第36話 区画主と戦い
「
前衛を担当する
「しんどい…………」
未熟な僕が短時間に魔術を連発したため脳がその処理で悲鳴を上げているのであろう。だが自分の判断でこの危険な手助けに加担するのである。
この程度で音を上げる訳にはいかない。
次なる魔術の準備に入る。だが、その前に————。
一応後ろを確認する。
敵対生物などは見えない。
他の
師匠は泰然としている…………。放っておいても問題なさそう。
でもあんなに肝が据わってたっけ?
「すまない。この恩はあとで必ず!」
その際にリーダーらしき
そんな事を思案していると————。
「うおりゃぁぁぁぁぁぁぁっ!」
移動中の大型生物相手に正面から迎撃とか自殺行為だし、質量差で弾き飛ばされるのがオチである。ましてや
予定通りではある。
警戒すべきは強力な大顎による噛みつきと質量差を生かした突進や押さえつけだ。動きに関しては
むしろ取り巻きの
そのうち二匹が追っていた
「すまない。そっちに二匹いった!!」
逃走していった
まーこっちもそれどころじゃない。
壁伝いに
先頭のそいつを
「あっ!」
だがそいつは悪手だと思った時には
頭部に
そして頭部に
気が削がれている僕のところに二匹目の
ただ串刺しにしたはいいけど結構重いうえに暴れるので重みで押しつぶされそうだし、
暴れるのを抑えつつ頭上からの噛みつきを避けていると————。
「
後ろから最高のタイミングで
その隙に何発か前蹴りの要領で隙間を作り根元まで突き刺さっていた
いい感じにひっくり返った
頭部を失っても
「三匹目は?」
そう呟きつつ四方を確認すると師匠の目の前に細切れにされた三匹目がいた。
よし! 予定通り。
手は出さないと宣言していたが、今は足手纏い扱いの
もっとも後でこっぴどく怒られそうだけどね。
戦況的には
魔術は温存してもらいたいのでいい判断だ。
そばにいる
「わかった」
「さて、僕も覚悟を決めるか」
僕らは基本的に下水路の左右にある点検用の通路で足を踏ん張って武器を振るう。腰の……体重の乗らない一撃では埒が明かないからだ。
だがそれ故に相手との相対位置によって攻撃できる
特に
そんな時、
小回りの利く
となれば後は僕が覚悟を決めるだけだ。
改めてそう自分に言い含めて下水へと身を沈める。
「おうぇぇっ」
あまりに臭いに嘔吐しかけたが、内容物をぐっと飲みこむ。ここは我慢だ。
下水自体の深さは事前説明で
ここからさらに身を屈めて首から上だけ下水から出した状態で
水質は劣悪っぽいけど、底の方はヘドロの様なものもなくしっかり踏ん張れる。
流れに逆らう形で徐々に近づいていく。
こちらの存在には気が付かないようで
「いまだっ!」
伸びあがるように両手で構えた
思ったほど抵抗も感じず
ドバドバと形容しがたい内容物が頭上から降ってくるのを目を瞑ってやりすごし————。
あ、ちょっ、まって。
▲△▲△▲△▲△▲△▲
浮遊感に襲われて慌てて手足をバタつかせる。
汚物やら体液で目は開けられないので周囲はわからないが下水から引っ張り出されたようだ。
「いてっ」
放り棄てられたのか通路に投げ捨てられたようだ。その後一拍置いて何やら魔術が施された感触を覚え、
「おら、目を開けろ。このマヌケめ」
そう師匠に言われて恐る恐る瞼を開くと…………。
「あれ?」
汚れていないどころか装備が洗いたてのようにピカピカになっている。
「もうちょっと後先考えろ。お前さん
どうやらこういうことらしい。
僕が
それが止めになったらしく下水に沈み込んでいく際に下にいた僕も巻き込まれたらしい。
目を瞑り呼吸を止めて耐えてたつもりが、救助する頃には窒息による心肺停止状態だったらしい。
そんな状態の僕を【
何気に奥義級の魔術が混じってるあたりが流石は師匠である。
「とりあえず礼いらないが、俺がいなかったらお前さん死んでたぞ」
怒っているようにも聞こえたが、口調そのものは呆れたと言わんばかりである。
心肺停止って死亡じゃないの?
そう思っていると疑問が顔に出ていたようで、
「応急処置…………この場合は人工呼吸や心臓マッサージで蘇生可能な場合は
そう師匠に言われた。
もう一つ一応緊急性もあった。大変高価な触媒を用いる【
「これいくらになるんでしょう?」
その話はこれで終わりとばかりに
それは内部から眩しいくらいの光を放っていた。
「そうだな。まずは
まずはそう師匠が称賛してくれて
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