第24話 個別特訓
無事に合流を果たし心身ともに疲れ果てた僕らは割り当てられた個室で泥のように眠った。
目が覚めたのは昼を過ぎたあたりだった。
少し遅めの昼食を食堂で取りつつ、これからの
ざっくりとは聞いていたけど四人それぞれの長所を伸ばすために師匠の
昼食後はそのまま全員で座学を行うことになっている。
内容は
夕飯までの
夕飯後は
師匠の説明は発せられた言葉を
文字として捉えてしまった場合、意思の疎通において認識のズレが生じるとの事だ。例として出されたのは僕らの世界でもよくあるネット掲示板の書き込みと炎上だった。文字として捉えてしまうと発言者の細かいニュアンスなどが抜け落ちてしまい真意が伝わらない事が多々あるので、注意するのは相手の身振り手振りや仕草、視線、声色などにも注意を払うようにとの事だ。尋問するときもされる際にもこの辺りを意識しておくようにとの事だった。
まだ拉致られてひと月…………きっちり勉強を始めてから
もちろん懐具合に余裕があれば
娯楽もないので早めの就寝だった。
翌朝は
朝食前に柔軟を行いその後は甲板の上を延々と走らされる。
なんでも
ここで気が付いたのだけど、まだ教師役が十人もいるのだが?
これまさか全部僕の担当?
ハハ…………嘘だよね?
本当でした。
この十人は僕の戦闘訓練のために用意した人員でそれぞれ得意の得物が違うそうだ。身体の使い方自体は長年培った[高屋流剣術]で出来上がっているので少しでも今の武器に慣れさせるためにとにかく模擬戦地獄で身体に叩き込もうという事らしい。朝食後に
彼らは舌なめずりしてこっちを見ているんだが生き残れるのだろうか?
▲△▲△▲△▲△▲△▲
あっという間に
毎日
今の時代の
筈なのだが、この発声がネックで使い手の数が少ないのだそうだ。
とにかく僅かな音の違いを発声できないが故に
そして正確な発声にはそれを聞き分ける聴力も必須となる。
僕と
古典ラノベで典型的な無詠唱などはまずはこの基本を押さえる事と無詠唱化という儀式をする必要性があるとの事だ。
無詠唱は脳の未使用領域に
昼食後に最も過酷な模擬戦が始まる。
様々な武器を持った十人の戦士たちと交代で戦闘を行うのだけど、一人頭五分毎に交代で合間に一分間の休憩が入る。
勝てるとは思っていなかったが善戦できる思っていた。
だがいざ始めてみると子供をあしらうようにいい様に翻弄されて気が付くと一本取られている。どれだけヘロヘロになろうと模擬戦は続く。
結局四周ほどして模擬戦は終わった。
その後は夕飯まで延々と
この
魔法を使うと脳に負荷がかかる。
この
夕飯は四人とも時間をずらされているのか誰とも会わずに教師役の人たちとあれこれ話しながら大盛りの食事に挑む。僕は
だがこの大量の食事も特訓の一環であるとの事でかなり無理やり食べさせられる。スポーツ選手が結構なカロリーを摂取してるのを見たことがあるから言いたいことは分かるので食べるが、明らかに普段の倍以上の食事量は拷問にも思う。
食後はシャワーを浴びてベッドにダイブである。
変化を感じたのは特訓を初めて12日目の模擬戦の時だった。
今までモヤモヤしていた何かが噛み合ったという表現が一番しっくりくる。
身体がようやく
身体がイメージ通りに動くと言うべきなんだろうか?
昔道場で稽古していた時のような感覚が戻ってきた。
その日の特訓が終わって師匠から特訓の内容を変更すると言われた。
「よーやくスランプから抜け出せたようだな」
「え?」
僕がスランプ?
どーいう事?
「自覚がなかったのか?
