第27話 最終試験③
今までウジウジと悩んでいたのは何だったんだろうか?
確かに自分とよく似た人型の生物の肉を割き骨を断ち命を奪う感触は不快ではある。
ただ…………。
これでいざとなったら元の世界に戻るという僅かな未練も絶てた気がする。
心のどこかで平和な…………だが窮屈すぎる
だからこれで良かったん————
そこで僕の意識はブラックアウトした。
▲△▲△▲△▲△▲△▲
目を覚ますと
「おはよう。お目覚めはどう?」
ずっと僕を見下ろしていたのか
「まさかとは思うけど、また死んだ?」
まずそいつを疑った。
「ううん。危なかったけど助かったよ。お礼はマリアちゃんに言ってね」
僕に質問に首を振り否定し、恩人の方を指さす。
「そー言えばここは?」
「
「戦闘はどうなったの?」
なんで僕は倒れてたんだ?
「あ、気が付いてなかったんだ?
刺されたことに気が付かなかったのか…………。
あ、そうだ。
「そーいや
かなり出血もしていたし、動かなかったんで死んだかと思ったけど
「
そうか…………。
ならいつまでも膝枕に甘んじてたらいけないね。
起き上がり土を払って周囲を見回す。
「あれ? マリアベルデさんは?」
お礼を言おうかと思ったのに何処にもいない。
「マリアちゃんなら
まだ子供なのにしっかりしてるなーとか暢気な事を考えつつ
「よっ。起きたか」
「遅いぞ」
僕が近づいてきたことに気が付いた
「悪い。悪い。んで状況は?」
二人に詫びつつ状況の確認を促す。
「敵さんはあれで
そういう
「中を確認して報告しないと仕事完了にはならないだろうし僕が行くよ」
そう言って、まだ【
洞窟へと入ろうとした僕の右腕を
「おいおい。
「悪いね」
「良いって事よ」
そう言って
「俺もついていこうか?」
「その身体じゃこの洞窟は狭すぎるよ。それに
洞窟の高さは
この森に詳しい
「ま、確かに俺には窮屈だな。わかった。気をつけてな」
「了解」
そう答えて洞窟へと入る。
▲△▲△▲△▲△▲△▲
洞窟へと入り腐敗臭と汚物臭に辟易しながら部屋と呼ぶには微妙な空間を3つほど調べた結果はどちらも
「なー。
「「え?」」
お互いの声がハモった。
今まで苗字呼びだったのに何事?
「いきなりどうした?」
「元の世界の時は代々
「なんだ。そんな事か。まー確かに共通の趣味以外ではあまり接点なかったし、そのあたり
これからは生死を共にする仲間なわけだし呼び名一つで結束が固まるなら安いもんだね。
「なら、改めてよろしく」
そういって僕は右手を差し出した。
「こちらこそ」
握手を交わし思わず二人してニヤリとしてしまう。
「目ぼしいものも何もないし奥へ進もう」
「そうだな」
そして僕らは
「「うっ」」
明かりが照らしたソレは恐らく依頼を受けてここに来たであろう
二人して嘔吐いたものの少しして落ち着きを取り戻し改めて観察する。
「ここまで酷く扱う理由が分からないな」
そう呟きつつ8体の遺体を検分していく。それらの遺体はまるで子供の玩具にでもされたかのようにひどい損傷だった。
冥福を祈りつつ遺体から
「それにしても聞いていた数と遺体の数が合わないな」
そう
「見つからないのは女性の
「おい。
そうか…………
「いこう」
その入り口は巧妙に隠されていたとかではなかった。
単に元々見えにくい場所にあり、廃棄物が近くに鎮座し、光源の向きの関係で陰になっていて見えてなかったのだ。
師匠からも注意を受けていたのにうっかりしていた。やはり知識だけ詰め込んでも使いこなせないと意味はないな。
入り口自体もかなり狭くて
嫌な予感は的中した。
その空間だけは無用なゴミなどは散乱しておらず整理されていたが予想通り女性
どちらも死因は心臓を
抵抗した痕跡がないところを見ると
取りあえず
「これなんだと思う?」
「全部で5本か…………
文字が読めなかった。
「
読めれば何か判りそうなものだが…………。
「
「一応は第五階梯の魔術に【
「そうかー」
僕や
この導管と呼ばれる霊的器官は魂に直結しているとかで癒せないのだそうだ。
「
「それもそうだな。下手に首を突っ込んで巻き込まれたらたまらんな」
「後味の悪い仕事になったけど、この二体の遺体だけ外に運び出そう。マリアベルデさんが居るし蘇生して貰えるかも」
「そうだな」
▲△▲△▲△▲△▲△▲
「埋葬しましょう。この人たちはもう離魂してしまっています。手遅れです」
戻ってきたマリアベルデさんに助けてもらったお礼を言った後で、洞窟から苦労して運び出した
残念ながら蘇生不可能だった。すでに魂は現世を離れ輪廻の渦に飲まれたのだという。
ここまで道案内で同行してくれた
それを聞いて僕は
一瞬驚いたもののその後鼻歌交じりで村に戻っていった。
「流石に渡しすぎじゃねーの?」
不満タラタラの
「何か考えのあっての事なのか?」
「金額からすると高いと思うかもしれないけども、村で逃した
その説明で納得してくれたようだ。大きくない森とはいえ
因みにこちらの世界での埋葬は、基本的には火葬した後に遺灰を聖水に浸すそうだ。土葬だと
遺灰を聖水で浸すのは、
マリアベルデさんと情報交換をしつつ、こっそり受けていた
「迷宮都市ザルツに所用ですか?」
「うん。ちょっと人探しをね」
今回はたまたま迷宮都市ザルツへと向かう途中で一晩の宿にと思ったこの村に立ち寄ったら、若い
到着したら僕と
あらためてお礼を述べ、マリアベルデさんの人探しの話へと変わる。
どこかで見たような? いや、まさかね…………
「同族の方ですか?」
兄弟なり親類だろうか? 神秘的な
「ううん」
頭をぶんぶんと振って思いっきり否定された。しかし普段は神秘的な美しい聖女様も歳相応に見える。
「…………恋人」
目を伏せ頬を朱色に染めてそう宣った。その表情は美しいと同時に幼いながらも女の
こっちの世界だと12歳くらいで恋人とかいるのかぁ…………。
この後
疲労もあり月明かりが差し込むだけの納屋は暗いのでさっさと寝てしまった。
驚いたことに翌朝は村長宅で朝食をご相伴にあずかり
徒歩だと一泊野宿になるから面倒だなと思っていただけに助かった。賃金弾んだ甲斐もあったというものだ。
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