卑た笑みを浮かべるとそれに釣られたのか他の者も下卑た笑いを漏らす。

 涙目で嫌がる和花のどかが、彼らのちんけな嗜虐心にさらに火をつけたようにも思うが今は我慢して欲しい。

「こいつは大事な詫び賃代わりだ。溜まってるなら、分け前で私娼ルリド抱くなりそこのガキどもでも掘ってろ」


「まーそれでもいいか。いい声で鳴きそうだしな。ヒヒヒヒ」

 その男は下卑た笑いを上げ僕らを舐め回すように眺める。


 正直悪寒が走った。

 限界だと思った。

 ふと視線を動かすと和花のどかと目があった。察したのか暴れていた和花のどかが大人しくなる。


「なんか二人の世界ぃー? とか作っちゃってぇー自分たちの置かれている状態分かってんのかぁー? あぁん?」

 取り巻きの若い男の一人が妙に凄んで近寄ってきて掴みかかろうと右腕を伸ばしてくる。


 その右手首を左手で掴み斜め上方へと引きあげる。予期せぬ動作モーションに体幹を崩したところに反時計回りに身体を回転させて膝を曲げおぶるように相手の懐に入り込み膝を跳ね上げ前方へと倒れる感じで叩きつけるように投げる。


 くぐもった声をあげる若い男に対して素早く体勢を整え無防備に晒している喉元に強烈な踏みつけストッピングを見舞ってやる。


「な…………なんだ。今のは…………」

 一瞬の出来事におっさん共は動揺が走る。

風の精シムーンよ。こいつに風を撃ちつけて!」

 動揺した一瞬の隙をついて和花のどかの放った初歩の風の精霊魔法【風撃デア・シュトルム】が腕を掴んで離さない主犯格リーダーの顔面を捉える。予想外の反撃に思わず手を離してしまい、その隙を和花のどかは逃さずに僕の後ろに逃げ込む。



 さて、後は暴れるだけだ。


「うぉりゃぁぁぁぁぁっ」

 雄たけびを上げて健司けんじがカバーのかかったままの三日月斧バルディッシュを振り回しながら右側の冒険者エーベンターリア一党パーティへと襲い掛かる。

 最初の犠牲者は若い戦士風の男だった。大振りフルスイングの一撃が側頭部に決まり叫び声もなく崩れ落ちる。 間違いなく顔面の骨は砕けている。あれは死んでるかも…………。


綴るコンポーズ創成クリエ第一階梯ファルク幻の位ファムト囁きムッター誘眠ヒュプノ誘導インダ大気アトム変質アルトラ発動ヴァルツ眠りの雲スリープ・クラウド


 健司けんじの突貫に合わせて後ろから和花のどか呪句タンスラの旋律が耳に飛び込む。

 正面にいる主犯格リーダー一党パーティを狙ったようで崩れ落ちるように倒れていく。

「おい、貴様ら!」

 主犯格リーダー抵抗レジストしたようだ。慌てて取り巻きどもを起こしにかかろうとするがそんなことはさせない!

眠りの雲スリープ・クラウド】の魔術は完全に効果が発揮されるまで若干の誤差タイムラグがあるのだ。


「なっ」

 一瞬で僕が目の前に移動し突きが頬を掠めた事に焦ったようだ。

 僕の行なった行為は別に魔術的な事でも超常現象でもない。

 こっちの世界では武技グウェラー・アーツと呼ばれる技で大隊の流派が差異はあれど教えるの歩法の【疾脚しっきゃく】という立派な戦闘技術である。要約してしまうと動き出しを悟らせず間合いを詰める技術の事だ。別に転移したわけでも急加速したわけでもない。一瞬で近寄ったように見えるのは目の錯覚だ。

 両手持ちにした片手半剣バスタードソードで刺突することで1.5サート約6mくらいまで攻撃範囲が広がるメリットもある。

 初撃は取り巻きを起こさせないためにワザと外したけど次からは本気モードだ!


 慌てて腰の広刃の剣ブロードソードを抜こうとするが、そんなことはさせない。

 主犯格リーダーの右手が柄を握り抜剣しようとした瞬間に振り下ろし気味の左の掌打を柄頭に打ち込む。

 抜こうと思った瞬間抑え込まれた事で焦ったのか思いっきり後方に飛び退いた。だが結果的にこの行為が彼の命を救った。

 左腕を戻す反動を利用した僕の右の横薙ぎが避けられただけでなく、眠り始めていた取り巻きの一人に主犯格リーダーが引っ掛かり後ろに転倒してしまったのである。

 しかも転がったタイミングで間合いが外れ起き上がるタイミングに合わせて抜剣してしまったのである。


 運が悪い。


 主犯格リーダーの方は武器を抜いたことで気持ちに余裕が戻ってきたようだ。

「坊主。いい腕だな。うちで働かないか?」

 しかも勧誘ときたもんだ。しかしお前は和花のどかに下卑た笑みを浮かべた。万死に値する。比喩的表現だけど。


「断る!」


 今の問いは時間稼ぎだったのだろう。返答した瞬間に斬りかかってきた。


 その上段から斬り落としを身体を横に捌いて躱しつつお返しとばかりに右片手袈裟斬りを見舞うも素早く体勢を立て直して鍔元で受けられてしまった。そのまま鍔迫り合いへと持ち込もうと思うものの押し込んでもビクともしない。膂力で完全に負けているようだ。

