第22話 長い夜③
「どうして
「確かに
師匠の回答はそんな感じだった。
そして僕らは略奪に酔いしれ襲い来る民兵や正規兵を戦闘不能にしつつ目的地である市壁そばの駐騎場へと向かっているのである。
▲△▲△▲△▲△▲△▲
まず根本的に大きな勘違いをしていた。
実際には
後ろを振り返ってはいないが
だが————。
「「「「「…………」」」」」
そしてなんとか駐機場に到着したのだが、そこで見たものに皆の思考が一瞬だけ止まる。
「ちっ…………運が悪いな」
舌打ちとともに師匠のボヤキが無人の駐機場に響く。
この町に乗り付けてきた
「師匠。どうします?」
市壁の鉄門も破壊されているので、このまま走り去っても大丈夫な気もするけど…………。
そう思って見渡せば逃げ出そうとする
「あれって動かないんですかね?」
「ぱっと見た感じだとダメっぽいが調べてみるか」
師匠は
「どうです?」
「んー…………下半身は生きてるが、昨日の戦闘での胴体の左袈裟がかなり致命傷だな。動くかどうかは運次第といったところだ」
師匠の指す方を見ると確かに箱っぽい胴体に左肩から右胴へと走る深そうな裂傷がある。
「取りあえず
師匠はそう言うとガタイに見合わぬ動きで軽々と昇っていった。動きがネコ科のそれだ。
「ふへへ。獲物だ…………」
「女がいるぞ」
「金持ってそうだ…………」
「どうせ俺たちゃ殺されるんだ。今を楽しむぜ!」
目が狂気に帯びているヤケクソになっているのか妙な
「男は殺せ。女は…………分かっているな」
「でもあいつら…………いい尻してますよ」
「「「!!」」」
戦慄が走った。
その男の目線は明らかに僕らを見ていた。
もう穴があったら入れたい心理なんだろうか?
ダメだ。
僕らの尊厳のためにもここは力づくでお引き取り願おう。
「先手必勝!」
「
赤い月明りの中…………先頭にいた民兵の間抜け
「なんだ…………大したことはないな…………余裕じゃん」
「そうだな。ちょっとリアルなフルダイブVRゲーと大差ないわ」
出鼻を挫かれ目の前で首の飛んだ仲間を見て冷静さを取り戻したのか悲鳴を上げて逃げて行ってしまった。
「「いえーい」」
そして二人で拳をぶつけあう。
「二人ともおかしいだろ!」
咄嗟にそう叫ばずにはいられなかった。
「ん? なら罪にふさわしく犯罪奴隷として人間としての尊厳を踏み
「これは慈悲なんだけどねぇ」
「よーするにお前は自分で手にかけるのは嫌だが自分の見ていないところでなら構わないって事だろ?」
「そーじゃない!」
うまく言えないけど、そうじゃないんだ…………。
「
「なんだ。そんな事か…………」
「覚悟の違いじゃね?
「帰りたくない永住するというなら、こっちの世界のやり方に適応しろよ。それが出来ないならさっさと元の世界に戻って大人しく婚約者が戻ってくるのを待ってな。俺らが捜して送り返してやるよ」
「…………」
僕は戻りたくないと言いつつ本当は元の世界が恋しいのだろうか?
覚悟が足りないのだろうか?
「
「郷に入れば郷に従えって事か…………努力はするよ」
そう
「お前ら登ってこい」
そう思っていたら上から縄梯子が降ろされた。
この擱座したと思っていた
僕らは今その荷台の上に立っている。
「こいつで行けるところまで進む。相棒には連絡済みだからどこかで拾ってもらえる筈だ」
師匠はそう言うと
町を出るのはすんなりいった。
巨体に踏まれないように周りの人々が避けてくれたのだ。
転倒した衝撃で
結構な速度で走っているけど、とにかく揺れがひどい。
僕は耐性があったのかこの激しい不規則な揺れの中でも平然としていた。
町を出て
「これまでだな」
そう言って師匠は騎体を止めて片膝をつく駐騎姿勢へと移行する。
止まってから気が付いたけど何か焦げ臭い臭いが漂っている。
「師匠なんか焦げ臭いんですけど」
「
「捨てるって事ですか?」
捨てるなら欲しいと思ったがそれは言えなかった。
「
捨てるって事らしい。
今日の出来事を思い返していたらお迎えが来たようだ。
以前見た師匠たちの母艦である
だ。
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