「何が原因なのか…………」
それがさっぱりわからない。
「憶測だがこの世界にきて最初の
確かに言われてみると…………。
「これまでの特訓は様々な戦闘パターンに対処させる特訓でもあった。そもそも[高屋流剣術]は対人戦闘が主でその心構えも習っていたはずだ。おかしいとは思わなかったのか?」
そーいえば理由ははっきりしないけど頑なに対人戦を嫌悪していた気がするな…………。
この強制転移騒ぎがなければ僕は防衛軍士官か武装警官の道に進むことになる筈で…………凄惨な
「ところでなんで
その質問に対する師匠の回答はというと————。
以前にも説明されたが
僕に求められているのは高い知能を持つ強敵への対処だ。高い知能を持つ相手は
そしてもう一つこの特訓で僕は知らないうちに
元々は[高屋流剣術]上伝の技にもあるらしく下地自体は出来上がっていたらしい。
一気に状況が変わって少し混乱しているが、どうやら自分に自信をもっていいらしい。
個別訓練開始から13日目
「
右手に発動体となる
すると疲労感のようなもの感じたと同時に
「成功したな」
師匠のその言葉で初めて
「やったー!」
思わず叫んで飛び上がってしまった。
「気絶するまで繰り返して、自分がどれだけ魔法が使えるか身体に刷り込んでおくといい」
そう師匠に言われて【
超人の師匠のようにすべて暗記って訳にはいかないので、第一階梯の魔術の中で利用頻度の高い魔術を選んで暗記する事となった。
実戦向きの魔術にしようか…………。
悩んだ末に暗記すると決めた魔術は————。
対象の魔法抵抗力を底上げする【
対象の防御力を底上げする【
対象の攻撃回避能力を底上げする【
対象の武器の威力を削ぐ【
対象の武器の威力を上げる【
光り輝く魔法の矢を作り出し攻撃する【
そして初歩にして基本とも言うべき【
「さて、忘れてはならないのが、基本的には特定の対象にかける魔術は対象を増やす場合は負荷が増えることだ。例えば【
ゲームみたいに
僕の場合は休憩込みで一日に使える魔術の数は10回くらいだろうとの事だ。ただし
昼食後は戦闘訓練だったのだが、ここにも大きな違いがあった。
いつもの教師陣がいないのである。
その代わり木剣を持った師匠が突っ立っていただけである。
「あれ? いつもの人たちは?」
「今日から俺が相手だ」
そういうとニヤリとした。
▲△▲△▲△▲△▲△▲
「これで
そう笑う師匠。
もちろん実際に死んだわけじゃない。
とにかく手も足も出ない。完全に師匠の掌で踊らされているというべきだろうか?
詰将棋のようにジワジワと回避スペースが削られていき気が付けば詰んでいるか、自棄になって距離を取ろうとしてもすかさず
そして最も嫌らしいのがこちらの攻撃を躱しつつ器用に魔法を使うところだ。
先ほどもこちらの斬撃を躱しつつ器用に
【
だが、流石に45回も死亡判定されれば僕が阿呆でも師匠の意図に気が付く。
これは僕の目指すべき戦闘スタイルなんだ。
もちろん僕と師匠じゃ体格など違う面は多々あるが思い返してみればそうとしか思えない行動も結構あった。
その後も師匠にはいい様に遊ばれて結局死亡判定は62回を数えた。
自信を取り戻し目標が見えてくると特訓も楽しく気が付くと残りの日数をあっという間に過ぎ去ってしまった。
特訓最終日の夕飯は珍しく四人揃った。
「
隣に座った
「そうかもね。なんていうか…………吹っ切れた感じかな?
「私は
なら暗記した魔術が被らないように後で相談しないといけないね。
食事しつつお互いの特訓状況を語り合った。みんなそれなりに手応えがあったらしい。
食事も終わり食後のお茶を飲んで寛いでいると師匠が食堂に入ってくるなりこう述べた。
「明日は最終試験を行う。
言うだけ言うとさっさと食堂から立ち去ってしまった。
「これに不合格だと俺らどうなるんだ?」
「あの人の事だし、失敗したら適性なしとみなして元の世界に送還だろうねぇ」
「お前らは魔法とかどれだけ使えるようになったんだよ?」
僕と
「昔読んだなんかの小説で
明日の試験とやらが無事に済むように祈りつつこの日はぐっすりと眠りについたのだった。
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