 位置を入れ替えつつ鍔迫り合いを続けるものの事態が好転しないので仕切りなおすことにした。


 師匠直伝の足払いをいれると意表を突いたのか慌てて後ろに飛び退って距離を開ける。

「若いのに随分と足癖の悪い坊主だ」

 主犯格リーダーに余裕が戻ったように思えたのは、僕の後ろで取り巻きたちが起き上がるのを確認したからだろう。

いつきくん!」

 和花のどかの悲鳴に近い叫びにほとんど反射的に逆手に持ち替えた片手半剣バスタードソードを後ろへ突き出す。


「えっ。なんで?」

 不意打ちをする予定だった筈の男は自身がどうしてそうなったか理解できず串刺しにされた自身の腹を見て間抜けな声を上げ倒れた。


 なぜか思考がクリアになっていく。余計な雑念が飛んでいきそれに代わって足音、空気の流れなど様々な情報から今の僕には取り巻きの位置関係や動きが見ていなくても手に取るようにわかる。先ほどのそこに突き出せば当たると理解できたから振り返りもしなかったのだ。


「こいつ結構強いぞ。お前ら纏めてかかれ!」

 まとめ役リーダーの号令で一人では埒が明かないと3人まとめて斬りかかってきた。

 同時攻撃と言えばすごい事だが、実際には挙動がバラバラで連携も取れていない。突き攻撃をしてきた取り巻きを左腕の刃留めソードストッパー受流しパリィで軌道を変えてやり別方向から斬りかかってきた取り巻きと相打ちさせる。もう一人の取り巻きの斬撃は鍔元で受止めシースて勢いを殺した後で、片手半剣バスタードソードを動かし柄頭ポンメルを手首に振り下ろす。

 流石に骨が折れることはなかったようだが、武器を落とし手首を押さえてもがいているところを前蹴りで蹴倒しオマケとばかりに踏みつけストッピングで黙らせる。とりあえずお互いを深々と刺し合ったふたりと踏みつけストッピングで黙り込んだこいつは戦力外だろう。最初に投げ飛ばした奴もまだ戦闘できる状態ではない。最初に突きで仕留めた奴も死んではいないようだが結構な出血のようだ。

 あとは…………。


 ひとり寝た振りをして隙を窺っている男がいる。和花のどかを捉えた手練師トレーナーっぽいおっさんだ。



「参ったね。ガキ4人に四一党パーティが壊滅かよ。こりゃー噂とかされちゃって恥ずかしくてオジサン生きていけないわ」

 お、降参してくれる?

 だがその期待は裏切られた。

「こりゃーホンキ出すしかねーなっ!」

 そう叫んだと思ったら目の前で広刃の剣ブロードソードを振り上げていた。それが振り下ろされる。


 このおっさんも歩法を使うのか!


「ちっ。【孤影】まで使えるのかよ。その若さですげーな」

【孤影】という技は知らないが恐らくおっさんが使う流派の技なのだろう。攻撃が命中する刹那を見切り回避アヴォイドする事で対戦者には斬ったと錯覚させるのだが…………。

「なら、これならどうだ!」

 主犯格リーダーの袈裟斬りを避けようと思ったが予想以上に鋭く回避アヴォイドは無理と判断し右手で持っていた片手半剣バスタードソードの鍔元で受止めシースを行う。師匠には緊急時以外は剣が痛むから止めるようにと言われていたが今回は仕方ない。

 だがここで致命的なミスを犯してしまった。

 受止めシースが決まったことでひと安心してしまったのである。

 その隙を逃すほどこの主犯格リーダーは甘くなかった。

 広刃の剣ブロードソードを絡みつかせるように手首を返すとその流れに釣られて僕の片手半剣バスタードソードが手から落ちてしまったのである。武器落としディザームという高等技だ。

 慌てて予備の小剣ショートソードを抜こうとするが強打スマッシュによって弾き飛ばされてしまう。


いつきくん!」


「大丈夫!」

 後ろにいる和花のどかが心配したのか声をかけてきたがまだ大丈夫。

 奥の手を使う前に腰の投擲短剣スローイングナイフを抜き放って器用に後ろに投擲スローイングする。

 その投擲短剣スローイングナイフは後ろから忍び寄ろうとしていた男に突き刺さった。先ほどまで寝た振りをしていた取り巻きだ。

 刺さった場所は分からないが大人しくなったのでヨシとしよう。


「なかなかの曲芸を見せてもらった。では俺もひとつ面白い芸を披露してやるとしよう」

 そう主犯格リーダーは言うと、足を広げ腰を落とし広刃の剣ブロードソードを逆手持ちに変え右手を引く。なんか厨二的構えだなーとか思っていたら、

「行くぞ。死ぬなよ」

 態々そう警告した後に横薙ぎに振り切った。

 その主犯格リーダーの表情に警鐘を鳴らしていた。ウッカリしていたが後ろに和花のどかがいる。ジリジリと場所ポジションを変えていたのに気が付かなかった!


 正体はすぐにわかった魔闘術ストラグル・アーツの【飛翔練気斬】と呼ばれる体内で練った体内保有万能素子インターナル・マナを刃状にして飛ばすという格ゲーみたいな技だ。原理そのものは魔術師メイジの【魔力斬リープ・スラッシュ】と全く同じである。対抗策も同じだ。

 避けるか受けるか相殺するかだ。

 射程は使い手に依存だが躱せば和花のどかが危ない。

 ここは自分を信じて相殺するしかない!

 魔闘術ストラグル・アーツについては一応師匠からレクチャーは受けている。魔術師メイジでもある僕は特に問題なく使えるのだが、実は実戦でも訓練でも使ったことがない。

 何故なら時間的な余裕がなかったからだ。


 僅かに遅れたが収束させた体内保有万能素子インターナル・マナを手刀に乗せて振り抜く。それと同時に激しい眩暈と倦怠感が襲い結果を見ることなく意識がブラックアウトした。

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