第16話 これまでの事
気を失っていた原因が空腹だったとは…………。
「ふー。ごちそうさまでした」
両手を合わせてそう呟く
「あの日からの事を教えて欲しい。何があったんだ?」
「んー俺の方も聞きたい事があるけど、まずは助けてもらった事だしこちらの話からするか」
そう言って
「まず最初にあの日の夜に盗賊が出たんだ。君らは盗賊迎撃に真っ先に出て倒されてしまったと藤堂先輩に聞いたんだよ。君らほどの人が真っ先に倒されたとなると俺らじゃ手に負えないし手近な荷物だけ持って必死に逃げたよ。運がいい事に街の近くまで来た辺りで日が昇り始めて、たまたま出かける予定だった
いったん話を切った
実は念のために師匠に
「その
この話にも嘘や脚色などはなかったらしい。師匠が首を振っている。
「惨劇はその日の夜にあったらしいんだ。今だから判るけど、街の
そこで
「あり得る話だな。
「いえ、恥ずかしい話ですが何人かを囮にして逃げ出しました。それからあてどもなく
その頃の僕らは師匠に蘇生されてまだ意識が戻ってなかった頃だろうか?どっちがより不運だったんだろうねぇ?
「その港湾都市で偶然にも何人かと合流できまして、とりあえず大陸に渡ろうと思って事で密航したんです。行先も分からないけど荷物の多そうな船に乗り込み船倉の奥に隠れました。運が良かったのか5日間見つからずになんとか港に着いたんです」
「だが、荷物を下ろす際にどうやって逃げ出したんだ? 船倉だとほぼ袋の鼠だろう? また仲間を囮にしたのか?」
そう言ったのは
「
「俺は
「だけど! 我が身を大事にして何が悪いんだよ! あいつら俺を売る算段してたんだぞ! それだけじゃない!
言いかけて自らの口を押さえる。
「知ってる。その話は
師匠にお世話になった?
蘇生の話だろうか?
それともまた僕が何も知らないだけ?
ま、それは後にしよう。
「まとめると藤堂さんの嘘でみんなが逃げ出した。
僕のざっくりとした確認に「それで間違いない」と
「その後はどうしてた? 漁村に流れ着いたんだよね」
▲△▲△▲△▲△▲△▲
「これまでの話をまとめると、漁村で数日とはいえ世話になった漁師宅から服と金品をかっぱらって王都ルートのまで
一度師匠の方を見て確認すると首を振ってるので嘘は言ってない。
「
「出来れば一緒に行動させてほ————」
「ダメだ! 俺は認めない。こういう奴は何度でも平気で裏切る」
横になっていた
「元の世界に戻るにしても残るにしてもすぐには無理だ。残るのであればこの世界で生計を立てるための技術が必要になるし、一緒に生活して納得が出来ないのであればその時は放逐すればいいだろう。流石にこのままだと死んでしまうぞ」
そう師匠に
「明日は早朝から訓練を開始するからさっさと寝ろ。今日だけは俺が見張っててやる」
▲△▲△▲△▲△▲△▲
特に事件もなく
日の出とともに起床し、柔軟をした後は
師匠の助言で武器を
あまり美味しくはないが
朝食と同じメニューの昼食を済ませてからは
同時に魚や動物の捌き方も教わる。精神的に解体はきついとか思ったけど、数日すると慣れるもんなんだね…………。
お昼過ぎから日没近くまでの時間は狩りの時間でもあるが同時に戦闘訓練の一環でもある。実際に何度か
主に
日が沈む前に野営の準備を始める。薪を大量に確保できないので煮炊きが終わったら消火して後は月明かりを頼りに活動する。
見張りは師匠を抜きで2人組となり早番と遅番で交互にローテーションで対処した。だが、慣れない事で気が付いたら居眠りしていたりして、朝起きたら傍で
薬草なども十分確保したし、流石に僕らの汚れ具合も酷いので一度帰ろうという事になった。一応水場で洗濯したりはしたんだけどね。
「今更って気がするんですが、戦争どうなったんでしょうね?」
初日に軍隊を見たけどあれ以来それどころじゃなくてすっかり忘れてた。
「せいぜい国旗が変わってるくらいさ。この東部域じゃ一年立たないうちに何度か国旗が変わるところなんていくつもあるからな」
もしかしたらこの間見た国旗と違う国旗が立ってるかもしれないぞとも言われた。
山を下りていてふと思い出したことがある。
「ルートの街に藤堂さんがいるって事はもしかして遭遇しちゃったら気まずいんじゃ?」
「そこは落とし前をつけなければ、だろ?」
僕のボヤキに
夕刻にはふもとの村に到着しここで一晩泊ってからルートに帰還して
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