第13話 不意打ち
「おい。起きろ」
肩を激しく揺すられて夢うつつだった意識が一気に覚醒する。
目に前には
「目が覚めたら間近に
思わず文句を口にしてしまう。せめて…………。
「せめて
「なぜわかった」
「誰でもわかるって」
「もう全員支度も終わって後は
師匠はそう言って昨夜も食べた
それをふた口で食べ終わらせて思った。
「これって食べた後に水分が欲しくなりますね」
そう感想を漏らして水袋の生ぬるい水をひと口含む。
支度と言っても昨日は座って寝ただけだから土を払い、ベルトを緩めた
ただ…………昨夜から着替えもしてないし風呂にも入ってないしで結構不快だ。
取りあえず師匠に片っ端から不満をぶつけてみたが返ってきた答えは「貧乏が悪い。慣れろ」だった。確かに僕らは一文無しで師匠に
因みに
ただし、この金額設定は師匠に言わせると、僕や
そう————男の尻でも狙われるのである。金がなくて妓館に行けないから、とりあえず穴があったら入れたい…………そういう底辺冒険者もそれなりに居るのである。彼らに自家発電という発想はないらしい。いい迷惑である。
「早く稼げるようになりたいもんだ」
そのぼやきは師匠の耳に届いたようで、
「なら商人の護衛が楽で良いぞ。ただし人間そっくりの姿をした野盗という
あ、船が沈む際には道連れになる。生存率は限りなく低い。師匠に言わせればさっさと殺してやるのも慈悲かもしれないとの事だ。
因みに生かして捕えて官憲に引き渡せれば賞金が手に入る。
▲△▲△▲△▲△▲△▲
臨時の野営地から移動を開始して
道なき道を
歩きつつ師匠は食べられる野草や茸、根菜などを教えてくれたり、水場の探し方などをレクチャーしてくれた。更に
「足元ばかり気にして歩くなよ。全周囲に気を配るんだ」
師匠の注意を聞いて確かになって思うのだけど、実際に整備されていない山道を歩くのに気を取られて他が疎かになってしまう。
「特に上は注意が————」
「キャァァァァ!!」
師匠の説明をかき消すように
一番体力のない
「あれ?」
「
声を辿れば何かよってに逆さ吊りされている
「特に上には注意が必要だ。油断していると
既に襲われているのに師匠はわざわざ言い直した!
「ほれ、これも訓練の一環だぞ。取りあえず危機察知能力は落第だな。で、どーやって救助するんだ?」
師匠はあくまでも傍観者というスタンスらしい。
僕らは無意識のうちにどこかで師匠に頼っている部分があったんだろう。
木登りにはあまり自信がないけど裸足になれば…………。
「…………お前ら何のために
靴を脱ぎかけていた僕へ呆れみの視線を投げかける師匠にそう指摘されて思い出した。
肩から掛けた
「そーいや、これの投げ方知らないんだが?」
取りあえず投げてみた。
「「…………」」
「
気が付いたのだが、引き釣り上げる速度が異様に遅い。触腕2本で
「
重い
「
さらに師匠にダメだしされた。
「あ…………」
僕は慌てて
矢筒から
僕の購入した
弦の音が鳴り響いて
「ちっ」
舌打ちとともに
「当たれ!」
意味もなく叫んでみて
発射された
「あれ?」
「先に本体を仕留めろ。もっと周囲に気を配って観察しろ。二人して同じ事してても仕方ないだろう?」
弦が鳴る音で思考を中断し、そちらを見ると射撃を終え満足そうに上を見上げる
「見たか! 俺の実力」
にやりと笑みを浮かべてこちらにサムズアップしてくる。釣られてこちらもサムズアップで返す。
「お、落ちちゃう!」
その
どうしたもんかと考えこんでいるうちに触腕は千切れ、
「「「あれ?」」」
僕も
頭を下にしたままふわふわと羽根のようにゆっくりと落ちてきたのである。
「念の為に【
師匠のおかげで助かったのか…………。
「まー未知の生物相手に初戦ならこんなもんだろ。個人的な感想としてはもうちょっと冷静に周囲に気を配ってくれたらこういうミスはしないんだがな。あと重量物の真下には入らない事だ。怪我の元だぞ」
怒るわけでもなく師匠の解説は続く…………。
触腕に絡みつかれていた
「基本的にはお前たち三人の生命が脅かされない限りは俺は傍観者のつもりだ。今回の件で懲りたのであれば————」
「大丈夫です!」
師匠の話を遮って返事をしたのは
「ま、俺も自分の意志でこっちに渡ってきたんだし、このまま追い返されたんじゃ後悔しか残らないだろうな」
巻き込まれた僕や
「僕も大丈夫です。多分何処かで甘えがあったんだと思います」
「正直この世界は転職という考え方はあまり浸透していない。それは既得権益を犯されるのを嫌がっているからだ。ただし
最も
「本当の意味で[
師匠はそう言って話を締めくくった。
▲△▲△▲△▲△▲△▲
「さて、目当ての薬草はこのあたりで採取できる。乾燥させて渡すんで
これからの方針を師匠が説明する。
「ヴァルザスさん。質問です!」
なぜか
「戦闘訓練とか
そう質問をした。そういえば訓練項目になかった気が…………。
「こっちは空気も薄いし高度順化を数日行ってから徐々にだな」
いまの標高だと
「まずは周囲の地形を頭に入れてもらう。水場の確認と多少開けた場所を探すぞ」
そう宣言して師匠は歩き始める。
依頼の薬草はこの山の山頂付近に点在していてとにかく歩き回って見つけるしかないらしい。
途中で軽くお昼を済ませて延べ
「師匠…………あれって…………」
距離にして
助けないと! そう思うと同時に右手は
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