第31話 駅舎街
「あ、あの…………ヴァルザスさん。お話があります」
朝食を終え片づけを行っている最中の事だった。
「やはり帰りたくなったかい?」
「いえ、残りたいです!」
口数少なく大人しい
「ここは
腰を屈め目線を合わせて師匠にしては珍しく優し気な口調でそう問う。それに対して
「では君はどうやってこの世界で生きていく? この世界が優しくないことは身を以って知ったことだろう。子供だからと優遇される事もない。身内の縁に縋って
そう言って師匠は僕を見る。
僕は無言で頷く。
僕個人としては面倒を見ても構わないとは思っているんだけど…………。
だが
「だから…………私に分からない事だらけだけど、出来る事をやります」
そう答えた
「
師匠は逡巡したのちに僕を呼びつけてこう言った。
「二か月猶予をやるから何とかしてやれ」
呼ばれたから何かと思えば丸投げされた。まーそんな気はしてたけど…………。
「なら、せめて適性を調べてもらって、昼間はそれを伸ばしてやってもらえませんか? 僕らはその間に
師匠にそう提案した。実際のところ僕らじゃ
「俺はとしては戦力でも荷物持ちでも歓迎だ。足さえ引っ張らなければな」
「俺も
「私は男所帯に女の子が入ってくれるのはありがたいかなー」
概ね好意的な意見が出たところで師匠が追い打ちをかける。
「それじゃ、あと
師匠はそう
ここでいう
歩きながら師匠のガイドというか授業が始まる。
現在地をルカタン半島と呼ぶのだが、この半島全体が中原の大国ウィンダリア王国の重鎮であり
塩も南端に広大な塩田があったり、古代帝国時代に気象改造によって温暖な南部は香辛料なども多種多様に採取できるそうだ。
半島北は昨日通過した長大な市壁で塞がれており、東西は南端まで絶壁が続く。土地は起伏がほとんどなく面積は
「実はお前らにひとつ嘘をついた」
唐突に師匠がそう前置きする。
何かと思ったら…………。
実はそこそこ安全でそこそこ程度の良い生活ができる方法があるのそうだ。
それが
生活レベルは衣食住には困らないし食事の質も高い。漁業従事者以外は生命の危険も少ない。
ただ問題もあって、集団作業なので意思疎通が出来ることが条件であった事と、契約中の5年間は土地に縛られており娯楽の類とは縁がなくなることの他に定員がある事、全員が申し込んでも配属はバラバラにされる事、5年間は互いに連絡すら取れないこともあってあえて推奨しなかったそうだ。
そして契約が満了になると慰労金がもらえる。
迷宮都市ザルツで募集してるから
これ以降は質疑応答が続いていく。
これまでの生活で感じた事、この間の仕事の問題点などを懇切丁寧にアドバイスしてもらう。
話に夢中になっていたのか気が付くと陽が傾いており
到着と同時に座り込んでしまったものの、昨日の今日で筋肉痛に
直ぐに
不味い食事を済ませて僕は真っ先に寝る。今日の見張りは遅番なので起きるのは夜中だ。揉め事回避の為に夜の見張り順はローテーションが基本だという。昨日遅番だった
三日目は黙々と歩き続けた。
心なしか
振り返れば
もしかして僕だけハブられているのか?
なんだか自分だけ孤立してるんじゃないのかと悩みつつ三日目は過ぎていく。
▲△▲△▲△▲△▲△▲
四日目の昼を過ぎる頃にようやく地平線の彼方に建造物が見えてきた。
「残り
「少し遅れているが、そろそろ疲れも溜まっているだろうしこんなものだろう」
僕の呟きを耳にしたのか師匠がそう答えてくれた。
延々と農作物だけを見続けるのにも飽きてきたところだったので目的地が見えてきたのは助かった。
「師匠。
流石に徒歩は勘弁してもらいたい。
「駅舎街で相棒たちと合流する事になっている。
楽できそうで良かった良かったと思っていると、
「なんだ。お前らが乗りたいというから運び込むっていうのに反応が悪いな。約束しただろ? もっと喜べよ」
師匠にそう言われて思い出した。
そうだ。特訓が終わったらいろいろと教えてもらう約束をしていたんだった。
やっぱ年頃の男子としてはロボットの操縦に憧れるよね?
舞い上がったテンションのまま前を歩く
「もうすぐ
そう話しかけると二人とも一瞬「え?」って表情になり、
「「マジかー!!」」
見事にハモった。
あれ?
知ってたんじゃないの?
彼らは昨日何を思ってソワソワしていたのだろう?
謎だ。
考え事をしているうちに気が付けば駅舎街に到着していた。
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