第20話 長い夜①
部屋に戻ってきたけど時間的にまだ
これまでの汚れを落としたいという事で
僕はと言えばまじまじと見るわけにもいかず窓から街を眺めている。
こっちの世界は透明で薄い板ガラスは大変高価な為に普及してない事もあってかなり厚めの曇りガラスが嵌った上げ下げ窓だ。ここは四階なので転落防止用なのか鉄格子のようなごつい柵があり、身を乗り出して外を眺めることはできない。
街灯などが設置されていないので姿は見えないが、悲鳴や意味不明の雄たけびなどが聞こえ気分が滅入ってくる。外の無秩序ぶりに外出は自殺行為だなと感じさせる。
果たして自由はないが礼節、法、秩序がきちんとしていた
「僕の選択は正しかったんだろうか?」
大事なものを守るだけの力が全然ない。師匠は何時まで面倒見てくれるか分からない。あの人は気まぐれだ。
「ごめんね。聞いてなかった」
そう
「ううん。ただの独り言だから気にしないで」
「そっかー。ところで私は身体拭き終わったけど、
「いや、身体は拭くけど、お湯はこのままでいいよ」
体温と大差ない程度にまで温度が下がってしまったぬるま湯で身体も拭き終わり湯桶を一階へと持っていき後は完全にやることがなくなってしまった。時計がないので時間は分からないけど、たぶん
「野外で生活してると、やれ見張りだなんだってバタバタしてたけど、こうして街に戻ると今度は暇すぎて結構つらいねぇ」
ベッドに腰かけ足をぶらぶらさせつつ
「なら師匠に言って送り返してもらう?」
帰ってくる答えが分かっていて、あえて分かりきったことを聞く。これで予想外の回答だったら凹みそうだ。
「まっさかー。やっと手に入れた自由だよ。まー自由と引き換えに失ったものもあるけど、
そう答える
▲△▲△▲△▲△▲△▲
「しっかし暇っすよね」
「だから多くの
「でもゲームとか娯楽が普及しないもんなんですかね?」
「まず大量生産できないから庶民にまで行き渡らない。この世界は生産力に対して人口が多すぎる。それに買えたとしても所得も少ない庶民にはかなり高価な品になるし、遊ぶための時間もあまりない。夜なんかは仕事はないだろうけど、
ヴァルザスの説明を聞く
「将棋とかチェスとか流行らせたいんだけどなー」
「それなら余裕がない社会の在り方を根底から変えないとダメだな」
「一番手っ取り早いのは?」
「人口を六割くらい削って、これまでの利権を全部なくして、産業革命でも起こすしか無かろう」
「そりゃ流石に無理かー」
そう叫ぶと
「それじゃ話題を変えましょう」
そう言いて会話に混ざってきたのは聞き手に回っていた
「ズバリ定番中の定番ですが…………人類共通の敵たる魔王とかいますかね?」
「魔王の定義がよく判らんが自称[魔王]なら何人かいるな。だが人類が脅威と感じる規模ではないな。奴らは基本的に弱肉強食社なせいか数が増えない。今のところカリスマ性を持った奴が生まれない。特に個体の強さが売りの種族は繁殖力が弱く頭数が増えない。逆に
「もっとゲームみたいに分かりやすい世界に呼ばれたかったなー」
ため息とともに
「それじゃもう一ついいっすか?
「まずエ〇本が非常に高価で手に入らないし自家発電派はごく少数だな。こっちの住人はお前さんらほど妄想力が逞しくないんだな」
「じゃーやっぱり…………綺麗なおねーさんとお酒が飲める場所でですか?」
「待て待て。
「「おー」」
期待に満ちた
「後は連れ込み宿を兼ねた
「他には!」
「後は
「治療費とかどれくらいかかるんです?」
あわよくば二人は行ってみたいと目で訴えかけている。
「最安値で
その金額の高さに二人は押し黙る。それ見つつヴァルザスは話を続ける。
「値段は高いがリスクなしなら
「ほうほう」
鼻息の荒い
「とりあえずお前ら落ち着け。
黙りこくった
「明日からの
「「マジですか!」」
見事にハモっていた。
「しっかしだな…………そんなにやりたいか?」
「穴があったら入れたいくらいにはやりたいです!」
▲△▲△▲△▲△▲△▲
「なんか隣の部屋が賑やかね?
そう言って
「そんな事ないよ」
一瞬流れに身を任せてこのまま
やったよ! えらい! 褒めて! と心の中で喝采した。
「明日は早いしもう寝よう」
「…………うん。そうだね」
一瞬間があった。
何を言いたいかは何となくわかっている。でもまだ駄目なんだと自分に言い聞かせる。
そして
「意気地なし」
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