第21話 長い夜②
寝苦しさから目が覚めてしまった。
「ん…………う~ん…………」
そして寝苦しさの原因がすぐ隣にいた。
「なんでこっちのベッドに入ってきてるの?」
部屋は真っ暗で顔も見えないが、そう
その時————。
階下から伝わる剣撃と叫び声が聞こえた。
「まさか…………」
略奪暴行祭りで
ここで考え込んでいても埒が明かないので、まずは皮製の遮光カーテンを開け月明かりを取り込む。
雲一つないようで二つの月に照らされて結構明るい。そこで気が付いたのだけど今日は二番目の月である
近くにあった
だが、その前に————。
「
先に
「う~ん…………もう少し…………下ぁ…………」
「いや、もう少しじゃないよ! とにかく起きて!」
「……ん……そこじゃないよぉ…………」
正直言えばどんな夢を見ているのか気にもなったが、何度か揺すっても起きそうもないので先に自分の仕度を整える事にした。もたもたしていて部屋に乗り込まれたら目も当てられない。
手早く防具も身に着け剣を佩いたところでようやく
「…………何があったの?」
まだ半分寝ぼけたような声でそう尋ねてきた。
「下で襲撃があったみたいだ。
そう
扉に耳を当てると、ドタドタと複数の何かが階段を駆け上がってくる。ほぼ間違いなく略奪暴行に大絶賛
隣の部屋の扉が開き続いて苦悶の声がいくつも上がる。師匠が対処したのだろう。
「
振り返れば
「明かりはどうする? 点けようか?」
「ん?
「ふふふ…………。ここは
そういって慎まし胸を反らすのであった。
目を閉じると、
「
そう
「いつの間に使えるようになったの?」
ふわふわした光輝く物体へと興味本位で右手を伸ばす。
「触っちゃダ————」
バチッっと弾けるような音と共に強烈な痛みが右手を襲う。そして周囲はまた月明かりだけとなった。
「いってぇー」
「大丈夫?」
正直言えば感電したような感じで右腕全体が痺れているのか、動かせなくはないが反応が鈍い。
「右腕がちょっと痺れるけど大丈夫だよ」
剣を振るのはちょっと怖いけどね。
「なら良かった。
そう言ってちょっと頬を膨らませる。
「ごめんごめん。で、いつ使えるようになったの?」
「ん? たった今だよ。なんか出来そーとか思ったの」
改めて明りを灯してもらおうかと思った時、扉が激しくノックされた。
警戒して無言でいると、
「
どうやらノックの主は
扉を開けると
「まさかとは思うけど…………」
廊下に転がっていたのは貧相な装備の民兵などではなく、
「先に言っておくけど、間違えて倒したとかじゃないぞ」
「まさかとは思うけど、略奪暴行に
言った自分でもまさかそこまで阿呆ではないだろうとか思ったのだけど、
「設定とか言うなよ…………。だけどヴァルザスさんの見立てだとそれで間違いないらしい」
「ねぇ。
そういえば師匠と
「
魔法の適性がなかった
「まーね。で、先生は?」
「
賞賛されてちょっと鼻高々な
「なら明りもあるし————」
「玄関ホールまで制圧終ったから降りて来いってさ、って…………
そう言ってサムズアップした。
僕はと言えば、まだ、おめでとうと言えてないなという事に気が付く。まさか嫉妬してる?
いやいやタイミングを逸しただけだと思うことにする。
きっちりと師匠が制圧したようで玄関ホールまで昏倒した
「まさか本当に襲ってくるとかね……」
玄関ホールで僕らを出迎えてくれた師匠はそう言って苦笑いしていた。ここに泊まった当初は
それが略奪暴行に
「ヴァルザスさん。この後どうします?」
そう
「今後の展開は民兵と正規兵どちらにでも襲われる可能性が高いという事は分かるな?」
師匠は確認するかのように問いかけてきた。
「この混乱に乗じて略奪祭りに参加する者も出るでしょうね。武装しているとはいえこのままで歩けば僕らも襲われる可能性はあるでしょう。そうなると————」
「人を傷つける覚悟があるか? という事ですかね」
「俺は特に問題ないな。襲われれば返りうちにするまでよ」
鼻息荒くそう
「俺も積極的な殺人は非推奨だけど、こういうケースは割り切れるかな」
「私も
自衛の結果の殺害は僕らの世界でも稀にあるケースだ。だけどアレは咄嗟の行為の結果だ。意図して人が斬れるか? うちの流派は人斬りを前提としているけど僕にはその覚悟がまだない。ただここで悩んでいても事態は好転しないし腹を括ろう。
「僕も大丈夫です。行きましょう」
「なら、先ず先頭は
「「はい」」
二人の返事を確認し師匠は僕らを見る。
「お前らは前衛との距離を離されないようにしつつ側面からの襲撃に備えろ。
「「はい」」
僕らの返事を確認して師匠は目的地を告げる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます