第12話 逃走
「巨人? いや違う。街で見た
月明かりに照らされた地面に倒れ伏すずんぐりした人型の鉄巨人は間違いなく街で見た
その
「
「師匠どういうことですか?」
「この辺りの地域は小都市国家の群雄割拠状態なのは説明したな?」
説明は聞いた。って事はもしかして————。
「もしかして僕らは戦争に巻き込まれました?」
「もしかしなくても巻き込まれたよ。だが今から逃げ出せば————」
途中で言葉を切り北西の地平線を指さした。何かが複数こちらに向かってきてはいるようだ。
「隊列を組んだ
「先生。村の人がルートの街に逃げるから馬車に乗れって言ってます」
ヴァルザスさんを先生と呼ぶようになったのは
「俺らは
基本的に監督するだけで指示はしない方針といった師匠だが流石に今回は例外のようだ。
「でもヴァルザスさん。日が沈んだこの時間帯に木々の生い茂る山中をですか? 流石にそりゃ無理でしょ」
「
いずれ夜間の山中行軍は訓練に入っていたので早いか遅いかだけだと締めくくった。
▲△▲△▲△▲△▲△▲
「ここらが限界だな」
そう言ってヴァルザスさんは肩に担いでいたモノを地面に下ろす。荷物のように担がれていたのは
「今日はもうここで野営に入る。ただし火は起こすな。明かりも駄目だ。荷物と武器は手の届く範囲に置いて置け。防具は脱ぐな。兜もダメだ。横になるな。木か荷物にもたれて座って休め」
師匠は矢継ぎ早に指示を出していく。他にも水場が見つけられなかったので水袋の水は残しておくようにとかだ。
僅かに差し込む月明りを頼りに道なき道を
「幸い
師匠はそう呟くと
「あれ?」
師匠の身体がぼんやりと光ったように見えたけど、幻覚でも見たのかと目を
「
あれは何だったんだろうと考えこんでいると
「いま師匠が一瞬ぼんやり光ったように見えたんだけど
「いや、さっぱりだな。
納得は出来なかったが「かもしれないね」と返事を返した。
「お前らこれでも食べてろ」
師匠が近づいてきて何か棒状のものを差し出した。それを受け取って月明りに
「
「以前そっちの世界に行った際に見せてもらったものを帰り際に大量に手に入れて、こっちの世界で似たような商品を作ったんだよ。それ一本で一食分のエネルギーが摂取出来る。ある程度稼げる冒険者には結構人気商品だ」
確かにこの長さ
「これってどれくらい日持ちするんですか?」
「ちょっと特殊な製造過程を経ているが大体2年くらい持つな」
「凄いな。
そういう
「食感は…………少し硬めのクッキー? 味は上品な甘さがあって優しい感じ?」
二口で終わってしまいやや物足りない感じではある。
「特徴がないだろう?
僕の感想に師匠がそう答える。正直言えばその通りである。
「あれ? でもこの味どこかで…………」
「
「これで味が何種類かあると良いのですが」
一種類だと流石に飽きそうだ。
食事も終わり僕らは木にもたれ掛かり本来宿泊する予定の村を見ている。
「そういえば師匠。捕まったら情報収集のためとかでやっぱ拷問とかされるんですか?」
「まさか。よほど怪しい態度をとらなければ暫く拘束されて終わりだよ。
そう回答してくれたけど…………だったらなんで街へと逃げなかったんだろう?
「戦争になれば市壁が閉じられるから入れない可能性も高いし、入れても不可抗力で建屋が倒壊するかもしれない。こっちに逃げれば仕事中って事で余計な干渉は避けられるからだ」
そういうものなのかと思っていたら、突然師匠が立ち上がった。
「俺は防犯魔術の構築と見回りをしてくる。どんな状況下でも身体を休ませられるようになるのも
寝ろって事らしい。
「しかし初仕事でこんなトラブルとか先が思いやられるな」
その僕の呟きに、
「でも私は結構楽しいかな。身体は悲鳴上げてるけどね」
そう答えたのはずっと大人しくしていた
「ここ座るね」
そう言って僕の横に腰を下ろす。
「…………怪我とかは大丈夫なの?」
かける言葉がすぐに見つからず今更ながらそんなことを聞いてしまった。
「先生に【
薬草採取という簡単なはずの仕事のついでに野外活動のイロハを学ぶ予定だったんだよね。師匠が言うには
考え込んでいたら左肩に重みを感じてそちらを見れば
▲△▲△▲△▲△▲△▲
「さて、こんなもんか」
防犯魔術である【
その時、ヴァルザスの野性的な勘が下から接近してくる存在を感知する。
「歩兵
ヴァルザスはそう呟きつつ思案する。
「いや、
あの時に
「皆殺しは楽だが、それをすると残りの部隊による山狩り確定だろうな。ここは大人しくお帰り願うか」
そう呟くとヴァルザスは音もなく明かりのほとんど届かない木々の合間を素早く移動していく。
「怪しいから取りあえず調べてみるかって感じで派遣された感じだが…………練度が低いな」
その動きはまるでネコ科のソレのっ如く音もなくスルスルと手頃な高さの木に登り周囲を窺うヴァルザスだったが、兵隊の練度の低さから方針を変更する。
「
ヴァルザスが右手で宙に
効果範囲を大幅に拡大された【
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