第6話 真実
「まじかよ…………」
強制転移でこちらの世界に拉致られてからのこれまでの事と僕とヴァルザスさんとの関係を話し終えたところだ。
「
健司は僕の剣術の
「剣術に関しては十分通じるよ。問題は気持ちかな。最初は生物を殴り殺すのに抵抗を感じたよ。多分、次は大丈夫だ。やっていける…………と、思う」
そう口にはしたものの自分の剣術の
「でも、親や国が決めた結婚相手と競走馬みたいに血統操作で子孫を残し指定されただけの業務を淡々とこなして死んでいく人生って息が詰まるから…………」
だから【
「ま、確かに特権階級とはいっても就職先から結婚相手まで決まっている武家社会はクソだが、それでも命のやり取りをしないで済むのは悪くはないと思うんだがな?」
そう言う
「ただ…………学園全体が巻き込まれたのなら婚約者だけでも見つけて元の世界に帰してあげたい」
「…………逢ったことあるのか」
武家社会では一七歳までに顔合わせするケースは珍しいのである。父親の代まで武家の末端に連なっていた
「
「あの子か!我が校の
そう言って
「彼女そのものに不満はないよ…………ただ、それとこれは別問題だよ」
義務さえ済ませれば、余生は犯罪さえ犯さなければ好き放題に生きていけるから…………。ただその義務が苦痛に感じるんだよ。
武家の権利は行使しつつ義務は果たしたくないとか、我ながら都合のいいことを言ってるな…………。
「元の世界の話とかどうでもいいんだよ。それより
この話はこれで打ち切りにしたい。
「俺みたいな脳筋はこういう世界の方が肌に合うな。親は悲しむかもしれないが元武家って世間の風当たりが強いからこれでいいのさ」
本気なのか冗談なのか判らない口調でそういう
「
「話が変わって申し訳ないが、実際のところ俺らはどうやって生計とか立てていくんだ? あのヴァルザスさんって人が一生面倒見てくれるとかは流石にないよな? 」
今更かよと呆れつつ一応の方針を話すことにする。
「情報収集した限りでは、僕らは
単なる学生に妙な知識がある筈もなく、かといって神様から何かを授かったわけでもない僕らの選択肢は非常に少ない。いや、ないといってもいい。
「こっちの世界って余所者に対してどうなんだ?」
「僕らの居た村の感じだとやや閉鎖的かな」
「ところで
「聞いた話になるけどと前置きしておくね。一番判りやすい表現は日雇い労働者だね」
「なんだよ。夢も希望もねーなー」
「
「現地人を加えたほうが良いってことか?」
「一人は欲しいね。やっぱりこっちの世界の知識や常識には
第三次世界大戦が終わった後に
でも実戦を想定した戦闘訓練は
「今回遭遇した
口にしなかったけどもう一点は人型生物を躊躇なく切り伏せられるかだと思う。
「生き物を命を直接奪う覚悟のあるなしがこの世界でやっていく為の必須条件なのかもな」
「そういえば俺の寝床どこなんだ?」
唐突に
「ヴァルザスさんに聞いてきなよ」
「そうだな」
そういうと
▲△▲△▲△▲△▲△▲
部屋には僕と
沈黙が部屋を支配してどのくらいたっただろうか…………。
「…………
まずは気になった事を確認しよう。
「
「意見の相違かな? あとは彼は元の世界で生きていくのが一番だよ。それに母子家庭でしょ。勲章確定の将来有望なひとり息子が行方不明とかになったらお母さまが悲しむわ」
返ってきた言葉は、事実でもあるが間違いなく本心を隠してのものだろう。追及しても頑なに拒むだろうし言いたくなるまで放置が良さそうだ。
「そっか。意見の相違なら仕方ないね。でも、こっちでやっていけるかは考えなかったの?」
「それも考えたんけど、他人の敷いたレールをただ惰性で走るだけの元の世界での生活よりは、
そう言って
どうせ
「でもあの別れ方はあんまりじゃないかな?」
「…………そうね。確かに仮面カップルだったけどアレはないかなとは思ったわ。でもいい機会でもあったんだよ」
「…………彼、有名人だし、これからしばらくはマスコミや好奇心旺盛な人たちのいい玩具でしょうね」
そう言った
この二人の間に何があったんだろう? 仮面カップルだと
今の僕に
「
ほぼカマかけに近いがそれとなく話を振ってみた。
「概ね当たりだと思うよ。彼にとっては格式の高い武家の女と付き合っているってステータスが大事ってだけだったからね。貧乳は女じゃないんだってさ」
そう言って自虐的に笑う。男の言う貧乳って別にぺったん娘って意味じゃないだけに分かりにくい。
多くの女性を敵に回しそうな発言であるが
僕らが今着ている真っ白な膝丈ほどの
そう考えるとなんであんなに
「ねぇ。知ってた?」
唐突に
「何を?」
「
「……えっ……」
「恵まれた環境を当たり前だと思ってる所が嫌いだったんだって。彼って母子家庭で結構貧しい暮らしだったみたいだから私たちとは別の意味で人生に選択肢がなかっただけに尚更にね」
親友の振りして裏でそんなこと思っていたのか…………。
「取り巻きの女子たちに話しているのを聞いた限りだと、
そう言われてみれば変だなと思うシーンは多々あった気がするな。
「言われてみると確かにおかしいなってシーンが結構あるね。そうか…………嫌がらせされてたのか…………。無二の親友とか思ってただけに自分の人を見る目のなさに呆れるな」
乾いた笑いしかでなかった。
「ところで
「…………なんで知ってるの? 」
恐る恐る聞き返した。
「だって私…………小さいころから
頬を朱に染めて妙に艶っぽい表情でそんなことを
僕しか見ていない…………。
「…………それって————」
「うん。好きだよ。小さい時からいつも言ってたよね」
そういえば女子のほうがそっち方面はおませな子が多いよね。僕はといえば
「はぁ…………」
思わずため息が漏れてしまった。
「ちなみに私が
またまた
「どういう事? 」
「
あはは…………と笑っているが目が笑っていない。
それにしても僕のファンとか居たのか。
それは知らなかったな。
だが一番の収穫は実は両思いだったのか…………。政治的な理由で一緒にいる事を親や親類から叱責されていただけにお互いの思いが向かい合っていたのは非常にうれしい。舞い上がるほどといってもいい。でも生活が落ち着くまでは関係の進展は保留かな。
「話変わって申し訳ないけど、今後のことだけど
なんか空気が寒いやら甘いやらでちょっと思考が痺れそうだったので話題を変えた。
「…………らしいと言えばらしいけど強引だなぁ」
あははと
「もちろん
「助かるよ。これからも宜しくね」
そう言って座り込んでいる
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