第30話 初日
「師匠。
世が世なら虐待で訴えられると思うが、ここは
「五日間あったのに未だに答えが出ないようだから帰りたいように仕向けてるんだよ。元の世界とこっちの世界では12歳児の扱いは異なる。可哀そうだと思うなら
なんとなく投げやりな感じの師匠の物言いだが一応本人の意思を尊重ってスタンスのようだ。
もともと口数の少ない大人しい
「そういえば、あの娘……
師匠が何かを思い出したようにそんな事を聞いてきた。
「……ん~。
師匠に問われたので二人の関係性を話してみたけど…………あれ?
「その話だと危険を冒してでも兄を探して一緒に帰りたいって感じは受けないぞ。寧ろ帰りたくない理由は別の事じゃないのか?」
親族の中では仲の良い兄妹って印象だったんだけど、言われてみれば違う理由な気がしてきた。
年頃だし過干渉を
そうすると戻りたくない理由は自分を奴隷に堕とした奴らに復讐したいとか?
だけど奴らはその強欲の報いを受けて今は土の中だ。
思案に耽っていると師匠が、「ちょっと
▲△▲△▲△▲△▲△▲
「何を言われたの?」
少し歩調を速めて
「あ、ごめん。説得を頼まれただけだよ」
何度か呼びかけるとようやく返事を返したが、それにしては長く話し込んでいたな。
たぶん僕がいると話しにくい内容もあるのだろうと思い歩調を速めて師匠を追いかける。
そして男四人が揃ったところで今後の動きについて師匠から話があり、
なぜ今なのかというと先日
ただ悪い事ばかりではない。
なんと
言葉も通じない異世界で毎日毎日いつ迷宮から帰ってくるかもわからない僕らを延々と待ち続けさせるのか?
その間ずっと引き籠っていろというのか?
兄である
課題は山ほどあり僕らも
しかも
師匠の提案は二つあり、ひとつは
それを
ふたつめは適性を調べて短期間で僕らについていけるまで育てるという手もあるとの事だ。
それは師匠らによるスパルタな訳だけど。この人は脳筋思考に見えて理論的な説明もできるし根性論も説く。
「少なくとも二、三日で音を上げる程度では、ここじゃ生きていけないさ。さっさと説得して帰らせた方がいい。ただ————」
師匠は一度言葉を切って少し逡巡したのちにこう言った。
「予定通りなら四日目の昼頃に
そう言うとこの話は以後なしだと言って黙々と歩き続けた。
こっちの世界にある程度順応してきたとはいえ休憩を挟みつつ
代り映えのしない景色に飽きてきた頃、陽も傾きかけてきたので野営地として使えそうな場所を探すこととなる。この辺りは穀倉地帯であり農業用水路や井戸もあるので水場には困らないので助かる。
そして程なくして適度に開けた場所を見つけて皆が荷物を降ろし手頃な大きさの石と薪になりそうなモノを探しに周囲に散る。石は簡易
そうは言っても油断できないので三交代で見張りを立てる事となる。
見張りの順番が決まり一息ついた頃ようやく
座り込んだ
二人して何やら小声で話しているが距離があって聞き取れない。時々笑みを浮かべたりしているところを見るに気持ち的に少し余裕ができたのだろうか?
正直言うとこの
「前々から気になってたんすけど、これなんの肉っすか?」
「
師匠がそう言って笑うが、
育てやすく繁殖力が高すぎるくらい高いうえに成長も早く半年で体長
なんか一気に食欲が減退した。
だが意外な事に
なんとも微妙な食事も終わり最初の見張り以外は毛布を地面に敷いてそこに転がる。最初は
三時間交代の為、中途半端な睡眠で起こされる。
この後
場所柄何事もなく3時間が経過した。流石にぼけーっと過ごすと寝てしまいそうなので、師匠に
交代の時間がきたので
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます