第15話 火口箱
取りあえず
中等部時代に軍事教練の一環で野営はしたことがある。だが装備が違いすぎて————。
「おい、全然火がつかないぞ」
まずこの
火打石と火打金を打ち合わせて火花を飛ばし、その火花で点火して火種を作る
熟練の冒険者であれば取り出して20秒もあれば火種を作れるそうだ。実際に師匠が実演した際にはあっという間であった。
あまりにも簡単だったので直ぐにできるかと思ったのだけど結果は散々である。
「そんなに難しい作業じゃないはずなんだがな…………。それはそうと実は簡単に出来るモノがあるんだが————」
5分くらい僕らの行為を眺めていた師匠が
「是非それで!」
そう言って
「金がないうちから贅沢はお勧めしないんだがな…………」
やれやれ仕方ないと言わんばかりの口調で師匠が手に持っていた小さな箱を
「あれ? これってマッチ箱ですか?」
「こっちだと
「マッチがあるなら最初から出してくれればいいのにー」
そう言ってむくれる
「それ一本で小銀貨20枚だからな」
師匠のその一言に三人とも固まった。
少し開けた場所で火を囲み保存食である
「さて、そこの奴が起きないし先に
一向に目覚める気配のない
要約すると魔法などを使う際に大気中の
この
「外付けのMPみたいなもんすか?」
「概ね当たりといったところか。実際には魔法の制御などに精神力をゴリゴリ削られるから
なるほどーとか思ったのだけど気になるのはそこじゃない。
「なんで見た目が
僕の疑問その一を
「最初は俺も思ったさ。本来の
そう言ってごそごそと
「これが純度の高い奴なんだが、
凄い適当だ…………。
ちなみに
「クズなら捨てちまう?」
拾ってきた
「クズって言っても初級の魔法一回分くらいにはなるし、売れば一つにつき大銀貨1枚にはなるぞ」
「「「おぉー」」」
見事にハモってしまった。
五つあるから大銀貨5枚…………いや、待てよ…………。僕らが倒した
「迷宮都市ザルツというここから徒歩で2週間くらいのところを拠点にすれば、こんなのがそこそこ出るから生活には困らんよ。最も大量に納品しなければ
その後の師匠の話から感じた印象は、それなりの数の
僕らの世界で言えば
さて、もう一つの質問でもするか。
「実は前々から思ったのですが、固有名詞などが結構な割合で僕らの知ってるものと被るのですが…………。それに
おかげで言葉を覚えるのに予想していたよりかは苦労がなくていいのだけどね。
「この多元世界は幾億年と誕生と消滅を繰り返している。滅びた世界の生き残りが次の世界の神となり世界を作りそれが繰り返されてきたという。こっちの世界もそっちの世界も元を辿っていけば同じなのかもしれないな。まー言葉を覚えるのが楽でいいなくらいに思っていればいいさ。真実は誰にもわからん」
疑問に対する師匠の回答はこんな感じだった。口調からして本当に気にも留めていないんだろう。
同志
「基本的に街に居る時以外の
これまでに何回か聞いた話だ。移動に関しても一日徒歩で
街道は奇麗に舗装された場所ではないので慣れていないと毎日歩くのは結構つらい。また靴も今の物ほど優れていない事もある。テレビとか見ているといけそうかと思うのだけどあれは長旅を想定していないからだ。
食事に関しては今日食べた感じで
「焚火だが朝まで付けっぱなしにする場合は薪が結構必要になる。冬場以外は消すことを勧める。なぜなら夜目を鍛える意味もあるが、そもそも野生動物は火を恐れないし、場合によっては要らんトラブルを招き寄せるぞ」
何時の間にやら説明が再開されていた。
「質問! 動物って火を恐れるって聞いた気が…………」
「野生動物などは「火」を恐れてるわけではなく、好奇心があるから火を見れば近づくが臆病で慎重でもあるので通常と異なる状態を避ける傾向がある。結果として近寄らない傾向にあるというだけだ。そもそも野生動物にとって人は見慣れないものだから直ぐには襲ってこない。人数の少ない
野生動物より目立つ事により人……この場合は犯罪者を呼び寄せる確率の方が高いとの事だ。
「ただし冬とかは暖をとる意味でも焚いておけよ。そこら辺は臨機応変にな」
月明かりなどがあるから真っ暗ではないけど結構厳しくないかな? そう思っていると師匠がこう続けた。
「非常時の明かり確保の為に
他にも見張りは二人体制が原則なので
結局のところお金のないうちは遠出するような仕事は受けない方がよさそうだという結論に至った。
「…………お腹空いた…………」
唐突に目が覚めた同志
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